Journal of Forest Research Vol 20, No 1 (2015年2月)


種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Comparing aboveground structure and aboveground carbon storage of an age series of moso bamboo forests subjected to different management strategies
巻頁: J For Res 20 (1): 1-8
題名: 管理指針・構造・年齢の異なるモウソウチク林の地上部炭素貯蔵量
著者: Tian-Ming Yen
所属: Department of Forestrym National Chung-Hsing University
抄録: The purpose of this study was to compare aboveground carbon storage capacities of different management strategies of an age series of moso bamboo (Phyllostachys pubescens) forests. The study site was located in the lower mountain area of central Taiwan. Stand structure and aboveground carbon storage were compared between moso bamboo stands that were subjected to two management strategies, intensive management (IM) and extensive management (EM). The Chi squared (χ 2) test was utilized to examine the frequency distribution of culms among the age classes in each stand. All the IM stands passed the χ 2 test, while only 41.7 % of the EM stands passed the test. This result suggests that the IM stands contain culms that are homogeneously distributed within an age series, while more than one-half of the EM stands did not follow this distribution. In addition, the relative root mean square errors (RRMSEs) of carbon storage in the age classes were calculated as an indicator of the variations of carbon storage in the age classes of each stand. A non-parametric test (Wilcoxon Scores) was utilized to compare the RRMSEs of the IM and EM stands; the results indicated that the RRMSEs were significantly different between these two management strategies. The IE stands displayed a smaller RRMSE than the EM stands, suggesting that the IE stands had stable carbon storage in the age series.

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Height-diameter models with stochastic differential equations and mixed-effects parameters
巻頁: J For Res 20 (1): 9-17
題名: 確率微分方程式に基づく樹高-直径の混合効果モデル
著者: Petras Rupšys
所属: Aleksandras Stulginskis University
抄録: Height-diameter modeling is most often performed using non-linear regression models based on ordinary differential equations. In this study, new models of tree height dynamics involving a stochastic differential equation and mixed-effects parameters are examined. We use a stochastic differential equation to describe the dynamics of the height of an individual tree. The first model is defined by a Gompertz shape stochastic differential equation. The second Gompertz shape stochastic differential equation model with a threshold parameter can be considered an extension of the three-parameter stochastic Gompertz process through the addition of a fourth parameter. The parameters are estimated through discrete sampling of diameter and height and through the maximum likelihood procedure. We use data from tropical Atlantic moist forest trees to validate our modeling technique. The results indicate that our models are able to capture tree height behavior quite accurately. All the results are implemented in the MAPLE symbolic algebra system.

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Environmental factors affecting technical efficiency in Norwegian steep terrain logging crews: a stochastic frontier analysis
巻頁: J For Res 20 (1): 18-23
題名: ノルウェーの急峻な地形での伐採作業において技術的効率性に影響を及ぼす環境要因-確率的フロンティア分析を用いた解析-
著者: Giovanna Ottaviani Aalmo,Sjur Baardsen
所属: Norwegian Forest and Landscape Institute
抄録: This study presents the analysis of panel data on steep terrain logging productivity in Norway. Given the specification of a Cobb Douglas stochastic frontier production function in which the technical inefficiency is a function of six different environmental factors, it was found that only one (terrain hindrance) decreased the efficiency significantly. The estimated efficiencies for the sample crews ranged from 0.43 to 0.99. Because of the nature of the inefficiency factors, one way to improve the efficiency could be to train the crews for working on steep slopes. This would also improve the safety when exposing workers to these types of environmental hazards.

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Effects of stone-walled terracing and historical forest disturbances on revegetation processes after the abandonment of mountain slope uses on the Yura Peninsula, southwestern Japan
巻頁: J For Res 20 (1): 24-34
題名: 西南日本の由良半島において、段畑の石垣化および森林への撹乱履歴が利用停止後の山地斜面の植生再生過程に与えてきた影響
著者: 徳岡良則,橋越清一
所属: 農業環境技術研究所 生物多様性研究領域
抄録: 多くの農村景観では、伝統的な土地利用の放棄が生態系管理上の懸念となっている。本研究では、約半世紀前まで段畑耕作や薪炭材採取のために利用されていた愛媛県由良半島の山地斜面を対象に、その利用停止後の植生回復過程を調査した。種組成に関する多変量解析結果は、多くの鳥散布型の常緑樹は山地斜面に広く生育する一方、石垣化された段畑の跡地には、石垣の構造に適応したシダ植物(例、オニヤブソテツ、イシカグマ、トラノオシダ)や耕地雑草が、石垣化されていない段畑の跡地や二次林に比べ有意に多く出現することを示した。高木層の種組成は放棄地周辺の森林面積の影響を受けていた。さらには、半島西南部の歴史的な撹乱の少なかった森林は地域内で稀少なシタキソウ、アオギリ、モクタチバナなどの分布の中心となっており、またこれらの種は周辺の放棄段畑にも定着していた。これらの結果は、段畑の石垣化や歴史的な森林への撹乱といった土地利用履歴が、暖温帯の沿岸域で放棄された山地斜面の植生再生過程に影響することを示唆している。

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Forest stewardship council certificate for a group of planters in Vietnam: SWOT analysis and implications
巻頁: J For Res 20 (1): 35-42
題名: ベトナムにおけるグループ森林管理認証-SWOT分析による知見-
著者: Hai Thi Nguyen Hoang,星野敏,橋本禅
所属: 京都大学大学院地球環境学舎
抄録: ベトナムでは,アカシアのプランテーションを経営する小規模農家がグループをつくりFSCのグループ森林管理認証(FSC認証)を受けている。FSC認証は,経済,環境,社会面の便益を通じて農家の生計を改善することを目的としているが,小規模農家の間には認証を受けられることで得られる利益や認証を維持する事に対する懸念が生じている。本論文ではグループ森林管理認証を受けた農家グループの観点から,FSC認証の便益や課題を明らかにした。FSC認証は農家らに対して,木材の販売価格の向上や取引相手の拡大の機会を提供するが,他方で認証取得費用や書類作成や販売手続の煩雑化という課題ももたらしている。小規模なプランテーション経営や森林管理に対する専門知識の不足は,FSC認証の取得をさらに難しくさせている。このため,FSC認証を取得するために,WWFのような外部機関からの資金援助への依存が大きくならざるを得ない。しかしながら,そのような外部機関による資金援助も永続的なものではなく,小規模経営者にとってFSC認証により得られる便益は極めて不確実なものとなっている。本研究ではこのような問題に対し,農家グループの責任を拡大する,農家の認識や対処能力の向上を図る,FSC認証をサポートする新たな外部機関や木材加工会社を探す,よりマクロなレベルでは国レベルのFSC認証機関を設置することで,認証の取得費用の提言を図る,などの改善策を提案した。

