第135回日本森林学会大会 発表検索

講演詳細

論文賞受賞者ポスター

日付 2024年3月8-10日
開始時刻 ポスター発表
会場名 542
講演番号 PP-01
発表題目 Are seeds of trees with higher fruit production dispersed farther by frugivorous mammals?
所属 東京農工大学
要旨本文 動けない植物にとって種子散布は、子孫を残すとともに、移動することが出来る唯一の機会である。種子 散布の中でも動物の採食活動によって種子が散布される被食散布では、種子散布を担う動物種によって、 種子の散布距離や種子の散布量が異なることから、種子散布者としての役割が動物種間で異なることが知 られる。しかし、各動物種の種子の散布距離と種子の散布量を同時に、定量的に評価されたことはなかっ た。この課題を解決するために、本研究は種子散布を担う哺乳類 5 種(ツキノワグマ、ニホンザル、ホンド テン、タヌキ、二ホンアナグマ)を対象に、種子散布距離と散布種子量の両方を、野外調査と室内実験を組 み合わせることで同時に推定し、動物種間で比較するとともに、樹木の個体ごとにおける結実量と長距離 に散布される種子の量との関係を検証した。まず、種子の散布距離は各動物種の野生個体の行動追跡調査 と飼育個体を用いた種子の腸内滞留時間の測定調査の両結果から推定した。また、種子の散布量は野外の カスミザクラ 9 本を対象に、複数年にわたり樹木ごとの結実量、各動物種が果実を食べに木に訪問する回 数を自動撮影カメラで記録するとともに、野外で採取した各動物種の糞に含まれる種子の量と飼育個体を 用いた採食実験から、動物が果実を実らせた木を訪問した際に、訪問 1 回当たりに採食する果実の量を推 定した。その結果、各動物種によって種子の散布距離の分布は異なり、主に長距離の種子散布を担うのはツ キノワグマとホンドテンであった。また、各動物種の木への訪問1回当たりに採食する果実数も種間で大 きく異なり、ツキノワグマが極めて大きいことが判明した。さらに、観察を行った木ごとにみると、結実量 が多い木ほどこれらの哺乳類によって散布されると推定される種子の量は多いだけでなく、長距離に散布 される種子の量も多くなる傾向があり、ツキノワグマの結実木への訪問の有無が強く影響した。本結果よ り、生態系における各動物種の種子散布者としての役割を正しく理解するには、植物の種子散布における 複数の視点(今回は種子の散布量と散布距離)を同時に評価する必要性が示唆された。さらに、木ごとの結 実量の違いにより、果実を食べに訪れる動物相や個体数は異なったことから、果実と種子散布者の相互の 関係を明らかにするためには、結実量の異なる多くの木を、複数年にわたって観察することの必要性も示 唆された。
著者氏名 ○Shinsuke Koike;, Kahoko Tochigi and Koji Yamazaki
著者所属 東京農工大学