Journal of Forest Research Vol 16, No 6 (2011年12月)

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種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Estimation of mean tree height using small-footprint airborne LiDAR without a digital terrain model
巻頁: J For Res 16 (6): 425-431
題名: DTMを要しない航空機LiDARによる平均樹高推定手法
著者: 山本一清,高橋與明,宮地洋輔,近藤直人,森田真一,中尾元彦,柴山卓史,高市善幸,都竹正志,村手直明
所属: 名古屋大学大学院生命農学研究科
抄録: 航空機LiDARデータにより平均樹高を推定するためには,通常数値地形モデル(DTM) が必要である。しかし,航空機LiDARデータのみから,山岳地域における精密なDTMを作成するには,特にレーザー透過率の低い林分においては多大な時間と労力を要する。我々は,既報で得られた上層木の梢端座標のみを通過する仮想的なサーフェースモデル(TSM)とDTMはほぼ平行であるという知見から,TSMとレーザー地表面反射位置間の標高差が平均樹高に相当すると仮定した。この仮定のもと,我々はDTMを要しない新たな平均樹高推定手法を提案した。本手法では,リファレンスデータを利用した回帰モデル等を介さず,航空機LiDARデータから完全に自動的,かつ直接平均樹高を推定することが可能である。複数のヒノキ林における,本手法による推定平均樹高と実測平均樹高間の回帰分析から,本手法により1m程度の精度で平均樹高を効率的に推定できることが示唆された。

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Influence of using texture information in remote sensed dataon the accuracy of forest type classification at different levels of spatial resolution
巻頁: J For Res 16 (6): 432-437
題名: リモートセンシングデータのテクスチャ情報の利用が林相区分の分類精度に与える影響
著者: 太田徹志,溝上展也,吉田茂二郎
所属: 九州大学大学院生物資源環境科学府
抄録: リモートセンシングデータのテクスチャ情報の利用が林相区分の分類精度に及ぼす影響を,複数の空間分解能間で比較した。空間分解能4mのデータをリサンプリングして,空間分解能4mから30mまでの複数のデータを作成した。これらのデータに対して,1) スペクトル情報のみ,2) テクスチャ情報のみ,3) スペクトル情報とテクスチャ情報の3種類のデータセットで林相区分を行い,それぞれの分類精度を検証した。その結果,スペクトル情報とテクスチャ情報を組み合わせた場合の分類精度は,スペクトル情報のみの場合やテクスチャ情報のみの場合よりも分類精度が高かった。最も分類精度が低かったのはテクスチャ情報のみの場合であった。また,空間分解能25mから30mでは,スペクトル情報のみの場合と,スペクトル情報とテクスチャ情報を組み合わせた場合の分類精度に明確な差はみられなかった。以上の結果から,空間分解能4mから25m未満までの場合は,スペクトル情報とテクスチャ情報を組み合わせる事が望ましく,空間分解能が25mより粗い場合には,テクスチャ情報を考慮する必要性が低いことが示唆された。

種類: 原著論文/環境
Title:  Precipitation chemistry at a high elevation forest in central Taiwan
巻頁: J For Res 16 (6): 438-445
題名: 台湾中部の高地林における降水の化学性
著者: Shih-Bin Ding, Teng-Chiu Lin, Shih-Chien Chan, Jeen-Liang Huang, Neng-Hui Lin
所属: 国立台湾大学理学院
抄録: High elevation ecosystems are particularly sensitive to environmental change. Mountain agriculture is extending to areas at high elevations in Taiwan but the effects on nutrient cycling of the surrounding ecosystems are largely unknown. We examined precipitation chemistry at Piluchi Experimental Forest in central Taiwan to evaluate the contributions of local air pollution and long-range transport of air pollutants on nutrient cycling at this seemingly remote forest. Sea-salt aerosols and anthropogenic pollutants resulting from long-range transport of air pollutants and mountain agriculture activities are the key factors affecting precipitation chemistry at Piluchi Experimental Forest. Precipitation chemistry was dominated by ions of oceanic origin in the summer and by anthropogenic pollutants SO4 2−, NO3 and NH4 + in the winter and spring, the northeast monsoon season. The much higher concentrations of S and N in the northeast monsoon season than the summer suggest a substantial contribution from long-range transport as the prevailing air masses moved from inland China and passed over the industrialized east coast of China before arriving in Taiwan. The very high concentration of NH4+ (22 μeq L−1) in the spring, when the local application of N-containing fertilizers was high, signifies the influences of mountain agriculture. Despite very low concentrations relative to other sites in Taiwan, annual input of NH4 + (3.6 kg ha−1 year−1), NO3 (7.2 kg ha−1 year−1) and SO4 2− (10 kg ha−1 year−1) via precipitation was substantial suggesting that high elevation ecosystems of Taiwan are not free from the threat of atmospheric deposition of pollutants.