種類: 原著論文/環境
Title:  Changes in the sapwood area of Japanese cedar and cypress plantations after thinning
巻頁: J For Res 20 (1): 43-51
題名: スギ人工林,ヒノキ人工林における辺材面積の間伐後の変化
著者: 小松光,久米朋宣
所属: 京都大学白眉センター東京大学大学院農学生命科学研究科
抄録: 林分スケールの辺材面積(A)は,主林木の蒸散(E)を決定する重要な要素である.本論は,スギ人工林2林分,ヒノキ人工林2林分において,間伐後4から6年のAの変化を調べた.なお,各林分は3ないし4の間伐区(互いに間伐強度が異なる)と1の対照区からなる.著者らは,試験期間中を通じて,間伐区と対照区の辺材面積の差(dA)が存在するかどうかに注目した.樹木直径は,強度間伐により立木密度(N)が小さくなった区画で,より顕著に増加していた.しかし,どの区画においても,dAが試験期間中にゼロになることはなかった.つまり,樹木直径の顕著な増加は,間伐による小さいNを補償し,間伐区と対照区のAの差を解消するほどは大きくなかった.この結果は,次のことを示唆する.すなわち,間伐された人工林では,間伐されていない人工林より蒸散量が低いが,この蒸散量の差は,間伐後の一定期間(本研究の結果によると10年以上)継続する.したがって,間伐は,主林木の水消費を低下させるための有効な方法である.

種類: 原著論文/環境
Title:  Does summer warming reduce black spruce productivity in interior Alaska?
巻頁: J For Res 20 (1): 52-59
題名: 夏季の昇温はクロトウヒの生産性を高めるか?
著者: 植山雅仁,工藤慎也,岩間千絵,永野博彦,小林秀樹,原薗芳信,吉川謙二
所属: 大阪府立大学・生命環境科学研究科
抄録: 高緯度における温暖化は、北方林の生産力に大きな影響を与えている。本研究では、北米大陸の主要生態系であるクロトウヒ林について夏季の気温に対する生産量の応答性が変化してきたことを、内陸アラスカの11サイトで採取された年輪を用いて明らかにした。年輪成長幅は、夏季の気温と負の相関を示し、同時期の降水量と正の相関を示した。気温との負の相関の強さは1980年代まで増加傾向にあり、夏季の昇温に伴う乾燥化が生産性を制限していたことが示唆された。一方、1990年代以降においてはこの負の相関は不明確になり、気温に対して正の相関をとるようになった。このことは、高緯度の森林の生産性や炭素固定量が将来の温暖化に対して増加する可能性を示唆している。将来の温暖化環境におけるこの新たな応答の持続期間や強さは、内陸アラスカの森林生産性の将来的な変化やそれに伴う炭素循環フィードバックに影響を与えるかもしれない。

種類: 原著論文/環境
Title:  Diversity, resource utilization, and phenology of fruiting bodies of litter-decomposing macrofungi in subtropical, temperate, and subalpine forests
巻頁: J For Res 20 (1): 60-68
題名: 亜熱帯林・温帯林・亜高山帯林におけるリター分解性大型菌類の子実体の多様性・資源利用・季節性
著者: 大園享司
所属: 京都大学生態学研究センター
抄録: リター分解性大型菌類の多様性、栄養・繁殖特性、季節性を腐植堆積様式間、気候帯間で比較した。本邦亜熱帯林、冷温帯林、亜高山帯林の林床に発生した子実体の、生育期間を通じた野外観察により、35種、32種、18種の菌類をそれぞれ記録した。種数はモダー型土壌よりムル型土壌で、冷涼な気候帯より温暖な気候帯で、それぞれ多かった。全体で10科の菌類が認められたが、いずれのサイトでもクヌギタケ科の種が優占した。温暖な気候帯のサイトほど、有機物層の表層から子実体が発生する傾向がみられた。子実体の放射性炭素同位体比を測定した結果からも、温暖な気候帯ほど、菌類がリターフォールからの経過時間が短い、林床の表層に集積する炭素を利用する傾向にあることが示唆された。子実体発生の季節変化パターンは、サイト間で類似していた。生育期間中に初夏と秋の2回の発生ピークが認められ、それらは降水が多く、気温がそれぞれ上昇および下降する時期に一致した。子実体の発生期間は温暖な気候帯ほど長かった。

種類: 原著論文/環境
Title:  Hyphal length in the forest floor and soil of subtropical, temperate, and subalpine forests
巻頁: J For Res 20 (1): 69-76
題名: 亜熱帯林・温帯林・亜高山帯林の林床と土壌における菌糸長
著者: 大園享司
所属: 京都大学生態学研究センター
抄録: 菌類はさまざまな気候帯の陸域生態系において、土壌生物相の主要な構成要素である。しかしそのアバンダンスに及ぼす土壌層位と季節の影響を、異なる腐植堆積様式間、気候帯間で比較した研究例はほとんどない。本研究では、本邦亜熱帯林、冷温帯林、亜高山帯林の林床と土壌における菌糸量を、寒天薄膜法を用いて調べた。これら3気候帯の森林にみられるムル型およびモダー型土壌の異なる層位において、菌糸長の季節変動を記述した。全菌糸長は一般的に、亜熱帯林・亜高山帯林よりも冷温帯林で高く、また土壌深にしたがって減少した。全菌糸長の季節変動は、ムル型土壌の発達する亜熱帯林と冷温帯林の斜面下部で認められた。メラニン化した暗色菌糸長は、モダー型土壌の発達する冷温帯林の斜面上部で他のサイトよりも高く、またL層・A層よりもF層で高かった。クランプコネクションを有する担子菌類の菌糸長は、最大で全菌糸長の19%を占め、すべてのサイトで土壌深にしたがって減少した。季節変化に対する菌糸長の感受性は、モダー型土壌よりもムル型土壌で高いことが示唆された。

