公募セッションは、既存の部門ではカバーできない部門横断的なテーマについて会員の研究交流を継続的に進めることを目的としたセッションです。発表者は公募します。

T1 . 生物多様性保全と森林管理
Biodiversity conservation and forest management

T2.森林の放射能研究
Research on radioactivity in contaminated forests

T3.樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots

T1.生物多様性保全と森林管理
Biodiversity conservation and forest management

コーディネータ:山中聡(森林総合研究所)、山浦悠一(森林総合研究所)

3月26日 13:00~16:15 会場 Room 5, ポスター発表 3月25日~27日 P-458~465

森林の減少・劣化は世界規模で進行しており,森林生態系における生物多様性の保全とその持続可能な利用のための行動が必要とされています。日本の国土の約7割は森林に覆われていますが,人間活動による改変が少ない森林は限られており,原生林やそれらに依存する生物の生息地を維持することは重要です。また近年では,里山などで人間活動の衰退に伴う生物多様性の減少も懸念されています。その一方で,日本の森林の4割を占める人工林は各地で伐採が進み,林業の地域社会や経済への貢献が期待されています。これらの人工林は一般に生物多様性が低いことが知られていますが,管理の仕方によって多くの生物の生息地として機能するとも指摘されています。森林と林業の社会的価値や持続可能性を向上させていくために,日本でも生物多様性の保全に配慮した森林の管理が,今後より重要となっていくと考えられます。

生物多様性の保全に配慮した森林管理を行うためには,様々な分類群や林相(天然林や人工林など),地域を対象とした生態学的研究や保全技術の開発や検証,集積が必要です。また,得られた知見を実際の森林管理に導入するためには,政策学や社会経済学など,様々な学問分野からのアプローチが必要とされます。

本セッションでは,森林生態系における生物多様性の保全という共通の課題を扱う研究の発表を募ることで,これまで異なるセッションで発表されてきた研究や研究者が集まる場を作りたいと考えています。研究対象とする生物多様性の階層(遺伝子,種,生態系)や空間スケール(林分,景観,流域など),学問分野は問いません。発表形式は口頭発表とポスター発表の両方を対象とします。

当セッションは昨年に引き続き今回2回目の開催です。今後も当セッションを継続し,参加者の方々が取り組んでいる課題について情報を交換・議論し,理解を深め,生物多様性に配慮した森林管理の実践に寄与できる場を作りたいと考えています。

  • T1-1 人工林における保持林業の実証実験 初期の成果の概要
             尾崎研一(森林総合研究所)
  • T1-2 トドマツ人工林主伐時における上層木の保残が下層植生に及ぼす影響
             明石信廣(北海道立総合研究機構 林業試験場道北支場)ら
  • T1-3 人工林の生物多様性保全に向けた保持木の選定
             山中聡(森林総合研究所)
  • T1-4 保持林業の四国での適用:国有林と水源林のスギ・ヒノキ人工林での取り組み
             山浦悠一(森林総合研究所)ら
  • T1-5 防風林管理が育む絶滅危惧種と生物多様性
             速水将人(北海道立総合研究機構)ら
  • T1-6 人工林の主伐䛿ヨタカに生息地を提供する:北海道中部での 8 年間の調査
             河村和洋(森林総合研究所)ら
  • T1-7 ミミズの保全に配慮した森林管理を目指して:かき起こし施業を事例に
             河上智也(北海道大学)ら
  • T1-8 亜熱帯林での林冠ギャップ下と閉鎖林下における光環境の不均質性
             谷口真吾(琉球大学)ら
  • T1-9 衛星データを用いた生物多様性ポテンシャル評価の試み
             若月優姫(国際航業株式会社)ら

T2.森林の放射能研究
Research on radioactivity in contaminated forests

コーディネータ:小松雅史(森林総合研究所)、大久保達弘(宇都宮大学)

