Journal of Forest Research Vol 14, No 6 (2009年12月)

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種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Efficiency in wood and fiber utilization in OECD countries
巻頁: J For Res 14 (6): 321-327
題名: OECD加盟国における木材とパルプの利用効率
著者: Hiroko Kando, Joseph Buongiorno
所属: Department of Forest and Wildlife Ecology, University of Wisconsin-Madison
抄録: 利用効率 は、実際の産業用丸太(もしくは木材パルプ)の消費量と基準とする技術を用いて同じ生産量をあげる場合に必要な消費量との比で定義される。ここでいう基準とする技術を用いた場合の消費量とは、OECD加盟国での1961年から2005年までの材料の消費量と製品の生産量の比で定義されるものである。ほとんどのOECD加盟国で1961年から2005年の間に、産業用丸太の利用効率が高まり、また、一定水準の紙と板紙の生産に使われた木材パルプの消費量が著しく減少していることが明らかになった。国別年度別データを用いた回帰分析結果から、国による産業用丸太の利用効率の違いについては、国民一人あたりの森林面積が主な決定要素となっていた。国による木材パルプの利用効率の違いについては、木材パルプの価格と人口密度が主な決定要素であった。

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Characteristic fuel consumption and exhaust emissions in fully mechanized logging operations
巻頁: J For Res 14 (6): 328-334
題名: 全て機械化された伐出作業における燃料消費と排気ガス放出の特徴
著者: Radomir Klvac, Alois Skoupy
所属: Department of Forest and Forest Products Technology, Faculty of Forestry and Wood Technology, Mendel University of Agriculture and Forestry in Brno
抄録: A study was done using eight different logging machines (harvesters and forwarders) in clear-felling operations to quantify the associated fuel consumption, and to define the inherent relationship between engine output power and fuel consumption. Exhaust emissions were also calculated on the basis of mean fuel consumption values, obtained by measurements, and from the developed regression and correlation model for diesel and rapeseed methyl ester (RME) fuels. The calculation considered exhaust emissions associated with the manufacture, distribution, and combustion of the respective fuels. It was found that carbon dioxide emissions amounted to 9.63 kg/m3 of delivered timber for diesel fuel, and to 10.64 kg/m3 for RME. It was also found that when using RME only 2.82 kg/m3 of carbon dioxide emissions originated from fossil resources, therefore, it is only this amount that can be deemed an environmental load, confirming RME as a lesser environmental pollutant.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Ectomycorrhizal fungal community of naturally regenerated Pinus thunbergii seedlings in a coastal pine forest
巻頁: J For Res 14 (6): 335-341
題名: 海岸マツ林における天然生クロマツ実生の外生菌根菌群集
著者: 松田陽介,野口雄太,伊藤進一郎
所属: 三重大学大学院生物資源学研究科
抄録: 日本の海岸林に天然更新したクロマツ実生の外生菌根群集を明らかにするため,当年生実生と5年生以下の実生を採取した.形態的,分子的手法にもとづき当年生667根端と5年生以下の実生1927根端は13系統タイプに識別された.Cenococcum geophilumとともに,カレエダタケ科,ベニタケ科,イボタケ科,Trichophaea属の仲間がクロマツ菌根を形成する菌類と示唆された.その中で,C. geophilumとClavulinaceae sp. 1がそれぞれ1番目,2番目に優占する種であった.サンプル数にもとづく種累積曲線はほぼ平衡状態であり,観察された種数は11種,豊富さ指数のJackknife 2とChao 2ではそれぞれ14種,12種であった.さらに,シンプソンの1/Dが3.89,シャノン-ウィナーのH0が1.71であり,多様性が比較的低いものと示唆された.実生の樹齢間で菌根形成率,系統タイプの出現頻度やタイプ数に有意差は認められなかった.これらの結果は,内地の森林よりも海岸に生育するクロマツ実生に関与する外生菌根菌が少ないことを示唆している.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Pits and rocky microsites in a subalpine forest stand facilitate regeneration of spruce saplings by suppressing dwarf bamboo growth inside a deer-proof fence
巻頁: J For Res 14 (6): 342-348
題名: 亜高山帯林の防鹿柵内におけるピットと岩の林床微地形はササの成長を抑制しトウヒ稚樹の更新を促進する
著者: 木佐貫博光, 中井亜理沙, 灘本明子, 脇野雅子
所属: 三重大学大学院生物資源学研究科
