Journal of Forest Research Vol 14, No 5 (2009年10月)

SpringerLinkへ

種類: エディトリアル
Title:   Establishment of Journal of Forest Research Award
巻頁: J For Res 14 (5): 257
題名: JFR論文賞の創設
著者: 丹下健
所属: JFR編集委員長

種類: 総説/生物-生態
Title:   Emulating natural disturbances: the role of silviculture in creating even-aged and complex structures in the black spruce boreal forest of eastern North America
巻頁: J For Res 14 (5): 258-267
題名: 自然撹乱の模倣:北米東部の北方トウヒ林の同齢多層モザイク林への誘導における造林作業の役割
著者: Nicole J. Fenton, Martin Simard, Yves Bergeron
所属: NSERC-UQAT-UQAM Industrial Chair in Sustainable Forest Management, Universitédu Québec en Abitibi-Témiscamingue
抄録: Ecosystem-based forest management is based on the principle of emulating regional natural disturbance regimes with forest management. An interesting area for a case study of the potential of ecosystem-based forest management is the boreal forest of north-western Québec and north-eastern Ontario, where the disturbance regime creates a mosaic of stands with both complex and simple structures. Old-growth stands of this region have multistoried, open structures, thick soil organic layers, and are unproductive, while young post-fire stands established following severe fires that consumed most of the organic soil show dense and even-sized/aged structures and are more productive. Current forest management emulates the effects of low severity fires, which only partially consume the organic layers, and could lead to unproductive even-aged stands. The natural disturbance and forest management regimes differ in such a way that both young productive and old-growth forests could ultimately be under-represented on the landscape under a fully regulated forest management regime. Two major challenges for ecosystem-based forest management of this region are thus to: (1) maintain complex structures associated with old-growth forests, and (2) promote the establishment of productive post-harvest stands, while at the same time maintaining harvested volume. We discuss different silvicultural approaches that offer solutions to these challenges, namely the use of (1) partial harvesting to create or maintain complex structures typical of old-growth stands, and (2) site preparation techniques to emulate severe soil burns and create productive post-harvest stands. A similar approach could be applied to any region where the natural disturbance regime creates a landscape where both even-aged stands established after stand-replacing disturbances and irregular old-growth stands created by smaller scale disturbances are significant.

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:   Allometric model of the maximum size–density relationship between stem surface area and stand density
巻頁: J For Res 14 (5): 268-275
題名: 樹幹表面積と林分密度の最多密度曲線のアロメトリックモデル
著者: 井上昭夫
所属: 熊本県立大学環境共生学部
抄録: 樹幹表面積と林分密度の最多密度曲線のアロメトリックモデルを提案し,スギとヒノキの同齢単純林のデータに適用した。モデルを誘導するために,現存量密度を樹幹表面積と比較円柱の側面積との比として定義した。誘導したモデルによると,最多密度曲線の傾きは,平均樹高および現存量密度と樹幹表面積とのアロメトリー関係から推定できる。推定された最多密度曲線の傾きはスギで-1.089,ヒノキで-0.974であった。スギの急な傾きは,ヒノキよりもスギがより多くの資源を樹高成長に配分しているためと考えられた。haあたり樹幹表面積合計の最大値は,スギで1.483 ha/ha,ヒノキで0.949 ha/haと推定された。樹幹表面積合計の最大値の樹種間での違いは,樹高成長と現存量密度の成育空間への詰め込みの性質によって生じていると考えられた。

