講演詳細

S8. 山地森林環境の長期的な変化と，それらが水・土砂・流木の流出に及ぼす影響をふまえた災害予測の可能性[The effect of long-term changes in mountain forest environment on water, sediment and woody debris transport and possibility of disaster prediction based on those knowledges]

日付	2024年3月8日
開始時刻	9:00
会場名	443
講演番号	S8-3
発表題目	神奈川県における太平洋戦争末期の松根油緊急増産 Emergency Production of Pine Root Oil at the End of the Pacific War in Kanagawa Prefecture
所属	東京大学
要旨本文	太平洋戦争末期に航空機燃料生産のために実施された松根油緊急増産は、山林での樹根採取をともなったため、戦後の大水害の激甚化に影響したとする指摘がある。しかし、大戦末期の松根油生産が、山林の地盤にどれほどの影響を与えるものであったのか、これまで実証的な検討はなされてこなかった。本研究は、主に公文書に残る記録をもとに、神奈川県における松根油緊急増産の実態を検討した。神奈川県公文書により、神奈川県における市部および地方事務所単位での生産割当量が明らかになった。神奈川県は、戦前には統計上は松根油の生産は記録されていないが、昭和19年度に1500石あまりの松根油生産が県全体に割り当てられた。この生産を可能にする松根の採取量が算出され、県内の市および地方事務所単位で松根採取量の割り当てが行われた。このうち、津久井地方について、旧村における公文書には自治体ごとの割当量と、それに対する松根の供給状況が記録されていた。津久井地方では、松根採取割当量は、おおむね達成されたと推察された。神奈川県の松根油生産割当量は、戦前における全国生産量の10分の1近いものだった。
著者氏名	○齋藤暖生1 ・ 竹本太郎2
著者所属	1東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林樹芸研究所 ・ 2東京農工大学大学院農学研究院
キーワード	地方公文書, 割当量, 樹根採取, 松脂採取, はげ山
Key word	local public documents, quota allocation, root collecting, pine resin harvesting, devastated mountains