3月26日 9:30~11:15 会場 Room 5, ポスター発表 3月25日~27日 P-466~482

2022年2月よりロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が始まり,現在も続いています。チョルノービリやザポリージャの両原子力発電所周辺での戦闘も起きており,放射性物質の飛散リスクが最も高まっていると言えます。一方で国内では,この戦争を契機としたエネルギー問題も生じており,震災以降に廃炉や新基準での点検によって利用が減少した原子力エネルギーの活用についても改めて注目が集まっています。

福島第一原子力発電所事故後,現在も続く森林の放射性セシウム汚染の動態について理解を深めることで,汚染による環境および社会への影響を緩和するための方策へとつなげること,また将来起こりうる新たなリスクについても評価することが求められています。そのためには研究を継続し成果を国内外へ発信していくことが必要です。その一助となるべく,森林の放射能研究の公募セッションを今回も実施します。例年通り,口頭発表とポスター発表どちらの発表形式も可能とする予定です。課題や研究の切り口は多岐にわたります。幅広い分野から皆様の発表をお待ちしております。

  • T2-1 スギ ・ コナラの各部位およびリターに対する放射性セシウムの浸出試験
             眞中卓也(森林総合研究所)ら
  • T2-2 大気沈着形態が森林の放射性セシウムの初期挙動に及ぼす影響
             加藤弘亮(筑波大学)ら
  • T2-3 染料トレーサーを用いたスギ林土壌中放射性セシウムの空間分布の評価
             三嶋駿介(筑波大学)ら
  • T2-4 採取市町村内のばらつきを考慮した野生きのこの放射性セシウム濃度特性
             小松雅史(森林総合研究所)
  • T2-5 原木シイタケ露地栽培におけるホダ木から子実体への移行係数の経年変化
             成松眞樹(岩手県林業技術センター)

T3.樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots

コーディネータ:平野恭弘(名古屋大学)、大橋瑞江(兵庫県立大学)、野口享太郎(森林総合研究所)

3月26日 9:30~11:45 会場 Room 6, ポスター発表 3月25日~27日 P-483~494

公募セッション「樹木根の成長と機能」では,樹木根をキーワードに太い根から細い根まで,生態系レベルから細胞レベルまで,根と関連した多岐にわたる研究を公募し,報告対象といたします。本公募セッションでは,樹木根だけでなく,様々な境界領域分野との融合を目指します。研究内容に「根」に関する測定や事象があれば,葉や材をはじめとする樹木地上部に関する研究,土壌微生物や化学特性,緊縛力など土壌に関する研究,温暖化や酸性化といった環境変動に関する研究など,根以外を主な対象とする発表も広く歓迎いたします。また「根」を測定項目としたい会員向けに測定方法の共有も目的とします。発表形式は口頭発表またはポスター発表とします。発表当日は,趣旨説明の後,口頭発表していただき,適宜発表間に討論時間を設け,最後に総合討論の時間を設ける予定です。趣旨説明では根研究学会の開催する根研究集会の紹介,2022年7月に米国で開催された第8回国際樹木根会議における最新研究の紹介など樹木根研究の国際および国内動向を森林学会員に広く情報提供します。総合討論では,樹木根と境界領域分野との研究者間ネットワーク作りを促進するための討論も行います。

  • T3-1 巨礫を含む土壌に生育するスギ林根系の地中レーダを用いた検出精度
             金子祥也(名古屋大学)ら
  • T3-2 粗根と細根を対象とした直径別の根現存量分布:地下1mの世界
             朝倉知佳(信州大学)ら
  • T3-3 森林斜面における立木密度と根系効果の評価:斜面模型実験によるアプローチ
             五味高志(名古屋大学)ら
  • T3-4 淡路島のモウソウチクにおける枯死根量の解明
             川瀬耕平(兵庫県立大学)ら
  • T3-5 深層学習手法を用いた根圏画像からの細根抽出の性能比較
             山形拓人(兵庫県立大学)ら
  • T3-6 ヨーロッパアカマツの根の滲出物が泥炭の分解にもたらす影響
             大橋瑞江(兵庫県立大学)ら
  • T3-7 苗場山ブナ林における細根への窒素分配
             野口享太郎(森林総合研究所東北支所)ら