会長挨拶
会長挨拶
このたび日本森林学会会長に就任いたしました宮崎大学の伊藤 哲です。会長就任にあたりご挨拶申し上げます。これまで学会運営に関しては、一般社団法人への移行期であった2010~2011年度の監事を務めて以来、国内研究機関連携、林業遺産選定、JFR編集、会計、および大会支援の業務を理事として担当してまいりました。しかしながら、副会長あるいは総務担当として学会運営全般に直接携わった経験はありません。今後の2年間は、副会長をはじめ経験豊富な役員や事務局の皆様のご支援を賜りながら、その職責を果たしてまいりたいと思います。
現在、森林を取り巻く状況は大きく変化しています。気候変動への対応やカーボンニュートラルの実現、生物多様性の保全と回復、さらにはネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みなど、森林に対する社会的な期待はこれまでになく高まっています。一方で、国内の森林・林業に目を向ければ、再造林の推進や適正な森林の再配置、森林管理の担い手確保や木材利用の促進・拡大、変動気候下における防災・減災機能の強化、さらには野生動物との共存など、生活に密接した多くの課題が存在しています。このような状況のもとで、森林科学には科学的知見の提供を通じて社会の意思決定を支えることが期待されており、その発展を担う日本森林学会が果たすべき役割はますます大きくなっています。学会としても、研究成果や森林科学の魅力をより分かりやすく発信するとともに、社会との対話を深めるための広報活動の充実についても検討し、その存在感を高めていきたいと思います。
こうした中、今期は将来を見据えた学会運営の礎を築くため、いくつかの課題に取り組む必要があると考えています。まず、若手研究者や学生の育成・支援は、学会の将来を左右する重要な課題です。我が国ではいわゆる「2040年問題」が議論されており、多くの大学において学生数の減少が大きな課題になると予想されています。この問題は、将来的には森林科学分野の研究者や技術者の担い手確保という形で学会にも影響を及ぼすでしょう。本学会が持続的に発展していくためには、若い世代にとって魅力ある存在であり続ける必要があります。研究発表や交流の機会の充実はもちろんのこと、キャリア形成に役立つ情報提供や多様な活躍の場との接点づくりなどについても検討し、若手会員の成長を支える環境づくりに努めていきたいと考えています。また、そのような魅力ある学会づくりを進める上で、国際交流の推進も重要な課題です。近年、国際交流の重要性はますます高まっており、本学会でも年次学術大会における国際交流会や国際交流ポスター発表などを通して、その促進に取り組んできました。しかし、今後の国際化においては、英語による情報発信や海外との交流機会を拡大するだけでなく、日本森林学会としてどのような国際的役割を果たしていくのか、どのような学会を目指すのかという将来像を明確にすることが重要であると考えています。国際化についても、若い世代にとって魅力ある学会づくりという視点を大切にしながら、会員の皆様と議論を重ね、中長期的な視点でその方向性を探っていきたいと思います。
これらの将来に向けた取り組みと並行して、学会運営の基盤整備も進める必要があります。会員サービスの向上と業務の効率化を図るため、会員管理システムをはじめとする各種手続きの合理化・簡素化については、できるだけ早期に実現したいと考えています。学会運営を支える基盤を整えることは、将来に向けた新たな取り組みを進めるうえでも重要な条件になるでしょう。また、今回の役員体制の特徴の一つとして、会長である私に加え、会務全般を統括する総務担当理事も首都圏から離れた地方に所属していることが挙げられます。学会運営における多様性の確保や地方創生の視点から見れば、一つの特徴的な体制と言えるかもしれません。その一方で、学会事務局をはじめとする関係者との物理的距離が大きい中で学会運営を進めることは、新たな挑戦でもあります。コロナ禍以降、オンライン会議やリモートでの協働は広く定着しました。こうした環境変化を活かしながら、遠隔地からでも円滑な学会運営を実現できる体制を模索し、今後の学会運営の新しいあり方を模索していきたいと考えています。
この学会の特徴の一つとして、大学や森林総合研究所など主に基礎・応用の研究開発を担う機関に所属する会員と、都道府県の公設林試や地方自治体など主に現場ニーズへの対応が求められる機関に所属する会員が、一堂に会している点があげられます。私としては、前者、すなわちアカデミック寄りの研究を進めていく部分と、後者、すなわち現場の森林管理に直結する研究を進めていく部分の両方が充実する必要があると考えております。そのため、理事・主事の皆様に過度の負担とならない範囲で、さまざまな取組みを検討し、バランスよく運営していきたいと思います。
これらの課題に取り組み、日本森林学会のさらなる発展につなげていくためには、会員の皆様のご理解とご協力が不可欠です。理事・主事・事務局の皆様と力を合わせながら、会員の皆様の研究活動の支援と森林科学を通じた社会への貢献の強化に努めてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本森林学会会長 伊藤 哲
(2026年6月)