種類: 原著論文/環境
Title:  Effects of litter type, origin of isolate, and temperature on decomposition of leaf litter by macrofungi
巻頁: J For Res 20 (1): 77-84
題名: 落葉の種類・菌株の由来・培養温度が大型菌類による分解に及ぼす影響
著者: 大園享司
所属: 京都大学生態学研究センター
抄録: 本邦亜熱帯林、冷温帯林、亜高山帯林で採取したリター分解性大型菌類を用いて、リタータイプと培養温度が菌糸生長およびリター分解に及ぼす影響を比較した。まず、3気候帯に由来する6菌株を、のべ39リタータイプに接種して分解力を評価したところ、菌類が引き起こしたリターの重量減少率(初期重量に対する%)と、リターのクラソンリグニン(酸不溶性残渣)の含有率とのあいだに有意な負の相関関係が、また窒素濃度とのあいだに有意な正の相関関係がみられた。次に、3気候帯で採取した3種の広葉樹落葉のそれぞれに、各気候帯でもっとも優占するクヌギタケ科菌類3種を接種し、それらを5℃から35℃までの7段階の温度で培養する交差接種試験を行った。菌株、リタータイプ、培養温度、およびそれらの交互作用はいずれも落葉の重量減少率(初期重量に対する%)に有意に影響した。落葉の重量減少率は20℃ないし25℃で最大となり、菌糸生長の最適温度とおおむね一致した。冷涼な気候帯に由来する菌株ほど高温への感受性が高かった。亜熱帯林の菌株では、リタータイプと培養温度がクラソンリグニンの重量減少に影響を及ぼしたが、リグニンの選択的分解の程度は温度の影響を受けなかった。