種類: 原著論文/環境
Title:   Biomass allocation and nitrogen limitation in a Cryptomeria japonica plantation chronosequence
巻頁: J For Res 14 (5): 276-285
題名: スギ人工林の時系列に沿った現存量配分と窒素制限の変化
著者: 舘野隆之輔,福島慶太郎,藤巻玲路,嶋村鉄也,大木正美,新井宏受,大手信人,徳地直子,吉岡崇仁
所属: 鹿児島大学農学部
抄録: 本研究では、スギ人工林の時系列に沿って土壌の純窒素無機化速度、地上部・地下部への現存量配分、窒素利用について明らかにした。現存量蓄積は、約30年生の壮齢林でピークとなり、やがて頭打ちになる傾向が見られた。しかし土壌の純窒素無機化速度は30年生で最も低く、88年生の老齢林にかけて再び上昇する傾向が見られた。このことは、樹木の要求量と土壌の供給量のピークが必ずしも一致しないことを示唆する。一方で樹木の窒素ステータスの指標である生葉の窒素濃度は、若齢林から老齢林にかけて減少する傾向が見られ、老齢林では窒素吸収の何らかの制限が起こっている可能性が示唆された。しかし細根バイオマスは、壮齢林や老齢林では若齢林に比べて低く、壮齢林や老齢林での窒素制限に対して地下部への配分を増加させて対応していないことが示唆された。