抄録: 採食者シカが不在の場合のミヤコザサ(Sasa nipponica)における林床微地形の被圧パターンを調査した.ササはさまざまな環境状況下にあるトウヒ(Picea jezoensis var. hondoensis)稚樹を駆逐する.中部日本の大台ヶ原の亜高山帯林において,10×100-mの調査区を防鹿フェンス内およびフェンス外にそれぞれ2つずつ設置した.調査区内で,トウヒ稚樹が生育する微地形を調べた.全てのトウヒ稚樹について樹高,当年枝伸長量を測定し,稚樹周囲のササの稈高および被度を測定した.トウヒ稚樹の個体数密度と平均樹高,ならびにササの稈高および被度はともにフェンス内の方が高かった.したがって,フェンス外ではシカの採食による植生への負の影響があり,フェンス内ではササの被圧によるトウヒ稚樹への負の影響がある.フェンス内の林床微地形において,トウヒ稚樹の樹高はピットで最も高かった.一方,ササの稈高と被度はピットと岩の微地形では他よりも低かった.土と根張りの微地形ではピットと岩の微地形よりも,トウヒ稚樹の伸長成長量が低く,ササの稈高と被度が高かった.フェンス内ではササの被度が高かったが,ピットと岩はその成長を抑制し,トウヒ稚樹が繁茂することを可能にした.大きな被害を受けたトウヒ林を稚樹を用いて復旧するためには,防鹿フェンス設置ならびにピットと岩の微地形の創出および維持が必要である.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Leaf photosynthetic responses and related nitrogen changes associated with crown reclosure after thinning in a young Chamaecyparis obtusa stand
巻頁: J For Res 14 (6): 349-357
題名: 間伐後若齢ヒノキ林冠の再閉鎖に伴う葉の光合成応答および窒素濃度の変化
著者: 韓慶民, 千葉幸弘
所属: 森林総合研究所 植物生態研究領域
抄録: 間伐後の林冠再閉鎖に伴う光合成の生化学パラメータおよびその葉内窒素濃度の変化を解明するため、10年生ヒノキ人工林で本数間伐率50%の間伐区(1,500本/ha)と無間伐区(3,000本/ha)を設定し、4つの樹冠層における針葉の最大RuBPカルボキシレーション速度(Vcmax)、葉面積あたり窒素濃度(Na)、および光量子量(PPFD)を4年間にわたって調べた。間伐1年目で樹冠中層および下層のVcmaxが増加し、間伐区の樹冠下層では4年間にわたって高いVcmaxを維持していた。無間伐区では間伐後2年目から葉が枯れ上がり始めた。さらに間伐2年目の間伐区では樹冠上層でVcmaxの顕著な増加が認められた。Naに関しては、間伐1年目では樹冠層間で差が認められなかったが、2年目以降、樹冠中層では明らかに増加していた。このことから間伐に伴って樹冠内の光環境や土壌養分の供給条件が改善されたため、樹冠層の間で葉窒素の再分配が進んだ結果、間伐2年目以降の光合成能力が向上したと考えられた。またNa-Vcmax関係の勾配は、間伐1年目には無間伐区に対して有意な差があったが、2年目以降は勾配に差が認められなかった。間伐後の光合成反応に関するこれらの結果は、炭素固定能に対する間伐施業の効果を判定する際に有効と考えられる。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Resource level as a proximate factor influencing fluctuations in male flower production in Cryptomeria japonica D. Don
巻頁: J For Res 14 (6): 358-364
題名: スギの雄花生産量の年変動に影響を与える至近要因としての個体内資源量の評価
著者: 宮崎祐子, 大澤剛士, 和口美明
所属: 奈良県森林技術センター
抄録: スギ花粉による花粉症を発症する人の数は増加傾向にあり、深刻な社会問題となっている。スギの雄花生産量には年変動があるため、その生産量を予測することが花粉症対策のために求められている。著者らはスギの雄花生産に年変動を与える要因として個体内資源量動態に着目し、解析を行った。また、被陰処理により個体内資源量の操作実験を行い、個体内資源量が雄花生産量に与える影響の検証を行った。その結果、前年夏の気温と降水量および前年に雄花量がその前の年よりも増加することが、雄花生産量に負に影響し、前年夏の日射量、および個体の胸高直径が雄花生産量に正に影響することが予測された。操作実験の結果、被陰処理により個体あたりの雄花生産量は有意に減少し、根の非構造体炭水化物量が正に影響することが示された。これらの結果から、スギの雄花生産量の予測には個体内資源量をパラメータとして考慮することが有効であることが示された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Allometric equations for accurate estimation of above-ground biomass in logged-over tropical rainforests in Sarawak, Malaysia
巻頁: J For Res 14 (6): 365-372
題名: マレーシアサラワク州の択伐熱帯林における地上部バイオマスを正確に推定するためのアロメトリー式
著者: 田中憲蔵, 古谷良, 服部大輔, ジョセフ ジャワ ケンダワン, 田中壮太, 櫻井克年, 二宮生夫
所属: 森林総合研究所 国際連携推進拠点
抄録: アロメトリー式は森林のバイオマス推定に役立ってきた。しかし、アロメトリー式は森林タイプや構成樹種の材密度によって大きく異なり、正確なバイオマスを推定するためには、個々の森林で式の作成が必要なことも分かってきている。これまで東南アジア熱帯雨林地域の択伐林を対象とした式は無かったため、本研究ではマレーシアサラワク州の土壌養分や土性が異なる2つの択伐林分を対象にアロメトリー式の構築を行った。調査は、計27種30本の代表的な樹種を伐倒し、葉、幹、枝の重量を測定し行った。胸高直径と幹、枝、葉、全地上部それぞれの乾重との関係は樹種に関係なく1つのアロメトリー式で近似でき、相関係数も0.83~0.99と高かった。また樹高とのアロメトリー式も相関係数が0.82~0.97と高い精度を示した。さらに、2つの調査地間で式の係数に有意な差は見られなかった。また、今回得られたアロメトリー式を既存の天然林、遷移初期の二次林、熱帯林の一般式と比較したところ、いずれの式とも大きく異なり、天然林と二次林の中間的な値であった。これは構成樹種の平均材密度が、天然林と二次林の中間的な値を示したことが原因であると考えられた。したがって、択伐林のバイオマスを正確に推定する際には、アロメトリー式の適合性を検討する必要があると結論付けられた。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Resilience of stand structure and tree species diversity in subtropical forest degraded by clear logging
巻頁: J For Res 14 (6): 373-387
題名: 亜熱帯林の皆伐後の林分構造と林木種多様性の回復過程
著者: 藤井新次郎, 久保田康裕, 榎木勉
所属: 九州大学大学院生物資源環境科学科
抄録: 琉球諸島の亜熱帯林は過去の皆伐施業により衰退しており、林文構造は少数の林木種により寡占された状態へ移行している。本研究は、皆伐が亜熱帯林の構造を変容させるメカニズムを明らかにした。亜熱帯林における林分の発達と遷移を記述するために、個体ベースモデルSEIB-DGVMに萌芽再生と台風撹乱を新たに導入した。このモデル上のシミュレーションにより二次林から極相林までの再生過程を再現した。萌芽更新は林分発達段階初期において高い幹密度を生み出し、-3/2乗則に伴う自己間引きを引き起こした。70年以降の発達段階後期では、萌芽種の再生と下層種の共存における台風撹乱の促進効果により林木種多様性は変動した。台風撹乱による林冠木の枯死は、スダジイの優占を緩和し、下層におけるその優占も抑制した。結果として、下層種は林冠木の枯死により更新でき、林木種多様性も林分レベルで増加した。モデル上での皆伐実験では、特に萌芽種により優占されている林分ほど種多様性が減少することが明らかとなった。亜熱帯林の回復は、皆伐前の元の種組成により決定づけられた。我々のシミュレーション結果は、伐採の繰り返しが高い種多様性を持つ亜熱帯林をスダジイに寡占された林分へ変遷させることを示唆した。