種類: 原著論文/環境
Title:  Contribution of understory vegetation to minimizing nitrate leaching in a Japanese cedar plantation
巻頁: J For Res 16 (6): 446-455
題名: スギ人工林における硝酸態窒素溶脱の低減に対する下層植生の寄与
著者: 馬場光久,阿部晋太郎,笠井慎子,杉浦俊弘,小林裕
所属: 北里大学獣医学部
抄録: 長伐期化によりスギ (Cryptomeria japonica) 人工林下に発達した下層植生の硝酸態窒素溶脱の低減に対する寄与を明らかにするため,下層植生の発達した対照区と下層植生の地上部を刈取って除去した刈取り区において物質収支を比較した。加えて,生成された酸に対する緩衝作用についても検討した。下層植生を刈取ると,深さ10cmにおける硝酸態窒素のフラックスが増大し,特に夏期には対照区に比べて有意に多くなった。0~10cm層における年間の硝酸態窒素溶脱量は,対照区で−21.9 mmolc m−2 year−1,刈取り区では103 mmolc m−2 year−1であった。この結果,窒素の形態変化に伴う酸の生成量が増大し,カルシウムイオン,マグネシウムイオン,およびケイ酸の溶脱量が増大した。ケイ酸の溶脱量とカルシウムイオン,あるいはマグネシウムイオンの溶脱量との間には相関関係が見られ,刈取り区における相関係数は対照区よりも高かった。これらの結果から,窒素の形態変化にともなって生成された酸がイオン交換作用だけでなく,化学的風化作用によっても緩衝されていると考えられた。また,下層植生による硝酸態窒素溶脱の低減は,長期的な大気由来の窒素沈着による窒素飽和を下層植生が抑制しうることを示唆した。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Assessing the diversity of dung beetle assemblages utilizing Japanese monkey feces in cool-temperate forests
巻頁: J For Res 16 (6): 456-464
題名: 冷温帯林におけるニホンザルの糞を利用する食糞性コガネムシ群集の多様性の評価
著者: 江成広斗,小池伸介,坂牧はるか
所属: 京都大学霊長類研究所
抄録: 冷温帯林に生息する食糞性コガネムシ(以下,糞虫)の分布や種構成に関する生態学的研究は極めて乏しい。本研究では,ニホンザル(Macaca fuscata)の糞を利用する糞虫群集を評価するために,広域的なインベントリ調査を白神山地北東部において実施した。併せて,人為的な森林撹乱が糞虫群集に及ぼす影響を定量化するために,一次林,二次林,及び針葉樹人工林に,ニホンザルの糞を誘引餌としたピットフォールトラップを設置し,採集された糞虫の個体数と多様性を春季・夏季・秋季にそれぞれ評価した。その結果,(1)ニホンザルの糞を利用する糞虫は14種で,そのうち8種がdwellerタイプ,6種が tunnellerタイプであること,(2)春季と夏季においてケブカマグソコガネ(Aphodius eccoptus)が糞虫群集のコア種になること,(3)春季に全ての糞虫の出現頻度が最も高まること,(4)人為的な森林攪乱は冷温帯林に生息する糞虫の種数及びバイオマスを増加させないこと,の4点が明らかになった。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Stress responses of Salix gracilistyla and Salix subfragilis cuttings to repeated flooding and drought
巻頁: J For Res 16 (6): 465-472
題名: 冠水と乾燥の繰り返しに対するネコヤナギとタチヤナギさし木苗のストレス反応
著者: 中井亜理沙,木佐貫博光
所属: 三重大学大学院生物資源学研究科
抄録: 粒径の粗い礫質な基質上に分布するネコヤナギと粒径の細かいシルト質または粘土質の基質上に分布するタチヤナギについて,両種の冠水と乾燥の繰り返しに対する反応を比較するために,ガラス室内で栽培したさし木苗の葉の夜明け前の水ポテンシャル(Ψwpd),浸透調節(Ψwtlp, Ψosat),バイオマス生産を調べた。冠水処理(処理期間:1週間または3週間)と乾燥処理(処理期間:1週間または2週間)を組み合わせた4処理区と対照区を設置した。Ψwpdは1週間の冠水処理と2週間の乾燥処理を組み合わせた処理区で低下した。浸透調節は,両種とも3週間の冠水処理との組み合わせでは,乾燥処理期間が長い場合でも高まらなかった。さらに,両種とも乾燥処理期間が長い場合でも,葉バイオマス割合の減少または根バイオマス割合の増加を示さなかった。ネコヤナギは,冠水による根の成長阻害をタチヤナギよりも強く受けていた。冠水処理期間にかかわらず,タチヤナギは,ネコヤナギよりも高いシュート/根バイオマス比を示した。ネコヤナギでは,1週間の冠水処理と3週間の冠水処理間で肥大皮目バイオマス割合に差はみられなかったが,タチヤナギの肥大皮目バイオマス割合は,1週間の冠水処理において3週間の冠水処理の値よりも低かった。ネコヤナギはタチヤナギと比べて,冠水下での根への資源配分の低さと肥大皮目の発生しやすさを示した。このような,2種の冠水に対する反応の違いは,ハビタットの基質条件の違いに関与していると考えられる。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Small-scale variation of vegetation in a mixed forest understorey is partly controlled by the effect of overstory composition on litter accumulation
