Journal of Forest Research, Vol.22, No.4(2017年8月)

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:A stand level model derived from National Forest Inventory data to predict periodic annual volume increment of forests in Italy
巻頁: J For Res 22 (4): 209–217
題名: イタリア国家資源調査データを用いた林分レベル材積成長予測モデルの開発
著者: Patrizia Gasparini・Lucio Di Cosmo・Maria Rizzo・Diego Giuliani
所属: Consiglio per la ricerca in agricoltura e l’analisi dell’economia agraria
抄録: A model was developed for predicting the periodic annual volume increment (PAI) of forests using variables commonly recorded through field surveys or the remote sensing. The model was developed using the Italian National Forest Inventory (INFC2005) data, publicly available at Data from 5,707 plots were split into two groups. The first was used for fitting the model; the second was used for cross validation. Model reliability for applications at the local, in the Alpine and Mediterranean regions, and at the country level was tested. A sensitivity analysis was carried out to investigate the effects of entering inaccurate values of the number of trees per hectare, one of the predictors of the final model, that may occur in case of biased estimates from the remote sensing. During model calibration, the highest proportion of increment variation was captured using forest category as dummy variable and, in this respect, this study supports the classification of forests on ecological basis as a stratification criterion in environmental sampling. The model explained 72% of PAI and it predicted annual increment at plot level with no statistical difference to the observed value in any forest category, at the country level.

種類: 原著論文/環境
Title: Increase in stream water nitrate nitrogen concentrations caused by a disturbance to a forested catchment by Japanese oak wilt
巻頁: J For Res 22 (4): 218–223
題名: ナラ枯れによる森林流域の攪乱によって引き起こされる渓流水中の硝酸態窒素濃度の上昇
著者: 今村直広・五名美江・田中延亮
所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林生態水文学研究所
抄録: 近年、我が国ではナラ枯れが流行し、ほぼ全ての県に広がってきている。ナラ枯れによる森林流域の攪乱によって引き起こされる渓流水中の硝酸態窒素濃度への影響を明らかにするため、針広混交二次林における7年間の硝酸態窒素濃度の変化を調査した。ナラ枯れは、調査期間中の5年目に発生し、7年目まで継続した。5年目、6年目、7年目には、ナラ枯れにより林分の胸高断面積合計の4.7%、3.0%、2.5%が失われ、最終的には樹冠投影面積の9.7%が失われた。また、ナラ枯れ後の平均硝酸態窒素濃度(3.99 µmol L-3)は、ナラ枯れ前(1.99 µmol L-3)よりも有意に高かった。これらのことは、ナラ枯れによる森林流域のわずかな攪乱でさえも、渓流水中の硝酸態窒素濃度の上昇を引き起こすことを示唆していた。

種類: 原著論文/生物-生態
Title: Effects of 10 years of fencing under a gap and closed canopy on the regeneration of tree seedlings in an old-growth Japanese fir (Abies firma) forest overbrowsed by sika deer
巻頁: J For Res 22 (4): 224–232
題名: シカの採食圧を受けてきた老齢モミ林の林冠ギャップと閉鎖林冠下に10年間設置した植生保護柵が樹木実生の更新に及ぼす効果
著者: 田村 淳・中島浩一
所属: 神奈川県自然環境保全センター
抄録: ニホンジカの採食圧下のモミ林の再生手法を検討するために,林冠ギャップ形成直後にギャップと閉鎖林冠下に植生保護柵を設置して,その内外の4サイト(ギャップ区,ギャップ柵内区,林冠区,林冠柵内区)で,林冠の主要構成種の5樹種と先駆樹種の5樹種の計10種について,実生の発生,生残を10年間追跡調査した.モミとイロハモミジ,ケヤキの実生は調査開始した時点ですでに4サイトに出現し,先駆樹種の5種はギャップ区とギャップ柵内区で発生し,林冠区と林冠柵内区ではほとんど発生しなかった.累積生存率は10種ともにギャップ柵内区でもっとも高い傾向があり,6種では有意差が認められた.10種の最大樹高は調査開始時点に4サイトで20cm未満と同程度であったのに対し,10年後にはギャップ柵内区でもっとも高く,ギャップ区と林冠区,林冠柵内区での最大樹高は同程度で推移した.10年後のギャップ柵内区における樹高階分布は先駆樹種が樹高150cm階以上を占め,その下層にケヤキやイロハモミジ,モミがあったのに対して,林冠柵内区では樹高30cm階を超える樹種はなかった.これらの結果は,どの樹種もシカの採食圧を排除したギャップで発生,成長することを示している.シカの強い採食圧下でのモミ林の再生のためには,ギャップが形成されてからすぐに柵を設置することが有効である.