種類: 原著論文/環境
Title:  Variation in sap flux density and its effect on stand transpiration estimates of Korean pine stands
巻頁: J For Res 20 (1): 85-93
題名: チョウセンゴヨウ林における樹液流フラックスの変動が林分蒸散量推定に与える影響
著者: Minkyu Moon,Taekyu Kim,Juhan Park,Sungsik Cho,Daun Ryu,Hyun Seok Kim
所属: Seoul National University
抄録: Accurate estimates of stand transpiration (E) require the consideration of three types of variation in sap flux density (J S): radial, azimuthal, and tree-to-tree variation. In this study, the J S variation of 50-year-old Korean pine (Pinus koraiensis) trees and its effect on E estimates was evaluated using Granier-type heat dissipation sensors. The value of J S decreased exponentially with the radial depth from cambium to pith, and the coefficient of variation (CV) for radial variation was 124.3 %. Regarding the azimuthal variation, the value of J S differed significantly among aspects and the average CV was 23.6 %. The average CV for tree-to-tree variation was 34.0 %, and the daily CV increased with increasing vapor pressure deficit (D). The error in the E estimates caused by ignoring the radial variation was the largest (109.2 %), followed by those caused by ignoring the tree-to-tree and azimuthal variations (24.3 and 12.6 %, respectively). While the contribution of the azimuthal variation to the E estimates was minimal in comparison to the other variations, the azimuthal variation among aspects was significant, and the usage of the north aspect measurement did not generate substantial error in the E estimates (0.6 %). Our results suggest that the variation, particularly the species- and site-specific radial variation, must be considered when accurately calculating E estimates.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Estimating sound seedfall density of Fagus crenata using a visual survey
巻頁: J For Res 20 (1): 94-103
題名: 目視調査によるブナの健全種子落下密度の推定
著者: 中島春樹
所属: 富山県農林水産総合技術センター森林研究所
抄録: 森林樹木の示す結実の年変動は、天然更新や野生動物の行動に影響するため、種子落下前に結実量を推定する必要性は大きい。目視調査による結実状況評価は容易に実施できるが、健全種子と非健全種子を区分することができないうえ、実生発生密度や野生動物に利用可能な食物量と密接に関係する健全種子の落下密度を測定するものではない。本研究では、目視調査からブナの健全種子落下密度を推定するモデルを構築することを目的とした。4林分で7年間にわたり、個体レベルの着果度を目視により5段階で評価するとともに、これらの目視評価した個体の種子落下密度をシードトラップで計測した。個体レベルにおいて、着果度は健全種子落下密度と高い相関があり、5段階の着果度の間で健全種子落下密度には差があった。個体レベルの健全種子落下密度を推定する一般化線形混合モデルを構築したところ、着果度のみを説明変数として用いるよりも、着果度別個体数割合から算出した林分着果指数の前年と当年の値を説明変数に加えた方が説明力の高いモデルとなった。これは、林分レベルの種子生産量が、受粉効率と種子食昆虫による虫害率の変動を通じて、健全種子率に影響したためだと考えられた。この推定手法は迅速かつ容易に実施でき、精度も高いので、森林管理や野生動物の保護管理に有用だろう。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  The effect of successive years of defoliation by the larch sawfly (Pristiphora erichsonii (Hartig)) on the foliage properties of the Japanese larch (Larix kaempferi (Lamb.) Carr.), with particular reference to the CN balance hypothesis
巻頁: J For Res 20 (1): 104-113
題名: 特にCNバランス仮説に関連して、カラマツハラアカハバチ(Pristiphora erichsonii (Hartig))の食害による連年の失葉がニホンカラマツ(Larix kaempferi (Lamb.) Carr.)針葉の性質に及ぼす影響
著者: パニサラ・ピンカンタヨン,久保守,寺田珠美,藤井正典,鴨田重裕,村本健一郎,鎌田直人
所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科
抄録: CNバランス仮説(CNBH)は誘導防御のメカニズムを説明する仮説である。カラマツハラアカハバチ(Pristiphora erichsonii)の食害によるニホンカラマツ(Larix kaempferi)の応答を、CNBHの観点から検討した。この研究は、北海道中央部における7箇所のニホンカラマツ人工林で行った。2009年から2012年の食害前後に撮影された全天空写真から食害度を推定した。葉の化学的・物理的性質を2010から2012年に調べた。2009年には2箇所、2010年と2011年には7箇所すべてで強度の食害が認められた。葉内窒素の減少、フェノール類・タンニン・CN比の増加が、強度の食害を受けた翌年に認められた。特に2009年の食害度が有意に影響していたが、2010年と2011年の食害度の影響は比較的弱かった。これらの結果は、過去の食害履歴が2年後以降も加算的に葉の性質に影響を与えたことを示す。2009年の食害以外にも、フェノール類、糖類、およびCN比については、場所(植林地)の影響が認められた。2009年に強い食害を受けた2箇所では、他のサイトにくらべるとCN比の増加が著しかった。フェノール類および糖類は、CN比とパラレルに増加しなかったことから、別の制限が働いていたことが示唆された。これらの結果は、ニホンカラマツ針葉の誘導防御反応において、部分的には窒素不足によって制限されていたが、二次代謝産物の合成には場所依存的な外的要因の影響が働いていたことを示している。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Improving the germination of somatic embryos of Picea morrisonicola Hayata: effects of cold storage and partial drying
巻頁: J For Res 20 (1): 114-124
題名: タイワントウヒ(Picea morrisonicola Hayata)不定胚の発芽における冷蔵と乾燥処理の影響
著者: Yue Ken Liao,I-Ping Juan
所属: Department of Forestry and Natural Resources, National Chiayi University
抄録: Mature somatic embryos (SEs) of Taiwan spruce (Picea morrisonicola Hay.) were harvested from embryogenic tissues incubated on a filter paper laid on an abscisic acid (ABA)-containing medium. The effects of cold storage and partial drying on embryo germination and on reduction of embryo ABA content were determined. Percentage germination was low (<10 %) and hyperhydricity was high (>86.8 %) for mature SEs (control). Both cold storage and partial drying significantly reduced this physiological abnormality. Germination increased to 49.1 % for SEs that received cold-storage treatment, and their ABA content was reduced to a trace amount (2.4 ± 1.1 µg/g dw). Germination increased to 58.1 % for SEs partially dried for 7 days, and the ABA content was relatively high (62.8 ± 21.7 µg/g dw). Hyperhydricity-induced failure to germinate among SEs containing low levels of ABA is discussed. Histological study revealed vigorous differentiation in the root apical meristem of SE during partial drying. This advanced development also accounted for the enhanced germination performance compared with other treatments. A combination treatment (partial drying and cold storage) increased percentage germination even further (69.9 %) and more effectively reduced hyperhydricity (18.7 %) during SE germination.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Chronosequential changes in species richness of forest-edge-dwelling butterflies during forest restoration after swidden cultivation in a humid tropical rainforest region in Borneo
巻頁: J For Res 20 (1): 125-134
題名: ボルネオの湿潤熱帯雨林地域における焼畑耕作後の経過年数にともなう林縁生息性チョウ類の種多様性の変化
著者: 市岡孝朗,高野(竹中)宏平,岸本圭子,土屋泰三,大島康宏,勝山礼一朗,矢後勝也,矢田脩,中川弥智子,中静透
所属: 京都大学大学院人間・環境学研究科
抄録: 昆虫類の多様性に対する森林破壊の影響については数多くの研究がなされているのに対し、森林の回復にともなう昆虫の多様性の回復に焦点をあてた研究はほとんどなされてこなかった。本研究では、ボルネオの湿潤熱帯雨林地域において、焼畑耕作を停止した後の森林回復の進行にともなうチョウ類の種多様性の変化あるいは回復過程を調査した。焼畑停止後の経過年数が3年未満、5?13年、20-60年と3段階に異なる焼畑休閑林と、孤立した自然林、大面積を保護された自然林という5種類の森林のなかに21箇所の林分を設置し、それらの各林分の林縁部でチョウ類の野外調査をおこなった。その結果、132種のチョウ類に関する在・不在のデータが得られた。累積観察種数は、3つのタイプの休閑林よりも2つのタイプの自然林において有意に高く、もっとも若い3年未満の休閑林よりも残りの老齢2タイプの休閑林において有意に高かったが、それらの老齢2タイプの間では有意な差が認められなかった。それらの老齢休閑林における累積種数は2タイプの自然林のいずれにおける種数の半分よりも低かった。もっとも老齢の休閑林と、孤立自然林における累積種数は、大面積自然林からの距離に応じて減少し、休閑林で観察されたチョウ類の大部分は自然林においても観察された。これらの結果より、焼畑放棄後の森林回復過程の最初の20年間において林縁生息性チョウ類の種多様性は回復に向かうものの回復速度はその後低下すること、周辺にある大面積の自然林からの距離が離れるほど回復速度が低下することが示唆された。また、森林の断片化もチョウ類の多様性を低下させることも示唆された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Regaining habitats from invasive weeds by planting limited-recruitment endemic trees on an oceanic island: successes and failures 11 years later
巻頁: J For Res 20 (1): 135-142
題名: 海洋島の更新困難な固有樹種植栽による外来雑草類の排除:11年間の成功と失敗
著者: 安部哲人,安井隆弥,横谷みどり,マーセル・クナップ
所属: 森林総合研究所九州支所
抄録: 生息地破壊による生物多様性の劣化はグローバルな課題である.特に海洋島は面積が狭いため,外来植物を排除して在来種からなる植生を回 復することが重要である.固有樹種の植栽は有力な手法であるが,外来種の非意図的侵入を防ぐためには島内で完結する復元プロセスが望まれる. この復元手法を確立するため,小笠原固有の2樹種の苗を父島で育苗して島内の荒廃地に植栽し,植生変化を追跡調査した.植栽後11年間でシマホルトノキは約半数がギャップ区で生き残ったが,オガサワラグワは全て枯死した.シマホルトノキの樹高は期間内に4.7±2.4mまで成長していた.また,形成された林冠により下層は暗くなり,それまで優占していた外来雑草は大きく衰退した.これらの結果からシマホルトノキは小笠原の荒廃地で外来雑草を抑制し,森林を復元させるために適した樹種であることが示唆された.一方で,形成された森林は多様性が低いという課題が残った.以上を踏まえ,今回用いた樹種以外の植栽候補など多様性回復のために有効な復元手法に関しても議論した.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  The occurrence of bark beetles on cut Norway spruce branches left in managed stands relative to the foliage and bark area of the branch
巻頁: J For Res 20 (1): 143-150
題名: 林内放置したオウシュウトウヒの伐採枝における樹皮下穿孔性キクイムシの発生-枝の葉量および樹皮面積との関係-
著者: Magdalena Kacprzyk,Bartłomiej Bednarz
所属: University of Agriculture in Kraków
抄録: This study addresses the relationships between the foliage and bark area of Norway spruce (Picea abies) branches left in the forest after managing large timber: the densities of infestation by Pityogenes chalcographus, Pityophthorus pityographus and Dryocoetes autographus; and the reproductive efficiency of P. chalcographus. Based on the models developed in this study, a positive correlation was found between the foliage area of spruce branches and the densities infested by P. chalcographus and D. autographus, though a higher negative correlation was found in relation to the size of the branch bark area (BA) and the infestation densities. A negative correlation for the branch BA was also found on P. pityographus. This result shows that the desiccation of branches affects the infestation densities of bark beetles. In contrast, the size of the branch BA was positively correlated with the reproductive efficiency of P. chalcographus, with higher reproductive efficiency on the branches from the outer layer of the pile than on disorderly scattered branches on the ground.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Trap distance affects the efficiency and robustness in monitoring the abundance and composition of forest-floor rodents