巻頁: J For Res 16 (6): 473-483
題名: 広葉樹混交林における上層の樹種組成による堆積有機物層の発達の違いと下層植生の小規模な変異
著者: J. Rodriguez-Calcerrada, N. Nanos, M. C. del Rey, U. Lopez de Heredia, R. Escribano, L. Gil
所属: Centre of Functional and Evolutionary Ecology, CNRS, France
抄録: We investigated how richness and composition of vascular plant species in the understory of a mixed hardwood forest stand varied with respect to the abundance and composition of the overstory. The stand is in central Spain and represents the southernmost range of distribution of several tree and herbaceous species in Europe. Understory species were identified in 46 quadrats (0.25 m2) where variables litter depth and light availability were measured. In addition, we estimated tree density, basal area, and percent basal area by tree species within 6-m-radius areas around each plot. Species richness and composition were studied using path analysis and scale-dependent geostatistical methods, respectively. We found that the relative abundance of certain trees species in the overstory was more important than total overstory abundance in explaining understory species richness. Richness decreased as soil litter depth increased, and soil litter increased as the relative proportion of Fagus sylvatica in the overstory increased, which accounted for a negative, indirect effect of Fagus sylvatica on richness. Regarding understory species composition, we found that some species distributed preferentially below certain tree species. For example, Melica uniflora was most frequent below Fagus sylvatica and Quercus petraea while the increasing proportion of Q. pyrenaica in the overstory favored the presence of Cruciata glabra, Arenaria montana, Prunus avium, Conopodium bourgaei, Holcus mollis, Stellaria media and Galium aparine in the understory. Overall, these results emphasize the importance of individual tree species in controlling the assemblage and richness of understory species in mixed stands. We conclude that soil litter accumulation is one way through which overstory composition shapes the understory community.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Vegetation status on Nishi-jima Island (Ogasawara) before eradication of alien herbivore mammals: rapid expansion of an invasive alien tree, Casuarina equisetifolia (Casuarinaceae)