種類: 原著論文/生物-生態
Title: Aboveground tree additive biomass equations for two dominant deciduous tree species in Daxing’anling, northernmost China
巻頁: J For Res 22 (4): 233–240
題名: 中国最北端大興安嶺地区に優占する落葉樹2種の地上部に関する相加的現存量方程式
著者: Shengwang Meng・Qijing Liu・Guang Zhou・Quanquan Jia・Huixia Zhuang・Hua Zho
所属: Beijing Forestry University
抄録: Biomass models for trees in Daxing’anling are imperative for carbon inventory, but available models are extremely scarce. The objective of this study was to formulate systems of additive equations to predict the aboveground biomass of two dominant deciduous species of Betula platyphylla and Populus davidiana in Daxing’anling using diameter at breast height (d) or both d and height (h) as independent variables. Best-fit models for individual fractions (stem wood, stem bark, branch and foliage) were developed simultaneously on the basis of seemingly unrelated regression, forcing compatibility among different components. Model performance was validated by the jackknifing method. The results revealed that log-transformed models are favorable and that all models consistently fit well within R2 = 0.908–0.994, and R2p = 0.898–0.994. Adding h into the additive models did not significantly improve the model fitting or performance, with branches and foliage yielding worse-fitting effects. Stem biomass contributed the largest proportion (approximately 60%) of aboveground biomass. In conclusion, the additive system of biomass equations using d as the single predictor could be easily and readily applied to further applications, providing a reference for biomass estimating and carbon accounting.

種類: 原著論文/生物-生態
Title: Influence of patch size and resource quantity on litter invertebrate assemblages in dry treeholes
巻頁: J For Res 22 (4): 241–247
題名: 樹洞においてパッチサイズと資源量が土壌動物群集に及ぼす影響
著者: 吉田智弘・宮松友浩・綾部慈子
所属: 東京農工大学農学部
抄録: 樹洞は森林地上部においてリターが堆積するくぼみであり、無脊椎動物の棲みかとなっている。本研究では、人工樹洞を用いた野外実験と自然樹洞の調査によって、広葉樹の樹洞における陸生無脊椎動物の個体数を決定する因子を検証した。同質のリターを用いた人工樹洞では、リター密度(樹洞容量あたりのリター量)は全動物個体数と正の相関を、初期リター量に対する残存リターの割合と負の相関を示した。これらの結果は、リター密度が高いと、動物個体数が増加し、リター分解が進行することを示唆している。しかしながら、自然樹洞では、動物個体数はリター密度、リター量、樹洞容量と有意な相関がみられなかった。おもに微細有機物で構成されているリターの重量は、樹洞の開口面積および容量が大きいほど高い値であり、すでに分解されたリターが容量に応じて詰まっていることを示している。このようにリターの質が樹洞によって異なるため、自然状態下において環境因子と無脊椎動物の個体数との間に有意な結果が表れなかったものと考えられる。本研究の結果から、リター量とリター密度が樹洞の陸生動物群集の構造に対して重要な因子であるが、自然条件下ではそれらの効果は他の要因によって弱められていることが示唆された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title: Species-specific growth patterns of trees neighboring dead oak trees caused by Japanese oak wilt disease
巻頁: J For Res 22 (4): 248-255
題名: ナラ枯れによるコナラ枯死木の周辺樹木個体の種特異的な成長パターン
著者: 畑 憲治・岩井紀子・佐藤貴紀・澤田晴雄
所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科
抄録: ナラ枯れによる枯死が周囲の樹木の成長パターンに及ぼす影響は枯死個体のサイズ、密度および枯死個体と対象個体との距離に依存するか、また、この依存の有無や程度は種間で異なるかを検証するために、日本の温帯林においてナラ枯れによって枯死したコナラQuercus serrataが周囲の樹木の成長速度に及ぼす影響を明らかにした。東京大学赤津研究林内に設置された1haプロットにおけるナラ枯れ前後9年間の樹木の胸高直径と位置情報のデータを用いて、主要11樹種の絶対成長速度(AGR)と競争指数(CI)との関係を評価した。CIは対象個体を中心とする任意の半径内(2.5~30 mの範囲で2.5 m間隔)に存在するコナラの枯死個体のDBH、密度および対象個体との距離から計算した。11樹種のうち8樹種において、CIとAGRとの間に正の関係が見られ、これらの樹種は耐陰性が高い樹種であった。本研究の結果は、ナラ枯れによる枯死はいくつかの耐陰性が高い樹種の成長速度を増加させ、これは枯死個体のサイズや枯死個体との距離に依存することを示唆する。また、この成長速度の増加が検出される時期は、樹種間で異なることが示唆された。