巻頁: J For Res 20 (1): 151-159
題名: トラップ間隔は森林性齧歯類群集のモニタリングの効率と頑強性に影響する
著者: 坂本信介,鈴木智之,越本知大,大久保慶信,江藤毅,鈴木亮
所属: 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター
抄録: 生態系の構造と機能を理解するには多岐に亘る分類群の集約的モニタリングが必要である.このような研究において,植物生態学研究者は動物群集をできるだけ効率よくモニタリングしたいと考える.我々はトラップ間隔と捕獲面積を変えた場合に森林性齧歯類群集のモニタリング効率が変わるかを検討した.地上性,半樹上性の2種に焦点を当て,トラップが雌のなわばり内に1つ以下しか含まれない状況を想定した25m間隔(長距離法)と1つ以上を想定した10m間隔(短距離法)の2つのトラップ間隔でモニタリング効率を比較した.種に関わらず捕獲効率は長距離法で高かった.2013年の調査では,長距離法よりも短距離法で2種の再捕獲率が近い値を示した.2011年の調査では,短距離法での2種の観察密度は長距離法による推定密度と比較的近かった.一方,2013年の短距離法による調査では,2種の観察密度は推定密度よりも小さかった.また,半樹上性種の観察密度は地上だけにトラップを置くと過小評価になる傾向がみられた.これらのことから,小面積で短期間の調査を実施したい場合は,短距離法が密度推定や群集の種構成を効率よく評価でき,一方,広い面積で3日から4日間捕獲を実施できる場合は,長距離法の方が良い密度推定をおこなえる可能性が高い.また,地上と樹上のトラップを併設した方が優れた手法と言える.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Seed dormancy and germination characteristics in relation to the regeneration of Acer pycnanthum, a vulnerable tree species in Japan
巻頁: J For Res 20 (1): 160-166
題名: 希少樹種ハナノキ種子の休眠・発芽特性と更新戦略
著者: 金指あや子,永光輝義,鈴木和次郎
所属: 森林総合研究所北海道支所
抄録: 東海丘陵の小湿地を主な分布地とする希少樹種ハナノキ種子の休眠・発芽特性を調査し、生存戦略上の意義について考察した。ハナノキの種子は受粉後1ヶ月程度で成熟種子となり、晩春に散布されるという特性を持つ。発芽試験の結果、成熟直後の種子は十分な水分、温度条件が提供されても発芽せず、休眠状態にあると考えられた。12週以上の低温湿層処理により休眠は打破された。低い温度条件下で、比較的高い発芽率を示した。また、散布後、夏季の室温条件下においた種子であっても、発芽能力は失われなかった。こうしたハナノキ種子の発芽特性は、種子を休眠させることによって競争を回避し、夏の乾燥・高温条件を耐えて冬を経た翌春には、いち早く発芽、生育させる。これは更新を確実にする戦略と考えられた。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Comparable benefits of land sparing and sharing indicated by bird responses to stand-level plantation intensity in Hokkaido, northern Japan
巻頁: J For Res 20 (1): 167-174
題名: 林分レベルの人工林の集約度に対する鳥類の反応によって示唆された土地の節約と共有戦略の類似の便益―北日本北海道の事例―
著者: 吉井千晶,山浦悠一,曽我昌史,澁谷正人,中村太士
所属: 北海道大学大学院農学研究院
抄録: トドマツ(Abies sachalinensis)とアカエゾマツ(Picea glehnii)の人工林で鳥類の機能群の密度と針葉樹の胸高断面積合計の関係を調査した。これにより、森林景観における土地の節約(土地利用の専門化)と共有(多目的林業)の保全の便益を比較した。ほとんどの鳥類の機能群の密度はどちらの人工林でも人工林の集約度(針葉樹の胸高断面積合計)が減少するにしたがって増加した。多くの場合で、線形モデルが鳥類密度と人工林の集約度の関係をもっともよく記述したが、線形モデルと非線形(二次式)モデルの統計的な支持は類似していた。この結果は、調査した人工林では土地の節約と共有戦略の間で生態学的な便益が潜在的に類似していることを示す。実際の景観では、土地利用の意思決定は生物多様性の保全以外の多様な要因(社会学・物理学的要因など)に基づいて行われる。さらに、個体群密度は環境傾度へ線形に反応しうるとニッチ理論は予測する。本研究のように密度と集約度の関係が線形の場合には、土地の節約と共有戦略は生物多様性の保全に類似の便益をもたらすため、対照的な土地利用戦略は生物多様性の保全と資源生産の共存を促すために柔軟に選択することができる。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Effects of cambial age and flow path-length on vessel characteristics in birch
巻頁: J For Res 20 (1): 175-185
題名: カンバの道管要素に対する形成層年齢と木部長の影響
著者: Xiping Zhao
所属: Henan University of Science and Technology
抄録: The distribution of vessels in broadleaf timber, is directly related to water transport efficiency and safety. Here, I tested the hypothesis that vessel characteristics depend on cambial age (CA) and flow path-length (PL) within the tree rather than solely on CA by measuring vessel hydraulic diameter (VD), vessel frequency (VF), theoretical specific hydraulic conductivity (k s), and theoretical implosion resistance (VIR) in every growth ring of birch (Betula platyphylla Roth.) tree root, trunk, and branch samples. The effects of CA and PL were analyzed using a linear mixed model. Differences in the vessel characteristics are significant between CA, between PL, and between the interaction of CA and PL. VD decreased linearly and VF increased nonlinearly with PL. The PL explained 59.3 and 67.3 % of the longitudinal variation in VD and VF, respectively. k s decreased nonlinearly and VIR increased linearly with PL. The PL explained 25.6 and 43.3 % of the longitudinal variation in k s and VIR, respectively. Radial changes were evident above ground, VD increased, and VF decreased with CA for the first 10-20 years and remained constant thereafter. k s exhibited a logarithmic increase and VIR exhibited logarithmic decrease with CA. Variable radial patterns were observed below ground. The CA explained 30.9-98.8 %, 23.7-96.9 %, 42.9-96.8 %, and 50.9-98.5 % of the radial variation in VD, VF, k s, and VIR, respectively. The results suggest that vessel characteristic changes are determined by CA and PL. While growing, trees adjust their vessels to maximize water transport efficiency and ensure mechanical safety.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Construction of a core collection and evaluation of genetic resources for Cryptomeria japonica (Japanese cedar)
巻頁: J For Res 20 (1): 186-196
題名: スギにおけるコアコレクションの整備とその評価
著者: 宮本尚子,小野雅子,渡辺敦史
所属: 森林総合研究所林木育種センター
抄録: 遺伝資源の取扱を容易にするためには、適切に評価された中核となるコレクション(コアコレクション)の整備が必要である。そこで、日本における最も重要な林業樹種の1つであるスギについて、これまで収集された3,203スギ精英樹を対象にコアコレクションを整備した。まず、DNAマーカーの一種であるSSRマーカーによる遺伝子型情報に基づいて遺伝的に重複するスギ精英樹を除外した。 また、精英樹の選抜地情報に基づいて539グループに整理し、保存状況を考慮した上でそれぞれのグループから1精英樹を選抜した。 我々はこの539精英樹から構成されるこの集団をスギのコアコレクションとして定義し、複数の視点からこのコアコレクションのコレクションとしての妥当性を検証した。このコアコレクションには、スギが40%以上分布する2次メッシュ内で半径10km(314km2)あたり平均して1精英樹が選ばれていた。さらにこのコアコレクションは、12環境要因に基づいて評価されたスギ生育地の環境要因のうちの85%以上をカバーしており、スギ精英樹全体とほぼ同等の遺伝的多様性を維持していた。GISやDNAマーカーを利用し、複数の視点に基づく本研究の手法は、遺伝資源として収集されたコレクションの完全性を評価する上で効果的であり、コレクションとして不十分な部分が存在したとしても、その不足分を補うための更なる努力に対して貢献するはずである。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Aboveground and belowground biomass in logged-over tropical rain forests under different soil conditions in Borneo
巻頁: J For Res 20 (1): 197-205
題名: ボルネオの異なる土壌条件に成立する熱帯択伐林の地上部と地下部のバイオマス
著者: 田中憲蔵,古谷良,服部大輔,田中壮太,櫻井克年,二宮生夫,ケンダワン ジョセフ ジャワ
所属: 森林総合研究所植物生態研究領域
抄録: REDD+を行うためには森林のバイオマスの正確な推定が不可欠であるが、東南アジアの択伐残存林での知見は限られている。本研究では、マレーシ アサラワク州のサバルとバライリンギン森林保護区で地上部と地下部のバイオマスを測定した。植生は低地フタバガキ林で、約20年前に択伐を受けて いる。土壌は、サバルが砂質貧栄養土壌、バライリンギンは粘土質土壌であった。各森林でプロットを作成し毎木調査を行った。地上部バイオマス (AGB)は同じ森林で得られたアロメトリー式(Kenzo et al. 2009 JFR)より計算した。地下部バイオマス(BGB)のうち、粗大根はNiiyamaら(2010)に従って計算し、細根(直径 < 5 mm)は1m×1mの方形区の掘り取りで求めた。DBH 10 cm以上の胸高断面積合計と立木密度はサバル(27.0 m2/ha, 720本/ ha)とバライリンギン(28.9 m2/ha, 586本/ha)で大きな差は無かったが、直径10cm以下の小経木の値はサバルの方が約2倍大きかった。AGBはサバル (205 Mg/ha) がバライリンギン(242 Mg/ha)よりやや少なかったが、BGBはサバル(59.6 Mg/ha)がバライリンギン(44.6 Mg/ha)より大きかった。BGBがサバルで大きくなったのは、細根量が粘土質のバライリンギン(5.8 Mg/ha)より砂質土壌のサバル(26.8 Mg/ha)で5倍近く高かったことによる。サバルで細根量が多かったのは貧栄養な砂質土壌で効率よく養分を吸収するためと考えられた。以上より、AGB が同程度の森林でも、土性により、細根量が大きく異なる可能性が高く、正確な森林の炭素蓄積量の推定にはこれらの違いを考慮する必要があると考え られた。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Heritability estimates for wood stiffness and its related near-infrared spectral bands in sugi (Cryptomeria japonica) clones
巻頁: J For Res 20 (1): 206-212
題名: スギ(Cryptomeria japonica)クローンにおける木材剛性とそれに関連する近赤外スペクトルの遺伝率推定
著者: 藤本高明,千代田圭佑,山口和穂,磯田圭哉
所属: 鳥取大学農学部生物資源環境学科
抄録: 林木育種において木材の諸性質を簡易かつ迅速に計測可能な評価手法の開発が求められている。本研究では,まず近赤外分光法を応用し木材の剛性を非破壊的に評価するための検量モデルの作成を試みた。供試材料は,34~36年生のスギ(Cryptomeria japonica)精英樹クローンを異なる3林分より収集した。各クローンより2~3個体を伐倒し,合計129個体を試験に用いた。Partial least-squares (PLS) 回帰分析により丸太の動的ヤング係数(Efr)の検量モデルの作成を試みた結果,妥当な精度(相関係数0.69,予測誤差0.82 GPa)で推定可能なことが明らかとなった。ついで,ヤング係数推定に強く関与する近赤外吸収バンドを各種波長選択アルゴリズムに基づき抽出し,それらの遺伝率推定を試みた。近赤外吸収バンド7320 cm-1 および 6281 cm-1 における吸光度値の遺伝率は,それぞれ0.48および0.57と推定された。本結果はヤング係数の実測値から推定した遺伝率(0.74)よりも低い値であったものの,それに関連する近赤外スペクトルも中庸な遺伝的支配下にあることを示唆している。以上の結果から,近赤外スペクトルは,育種対象形質(本研究の場合ヤング係数)を多数の形質に分離した多変量データとみなした場合,遺伝子解析と関連付けることによって育種に対し有用な情報を提供できると期待される。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Plasticity in resource use by the leafminer moth Phyllocnistis sp. in response to variations in host plant resources over space and time
巻頁: J For Res 20 (1): 213-221
題名: 寄主植物資源の時空間変動に対する潜葉虫 Phyllocnistis sp. の可塑的資源利用
著者: 綾部慈子,箕浦哲明,肘井直樹
所属: 名古屋大学大学院生命農学研究科
抄録: 多化性で固着性(潜葉性)の生活史をもつ植食性昆虫であるホソガ科コハモグリガ亜科の一種 Phyllocnistis sp. が,寄主植物ネズミモチの葉資源量の時空間的変動に対してどのように適応しているかを明らかにした。ネズミモチは常緑性であるため,1年の間に三つのタイプの資源,すなわち,春に展開する当年シュート葉,夏以降展開するラマスシュート葉,当年以前に展開し樹上に残っている古シュート葉をコハモグリガに提供し得る。著者らは,これらの資源量の季節変化とコハモグリガ密度の季節変化を,樹木個体,シュート,葉の三つの空間スケールにおいて調査した。その結果,コハモグリガは,発生初期には当年シュート葉を利用していたが,ラマスシュートが展開するようになると,ラマスシュート葉に利用対象を移し,古シュート葉を全く利用しなくなった。ラマスシュート葉の資源量はコハモグリガ発生数に対して相対的に少なく,コハモグリガのシュート当たり密度と葉当たり密度が増加した。コハモグリガは,当年シュート葉を利用する場合,葉表よりも葉裏をより選択的に利用するのに対し,資源量の少ないラマスシュート葉を利用するようになると,葉裏に加えて葉表も利用するようになった。このように,コハモグリガは,単葉内の微空間スケールでの利用対象を拡大することによって少ないラマスシュートの資源利用を補償するような,可塑的な資源利用様式を示した。