種類: 原著論文/環境
Title:   Atmospheric carbon dioxide concentration within a narrow valley in a forested catchment area
巻頁: J For Res 14 (5): 286-295
題名: 山地小流域谷内に形成される二酸化炭素濃度プロファイル
著者: 髙木正博
所属: 宮崎大学農学部
抄録: 山地複雑地形の谷部における二酸化炭素の貯留現象を明らかにするために,谷横断面における二酸化炭素と気温の二次元分布を0.8 haの小流域源頭部において夏季の20日間にわたり測定した。二酸化炭素濃度は,弱風に近い夜間を除いて,通常は谷内で鉛直方向に層化しており谷側壁上では谷中央部に比べて高濃度であった。日中の谷底での高濃度の二酸化炭素濃度は,鉛直方向の空気の移動を抑制する樹冠下での気温の逆転と,不十分な日射による制限された光合成による少ない二酸化炭素消費を伴っていた。夜間の谷内の二酸化炭素濃度の分布は気温の逆転の程度に依存しており,この逆転の程度は谷上部の風速と関係していた。風の強い夜間では谷内より相対的に暖かい空気が谷上部を覆うことにより気温の逆転層が形成され,高濃度の二酸化炭素は谷下部に留められていた。一方,弱風に近い夜間では樹冠の放射冷却による谷内上方の気温低下と谷内の均一な二酸化炭素濃度が観測された。谷内の二酸化炭素貯留変化量は平坦な森林で計算されているより大きな値が算出された。特に,鉛直方向の濃度差の小さい谷側壁上を含まずに谷中央部のみを対象に計算された二酸化炭素貯留変化量は谷全体を対象に計算された値より大きなものになった。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Effects of sika deer (Cervus nippon) and dwarf bamboo (Sasamorpha borealis) on seedling emergence and survival in cool-temperate mixed forests in the Kyushu Mountains
巻頁: J For Res 14 (5): 296-301
題名: 九州山地の冷温帯混交林における実生の発生と生存にニホンジカとスズタケが及ぼす影響
著者: 村田郁恵,猿木重文,久保田勝義,井上幸子,田代直明,榎木勉,内海泰弘,井上晋
所属: 九州大学大学院生物資源環境科学府
抄録: シカの生息密度が低く、林床をスズタケが覆っている森林(ササ区)と、シカの生息密度が高く、スズタケがほとんどみられない森林(ササ無区)とで、シカが実生の発生と生存に及ぼす影響を比較した。ササ無区では、ササ区より多くの実生が発生し、生存率も高かった。ササ無区では開空度が大きく、林床有機物は堆積量が少なく乾燥していた。また、日平均地温が高く、地温変動も大きかった。これらの環境条件は、シカ防護策の内外で違いはなかった。シカの摂食によるササの消失は、発生と生存を高めるという間接効果をもたらしていた。しかし、防護策内外での比較からは、シカは明らかに実生の発生と生存を阻害していた。この相反する2つの結果は,実生の発生および生存に与えるササの負の影響がシカの摂食による影響と比して非常に大きいことによると考えられた。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Individual growing conditions that affect diameter increment of tree saplings after selection harvesting in a mixed forest in northern Japan
巻頁: J For Res 14 (5): 302-310
題名: 北海道北部の針広混交林における択伐施業下での小径木の直径成長に影響を与える要因
著者: 宮久史,吉田俊也,野口麻穂子,中村太士
所属: 北海道大学大学院農学研究科
抄録: 北海道北部の針広混交林における主要な構成樹種である、トドマツ(Abies sachalinensis)、イタヤカエデ(Acer mono)、ミズナラ(Quercus crispula)、ダケカンバ(Betula ermanii)を対象に、択伐施業下における個体の直径成長率の時間的な変化のパターンを明らかにした。また、直径成長率に影響を与える要因として、周囲での伐採量、樹木量、自身の個体サイズ、過去の成長履歴の影響を解析した。胸高直径が12.5cmに達するまでに要した年数は、トドマツが平均65年と最も長かったのに対して、最短のダケカンバでは40年であった。周囲で伐採が行われた後、トドマツとダケカンバの直径成長率は年とともに増加する傾向が見られたが、ミズナラでは伐採後4-6年後がピークとなっていた。一般化線形混合モデル(GLMM)の結果は、直径成長率を増加させる要因が、樹種間で異なることを明瞭に示していた。ミズナラとダケカンバの場合、周囲での伐採量がもっとも強い正の影響を与えていた。一方、トドマツとイタヤカエデに対しては、自身の個体サイズの負の影響がより強かった。トドマツの直径成長率における周囲での伐採の正の効果は、相対的に大きなサイズの個体や、周囲に残存された樹木量が多い個体の場合に顕著であった。また、個体ごとの直径成長パターンから推定した過去の被圧期間の長さの影響は、トドマツに対して負の効果を示していた。トドマツやイタヤカエデなど耐陰性の高い樹種に対して、周囲での伐採による直径成長率の増加は特定の条件下のみで認められることが示唆された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Individual-scale responses of five dominant tree species to single-tree selection harvesting in a mixed forest in Hokkaido, northern Japan
巻頁: J For Res 14 (5): 311-320
題名: 北海道の針広混交林における単木択伐に対する優占種5樹種の個体スケールの反応
著者: 野口麻穂子,吉田俊也
所属: 森林総合研究所四国支所
抄録: 北海道の針広混交林において、単木択伐に対する優占種5樹種(トドマツ、イタヤカエデ、シナノキ、ミズナラ、ダケカンバ)の個体スケールの反応を明らかにした。6.7haの調査区で胸高直径12.5cm以上の樹木を対象に行なわれた20年間の調査データをもとに、近隣での択伐が樹木の更新と成長(直径階の推移)および死亡に及ぼす影響を解析した。択伐の影響は樹木のサイズ間、樹種間で大きく異なっていた。択伐はイタヤカエデとダケカンバの更新を増加させていた。また、ミズナラの更新は、伐採前の周囲の林冠木の胸高断面積合計(BA)から負の影響を受けていたが、この影響は択伐により緩和された。反対に、トドマツの更新は伐採前の周囲の林冠木のBAから正の影響を受けており、択伐はこの影響を打ち消すことによってトドマツの更新を抑制していた。トドマツとミズナラの成長は、伐採前の周囲の林冠木のBAが大きくなるほど低下したが、択伐はこれらの樹種の小径木の成長を改善した。また、近隣での択伐の強度が強くなるに従い、トドマツでは小径木の死亡が減少し、大径木の死亡が増加した。これらの結果から、この地域の混交林において、局所的な択伐強度や択伐の空間パターン、伐採前の林分構造の違いが、択伐に対する林分スケールの反応に影響することが示唆された。

前のページへ戻る