種類: 短報/環境
Title: Changes in the chemical compositions of leaf litter in the canopy of a Japanese cedar plantation
巻頁: J For Res 22 (4): 256–260
題名: スギ人工林の林冠における葉リターの化学組成の変化
著者: 松下彩・吉田智弘・肘井直樹・竹中千里
所属: 名古屋大学大学院生命農学研究科
抄録: 林冠の葉リターは、枝や着生植物に引っかかったり、枝や幹に付着し続けたりして不均一に分布している。スギはリターフォール前に数年間枝葉や枝に付着し続けた多量の林冠リターを保持している。林冠におけるリターの滞留はリターフォールや林内雨の化学組成に影響すると予想される。私たちはスギ林冠における葉リターの滞留の影響を明らかにするために、葉リターの異なる齢ごとに葉から洗浄された溶存物およびその残渣の化学組成を分析した。洗浄処理後の葉リターの化学成分は、葉の枯死直後において、全炭素、全窒素、炭素/窒素比に一時的な変化を示した。枯死後2年以上経過した葉リター(ODL)からの溶存物内の無機イオン濃度は高い値を示し、スギ林冠内の溶脱や化学成分の捕捉におけるODLの重要性を示唆している。私たちの結果は、①スギの林冠が異なる質の葉リターを保持していること、②林冠に付着し続けた枯葉から多量の溶存成分が溶脱していること、を示した。

種類: 短報/生物-生態
Title: An aluminum-resistance mechanism in Eucalyptus camaldulensis: complexation between aluminum and oenothein B in presence of organic acids in vitro
巻頁: J For Res 22 (4): 261–264
題名: Eucalyptus camaldulensisのアルミニウム耐性機構:有機酸共存下でのアルミニウムとエノテインBの複合体形成
著者: 田原恒、平舘俊太郎、橋田光、篠原健司
所属: 国立研究開発法人森林総合研究所
抄録: 我々は、最近、高アルミニウム(Al)耐性樹木Eucalyptus camaldulensisから、Alと結合しAlを無毒化する新規物質として加水分解性タンニンの一種であるエノテインBを同定した。根でエノテインBが主に局在するシンプラストには、既知のAl無毒化物質であるクエン酸やシュウ酸も存在する。本研究では、クエン酸やシュウ酸が共存しても、エノテインBがAlと複合体を形成できるかを明らかにするために、AlとエノテインB、クエン酸、シュウ酸の混合液を調製し、混合液中のAlの化学形態を分析した。混合液の各物質の濃度は、E. camaldulensisの根のシンプラストにおける濃度を模した。混合液中のAlのうち、27%は不溶性画分に、28%は高分子量(> 10 kDa)の可溶性画分に検出された。3種のAl無毒化物質のうち、エノテインBのみがAlと不溶性あるいは高分子可溶性の複合体を形成するため、混合液のAlの半分以上はエノテインBと複合体を形成していると考えられる。また、混合液中の低分子可溶性Alの主要な形態は、単純なAl-クエン酸やAl-シュウ酸複合体ではないことが27Al-核磁気共鳴分光法によって示された。以上の結果は、エノテインBがE. camaldulensisの根のシンプラストにおいてAlの無毒化に寄与しているという我々の仮説を支持している。