種類: 短報/環境
Title:  Application of a simple model to estimate the footprint of CO2/H2O emission from tall forest
巻頁: J For Res 20 (1): 222-229
題名: 簡便モデルによる成木林からのCO2/H2O放出フットプリントの評価
著者: Jiabing Wu,Jia Zhai,Jayenda Singh
所属: Institute of Applied Ecology, Chinese Academy of Sciences
抄録: The interpretation of eddy covariance flux measurements over inhomogeneous surfaces depends largely on the footprint over which the fluxes are captured. Based on the Schuepp’s footprint model, the Gaussian distribution was introduced to take into account the lateral dispersion, and a simple analytical model was proposed to determine the footprint of eddy flux measurements. The model was validated at an eddy flux site in a tall forest in Changbai Mountain, northeast China, and it was demonstrated to give more detailed descriptions of spatial representativeness for CO2/H2O flux measurements. The proposed model was evaluated against a relatively complicated analytical footprint model, the FSAM model, and the two models showed reasonable consistency. This study pointed out that the usually used 0.01 isopleth of source weight function for outer-limit boundaries of source area integration may cause systematic underestimation of footprint dimensions, and a 0.001 isopleth was suggested for scalar flux footprint analysis.

種類: 短報/環境
Title:  Examining effects of tree roots on shearing resistance in shallow landslides triggered by heavy rainfall in Shobara in 2010
巻頁: J For Res 20 (1): 230-235
題名: 2010年広島県庄原市豪雨で発生した斜面崩壊に対する樹木根系の斜面補強効果に関する力学的検討
著者: 岡田康彦,黒川潮
所属: 森林総合研究所水土保全研究領域
抄録: 梅雨前線に伴う激しい降雨(2010年7月11日~16日)により、広島県庄原市では約9km2の限られた範囲に一千を超える斜面崩壊が発生した。現地調査を実施したところ、壮齢ヒノキ林では斜面が崩壊せず、これを挟むように位置している幼齢ヒノキ林では斜面が崩壊している現場が認められた。また、斜面崩壊の側方崖は壮齢ヒノキ斜面に規制されているような形状を示していた。そこで、これら2つの斜面で幅1m、深さ0.7mのトレンチを掘り、ヒノキ根の位置、太さを計測した外、土試料を採取して密度、透水係数、有効内部摩擦角等の計測を行った。両斜面は、深さ0.35m程度までは黒褐色の土層、そこから0.7m程度までは茶褐色の土層とほぼ同様の構造であることがわかった。また、黒褐色土は茶褐色土に較べて、平均粒径は小さいが間隙比が大きく、透水性が高いという共通の特徴を有していることが確認された。両斜面それぞれで、斜面縦断方向に並ぶ2本の立木の中央にトレンチ(2箇所ずつ)を掘った結果、壮齢林では38本および41本のヒノキ根が、幼齢林では37本および36本のヒノキ根が認められた。このように根の本数には大きな違いがないが、根の平均直径はそれぞれ4.6mmおよび5.0mmならびに2.4mmおよび2.5mmと差が認められ、壮齢林の根は2倍い太さであることがわかった。根の直径と引抜抵抗力の関係を用いて両斜面における根系の斜面補強力を推定したところ、幼齢林では4.7kNに留まったのに対し、壮齢林では約20kNと幼齢林の4倍程度が算出された。斜面崩壊のすべり面が位置した茶褐色土の有効内部摩擦角に関して、幼齢林の33度に対し壮齢林では31度と下回っていた。それにもかかわらず幼齢林でのみ斜面が崩壊したのは、壮齢林では樹木根系による斜面の補強力が大きく崩壊が抑止されたものと推定されることを明らかにした。