巻頁: J For Res 16 (6): 484-491
題名: 外来草食動物根絶前の小笠原諸島西島の植生:侵略的外来樹種モクマオウの急速な拡大
著者: 安部哲人,安井隆弥,牧野俊一
所属: 森林総合研究所九州支所
抄録: 島嶼生態系を攪乱している外来種の根絶効果を明らかにするためには,根絶前の状態を記載しておく必要がある。小笠原諸島西島は小面積の無人島であるが,植生に大きな影響を与える外来種であるノヤギとクマネズミの根絶が試験的に進められている。本研究ではこれら外来動物の根絶に着手する前の植生やフロラを現地調査で記録するとともに,過去の空中写真や植生図を用いて植生の変遷を解析した。2006年で最も優占する植生はモクマオウ林とシバ草地であり,在来樹種の林分は断片的であった。フロラ調査からいくつかの絶滅危惧種を含む69種の維管束植物が確認された.モクマオウ林の面積は30年足らずの間に大きく拡大していることが明らかになった。以上の結果から,西島の植生を回復させるためには,外来動物の根絶だけでなく,モクマオウ対策も必要であることが示唆された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Timing of premature acorn abortion in Quercus serrata Thunb. is related to mating pattern, fruit size, and internal fruit development
巻頁: J For Res 16 (6): 492-499
題名: 交配様式と堅果のサイズおよび堅果内部の発達と関連したコナラにおける成熟前堅果中絶のタイミング
著者: 鶴田燃海, 加藤珠理, 向井譲
所属: 岐阜大学応用生物科学部
抄録: 堅果の発達と中絶のタイミングは,コナラ属の繁殖における重要な母樹の戦略の一つである。本研究ではコナラにおける堅果中絶の意義を明らかにするため,異なる交配パターン(他家,自家,および無授粉処理)の人工交配を行い,堅果の中絶とサイズおよび内部発達のタイミングを調べた。授粉後80日までは,どの授粉処理においても堅果は同じ様に中絶されていた。しかし自家および無授粉堅果は,ほぼ全てが授粉から80日から120日の期間にかけて急速に中絶された。この期間に他家授粉と不都合な授粉(自家および無授粉)との間で,堅果の内部発達に違いが見られた。加えて他家授粉による堅果において,子葉の発達とサイズの急速な増加が観察された。中絶のタイミングと急速な堅果サイズの成長および貯蔵器官の発達のタイミングの一致から,この堅果の維持戦略は資源制約下での繁殖成功を上げるための母樹の適応の結果であることが示唆された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Effects of deer abundance on broad-leaf tree seedling establishment in the understory of Abies sachalinensis plantations
巻頁: J For Res 16 (6): 500-508
題名: トドマツ人工林における侵入広葉樹へのシカの影響
著者: 明石信廣,雲野明,寺澤和彦
所属: 北海道立総合研究機構林業試験場
抄録: ニホンジカによる採食が日本各地の森林の更新に大きな影響を及ぼしているが,更新過程への影響は定量的に評価されていなかった。本研究では,北海道内でシカの生息密度の異なる7地域のトドマツ人工林内において稚樹の調査を行い,シカが広葉樹の更新に及ぼす影響に関する指標を検討した。各地域に5 ´ 20mの調査区を5箇所設定し,樹高30~200 cmの稚樹の密度と,シカの食痕のある本数の割合(食痕本数率)を調査した。それぞれの調査地域のシカの生息密度を示す指標として,狩猟者による単位努力量あたりのシカ目撃数(SPUE)とスポットライトセンサスによるシカ目撃数(SLC)を用いた。稚樹密度はシカ密度,ササの被度と負の関係があり,上層木の胸高断面積にも影響を受けていた。食痕本数率はシカ密度と正の相関があり,稚樹の樹種に対するシカの嗜好性の影響を受けていた。しかし,シカ密度に対して,食痕本数率は稚樹密度よりも明瞭な相関を示した。シカ密度が非常に高い地域では,樹高100cmを超える高木性樹種の稚樹はほとんどみられなかった。これらの結果から,SPUE6頭/人日あるいはSLC15頭/10kmを超えると,広葉樹の更新は阻害されると考えられた。稚樹の食痕本数率や,樹高100cmを超える高木性樹種の稚樹密度や食痕の有無は,シカの影響を示す有効な指標である。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Estimation of genetic data and breeding values of traits related to wax production in Rhus succedanea L. clones using the REML/BLUP method