種類:  短報/環境
Title: Effects of patch cutting on leaf nitrogen nutrition in hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa Endlicher) at different elevations along a slope in Japan
巻頁: J For Res 14 (6): 388-393
題名: 同一斜面上の異なる斜面位置におけるヒノキの葉の窒素特性に小面積皆伐が及ぼす影響
著者: 中西麻美, 稲垣善之, 大澤直哉, 柴田昌三, 平田啓一
所属: 京都大学フィールド科学教育研究センター
抄録: 同一斜面上の異なる斜面位置におけるヒノキ葉の窒素特性に小面積皆伐が及ぼす影響を明らかにするために、斜面上部、中部、下部にそれぞれ伐採区と対照区を設けて、ヒノキ葉の窒素特性を3年間にわたって調べた。土壌の窒素無機化速度、生葉および落葉の窒素濃度は斜面下部で大きかった。土壌の窒素無機化速度と生葉窒素濃度は伐採区で対照区よりも高くなったが、落葉窒素濃度は伐採区と対照区で有意な差は認められなかった。以上の結果、ヒノキ葉の窒素特性と土壌の窒素資源量に斜面位置が強い影響を及ぼしていることが示された。一方で、小面積皆伐は落葉窒素濃度に影響を及ぼしておらず、伐採後に、ヒノキでは落葉窒素濃度の変化によって窒素循環は増大しないことが示唆された。

種類:  短報/生物-生態
Title: Effects of acidic fog and ozone on the growth and physiological functions of Fagus crenata saplings
巻頁: J For Res 14 (6): 394-399
題名: ブナ苗木の生長および生理機能に対する擬似酸性霧 (SAF)とオゾン (O3)ストレスの影響
著者: 鴫原亜土, 松村唯子, 柏木麻佑子, 松本潔, 井川学
所属: 神奈川大学 工学部 物質生命化学科
抄録: 本研究では、ブナ苗木の生長生理機能に対する擬似酸性霧 (SAF)およびオゾン (O3)の影響を調査した。2007年5月から2008年7月まで3年生ブナ苗木に対してpH 3および pH 5 (対照区)の擬似酸性霧を曝露し、さらに各処理区の苗木半分には60 ppbのO3を2007年9月から2008年7月まで曝露した。その結果、対照区に比べpH 3処理区では全乾物生長量および葉中のエピクチクラワックス存在量やCa2+含有量が低下し、また、葉や根部のデンプン含有量も低下する傾向を示した。またO3の曝露により、ブナ苗木の生長生理機能は更に抑制されることを確認した。

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