種類: 短報/生物-生態
Title:  Effect of pre-logging stand type and harvesting roads on the densities of advanced-regenerated and postharvest-germinated tree seedlings after clear-cutting of hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa) in Yoshinogari, Kyushu, Japan
巻頁: J For Res 20 (1): 236-243
題名: 人工林伐採後の前生樹密度および実生更新に及ぼす森林タイプおよび伐出路の影響
著者: 山川博美,伊藤哲,保坂武宣,吉田茂二郎,中尾登志雄,清水収
所属: 森林総合研究所九州支所
抄録: 伐採後の樹木更新に及ぼす伐採前の森林タイプ(ヒノキ人工林・照葉樹二次林)および伐出路開設の影響を明らかにするため、樹木の更新個体数、土壌物理環境および土壌侵食量を調査した。伐採後の更新個体数は、伐採前の森林タイプおよび伐出路開設の影響を強く受けていた。照葉樹二次林の伐採跡に更新した樹木の多くは、前生樹由来の常緑広葉樹および埋土種子由来の先駆性木本種であった。一方、ヒノキ人工林の伐採跡では前生樹由来の更新個体は少なく、照葉樹二次林の伐採跡と比較して極相林への再生は遅れるものと考えられた。また、伐出路での更新個体は少なく、その影響は伐出路に面する捨土法面にも及んでいた。さらに、更新個体数と土壌環境の関係をみると、先駆性実生の個体数は、リターの被覆率および土壌A層の厚さと正の相関、土壌侵食量と負の相関が認められた。つまり、埋土種子由来である先駆性実生の発生は表層土壌の有無が強く影響していた。また、前生樹や埋土種子から更新した樹木やそれらから供給されるリターは土壌の浸食を防ぐため、前生樹および表層土壌の有無は速やかな森林再生だけでなく、土壌侵食の防止にも重要であると考えられた。