巻頁: J For Res 16 (6): 509-517
題名: ハゼノキクローンにおけるREML/BLUP法による木蝋生産に関する諸形質の遺伝母数と育種価の推定
著者: 平岡裕一郎,倉本哲嗣,大平峰子,岡村政則,谷口亨,藤澤義武
所属: 森林総合研究所林木育種センター
抄録: ハゼノキは果実から木蝋を抽出する栽培樹木である。本樹種の5の在来品種と13の優良候補個体のつぎ木クローンを用いて,木蝋生産に関する諸形質(房当たりの果実数:FN,果実重量:FW,樹冠投影面積当たりの房数:CN,果実含蝋率:WC)の遺伝母数を推定した。4年間の調査期間で果実生産の豊凶が確認され,2001年と2003年が豊作,2002年と2004年が不作年であった。制限付き最尤法(REML)による分散・共分散成分から求めた広義の遺伝率は,FNとCNで低く,FWとWCで高い傾向があり,遺伝相関は4年間を通じてFWとWCで正,FNとFWで負であった。CNと他の形質の遺伝相関は豊作年で正,不作年で負であった。各クローンにおける,各形質・各年次の最良線形不偏予測(BLUP)による育種価は,FWとWCで年次間相関が正となったが,CNは豊作年と不作年それぞれの間で正の相関が得られた。育種価を用いた木蝋生産量とその年次間の安定性から,在来品種・優良候補個体の評価を行い,各形質や各クローンの特性を基に今後のハゼノキ育種について考察した。

種類: 短報/生物-生態
Title:  Isolation and characterization of 10 new microsatellite loci in the ambrosia beetle Platypus quercivorus
巻頁: J For Res 16 (6): 518-521
題名: カシノナガキクイムシからのマイクロサテライト領域の単離とその多型性
著者: 濱口京子,加藤賢隆,江崎功二郎,鎌田直人
所属: 森林総合研究所関西支所
抄録: カシノナガキクイムシはナラ枯れの原因となるナラ菌を媒介する害虫である。本研究ではカシノナガキクイムシに見られる複数の遺伝的タイプのうち”タイプ1”からビオチン化プローブを用いて10ローカスのマイクロサテライトマーカーを開発した。マーカーの多型性は53個体のカシノナガキクイムシを用いて検証した。ローカスあたりのアリル数は2~9(平均4.9),ヘテロ接合体の観察値と期待値は,それぞれ0.49~0.77および0.44~0.80であった。ハーディー・ワインベルグ平衡からの有意なずれ,および連鎖不平衡は認められなかった。また,多くのローカスはタイプ1以外の遺伝的タイプでも増幅可能であった。本研究で開発したマーカーは,カシノナガキクイムシの集団遺伝学的研究や血縁構造解析において有効なツールとなるであろう。

種類: 短報/生物-生態
Title:  A simultaneous estimation procedure for the parameters of the maximum size-density line and self-thinning curve to predict stand development of fast-growing tropical species
巻頁: J For Res 16 (6): 522-525
題名: 熱帯産早生樹の林分密度管理に用いる最多密度線と自己間引き線のパラメータを同時に推定する方法
著者: 栗延晋,宮浦富保
所属: 森林総合研究所林木育種センター
抄録: 熱帯産早生樹の林分密度管理に用いる最多密度線と自己間引き線のパラメータを同時に推定する方法を考案した。この方法では,対数化した個々の林分の断面積平均直径の増加量に対する本数減少量の比率(r)は,最多密度線からの距離が小さくなるに伴いその傾きに近づき,距離0で傾きに一致すると仮定した。この仮定により,最多密度線を自己間引き線の式に吸収して,rの変化を表すaと最多密度線の傾きk,定数mの3つのパラメータから成る一つの関係式にまとめた。これらのパラメータは,rとそれに対応する断面積平均直径及び林分密度の測定値を先の関係式にあてはめて,ガウスーニュートン法を用いて推定できる。この方法をアカシア・マンギュウム(186個)とファルカタ(95個)のデータに適用してパラメータを推定し,以前に算出した最多密度線と比較したところ,前者はほぼ同じ,後者のパラメータの乖離も誤差の範囲内であった。このことから,これまで2段階の計算過程により求めていたパラメータは,今回提案した方法を用いて一度の計算で効率的に推定できることを確認した。

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