種類: 短報/生物-生態
Title:  Development of 18 microsatellite markers in Pieris japonica, a poisonous tree insulated from the browsing pressure of herbivores, using a next-generation sequencer
巻頁: J For Res 20 (1): 244-247
題名: 次世代シーケンサーを用いたシカ不嗜好樹木アセビ(Pieris japonica)のマイクロサテライトマーカー開発
著者: 黒河内寛之,陳盈光,浅川修一,練春蘭
所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科
抄録: Pieris japonica is a poisonous tree species that is rarely eaten by herbivorous animals, which could allow it to expand its distribution and change ecosystems. Using a next-generation sequencer, 18 microsatellite markers were isolated from P. japonica and characterized. The number of alleles at each locus ranged from 2 to 11. The observed and expected heterozygosities ranged from 0.13 to 1.00 and 0.32 to 0.88, respectively. These markers will be useful for genetic studies of P. japonica, which will be essential for conservation of its surrounding environment.

種類: 短報/生物-生態
Title:  Developing an effective glyphosate application technique to control Bischofia javanica Blume, an invasive alien tree species in the Ogasawara Islands
巻頁: J For Res 20 (1): 248-253
題名: 小笠原諸島の侵略的外来種アカギに対するグリホサートを用いた効果的な駆除手法の開発
著者: 伊藤武治,葉山佳代,酒井敦,田内裕之,奥田史郎,九島宏道,梶本卓也
所属: 森林総合研究所四国支所
抄録: 小笠原諸島の侵略的外来樹種アカギは、その旺盛な繁殖力のため分布域を拡大し、固有樹種の生存を脅かしている。小笠原の森林自然生態系を守るため、アカギの成木を効果的に枯殺する手法が求められている。この目的のため、私たちは除草剤グリホサートの新しい効果的な利用技術を開発した。すなわち、樹幹の根元付近に約5cmの間隔でドリル穴を開け、グリホサート製剤を直接注入した後、コルク栓でふたをして除草剤の流出を防ぐ手法である。この手法はドリル法と命名された。また、除草剤の投与量を決定するために地上部現存量を胸高直径から推定するアロメトリー式を求めた。結果、地上部現存量当たりの薬剤有効成分量で0.1~0.5g kg-1が、アカギをコントロールするのに有効な投与量であることがわかった。次に、ドリル法の実証試験を行い、最小投与量0.1g kg-1でほとんどのアカギが枯死することが明らかとなり、投与量と手法の有効性が示された。試験の結果を受けて農薬登録拡大が申請され、農薬取締法上問題なくアカギの枯殺にグリホサートアンモニウム製剤(ラウンドアップハイロードR)が使用出来るようになった。