企画シンポジウム

企画シンポジウムは、会員がコーディネータとなって企画する、森林科学に関する明瞭で簡潔にまとまったテーマをもったシンポジウムで、本大会ではS1からS7までの7つのシンポジウムを開催します。発表者は公募せず、コーディネータが決定します。

S1. マツヘリカメムシ、マツ類を被食する新規外来種の急速な分布拡大とその生態について
Impact of a new invasive insects, Leptoglossus occidentalis, on Japanese pine trees and its ecological characteristics

S2. 環境変化にともなう樹林地生産性に関わる被食防衛
Forest productivity affected by plant defense capacity under changing environments

S3. 人材育成をみすえた森林科学の専門教育の連携・つながりを考える-行政、教育機関、地域-
Collaboration in Specialized Education on Forest Science for Human Resource Development: Government, Educational institutions and Local communities

S4. 「森林サービス産業」:エビデンス収集から社会実装への転換期に森林科学はどのように貢献できるのか?
“Forest-related Service Industry”: How can forest science contribute to the transition from evidence collection to social implementation?

S5. ポスト2020生物多様性枠組(GBF)における保全と利用の相克と科学政策対話の役割
Conservation and Sustainable Use in Era of Post-2020 Biodiversity Framework: Designing Map, Indicators and Incentives as Boundary Objects

S6. 山地森林環境の長期的な変化と,それらが水・土砂・流木の流出に及ぼす影響をふまえた災害予測の可能性
The effect of long-term changes in mountain forest environment on water, sediment and woody debris transport and possibility of disaster prediction based on those knowledges

S7. 生理部門企画シンポジウム「光エネルギーの上手な利用」とポスター紹介
Tree Physiology Section Symposium “Wise use of photoenergy” and poster introduction

S1. マツヘリカメムシ、マツ類を被食する新規外来種の急速な分布拡大とその生態について
Impact of a new invasive insects, Leptoglossus occidentalis, on Japanese pine trees and its ecological characteristics

コーディネータ:久米篤(九州大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

マツヘリカメムシ(Leptoglossus occidentalis)は1910年に北アメリカにおいて世界で初めて発見され,現在では,様々なマツ類の種子を摂食する世界的な森林害虫の一つとなっています。2008年に日本への侵入が確認され,現在では約30の都道府県で目撃・採取例が確認されていますが,本種の日本における生態や,針葉樹に与えている被害状況などはほとんど明らかになっていません。カメムシ類による樹木被害は古くから認識され,カメムシが吸汁した球果の胚珠は正常に発育せず,発芽率が大幅に低下することが知られています。スギ・ヒノキ採種園におけるチャバネアオカメムシの被害や防除については様々な研究が行われ,対策も進められてきました。しかし,被食された個体であっても,葉や球果などの外観にはほとんど影響が現れないため,見た目からはその被害程度を認識することは困難です。そのため,健全な種子と吸汁され発芽能力を失った種子を識別することは,カメムシの被害状況把握や採種園運営の観点から非常に重要な技術となります。カメムシ類の成長には腸内共生細菌の存在が不可欠であり,チャバネアオカメムシの日本野外集団では,環境細菌から必須共生細菌への進化が現在進行中であることが推定されています。また,腸内共生細菌は,ホストであるカメムシの農薬耐性にも大きく影響することが判明しています。そこで,本シンポジウムでは,マツヘリカメムシの野外生態と森林害虫としての影響について,その野外生態から飼育,共生細菌,防除対策まで,幅広い角度から議論します。予定している演題は以下の通りです。

  • マツヘリカメムシがクロマツ種子生産に及ぼす潜在的な影響
  • カメムシ類が針葉樹類の種子生産に及ぼしている影響
  • 熊本県九州育種場におけるマツヘリカメムシの個体群動態
  • マツヘリカメムシと腸内細菌の共生関係
  • マツヘリカメムシの採餌動態 
  • マツヘリカメムシの春の行動様式

S2. 環境変化にともなう樹林地生産性に関わる被食防衛
Forest productivity affected by plant defense capacity under changing environments

コーディネータ:渡辺誠(東京農工大学), 小池孝良(北海道大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

産業革命以降,化石燃料の消費増大に代表される人間活動によって,森林を取り巻く環境は劇的に変化している。気候変動に伴う降水量の変化,大気CO2濃度の上昇,窒素や硫黄などを含んだ酸性物質の沈着量の増加,オゾンやPM2.5などの大気汚染物質が森林生態系に与える地球規模の影響が懸念されている。このような環境変化は,光合成活性の低下,土壌の養分・水分の利用性や病虫害に対する抵抗性といった様々なプロセスに複雑な変化を与え,森林の生産性や分布に影響を与える。そして,そのフィードバック作用として,森林からの養分・水分および揮発性有機化合物などの放出特性も変化する。数十年以上かけて蓄積される森林バイオマス,環境資源としての森林の持続的利用,そして流域レベルでの物質循環の将来予測を行う上で,これら人為的な環境変化と森林・樹木における相互作用の理解は避けて通ることができない重要な課題である。本シンポジウムでは樹木生理生態学を基礎として,環境に関わるモニタリング,実験的研究およびフィールド調査というように幅広い分野にわたって森林に対する環境変化の影響に関する最新の知見を樹木の被食防衛に注目して議論するとともに,出版物の紹介も行なう。特に今回は樹木の生産性に影響の大きい植食性昆虫による食害が,環境変化によってどのように変化するのかに注目した講演を予定する。

S3. 人材育成をみすえた森林科学の専門教育の連携・つながりを考える-行政、教育機関、地域-
Collaboration in Specialized Education on Forest Science for Human Resource Development: Government, Educational institutions and Local communities

コーディネータ:井上真理子(森林総合研究所), 枚田邦宏(鹿児島大学),杉浦克明(日本大学),東原貴志(上越教育大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

森林科学の専門教育について,第132,133回日本森林学会大会の学会企画シンポジウム(「技術者教育からみた4年制大学教育の現状」2021年,「4年制大学における森林科学教育の現状と今後の方向―技術者教育の視点から」2022年)が開催された。大学では,学科改組などにより森林科学の専門分野を総合的に履修できる学科等が減っており,林業職など技術系公務員の求人増に対して応募者が少ないことなどが報告された。森林科学の専門教育について,大学間や産学官での連携した取り組みが求められるといえた。

本シンポジウムでは,これからの森林科学の人材育成に関わる専門教育のあり方について,「連携・つながり」をキーワードに取り上げ,各地での取り組みをふまえながら検討を行っていきたい。専門教育について,これまでの大会企画シンポジウム(第127回「技術教育,専門教育としての森林・林業教育-学校教育を中心に」2016年,第128回「“森林・林業分野の人材育成”と教育研究機関の役割-新しい林学を求めて」2017年)などを通じて,中学校の技術科教育(木工),農業高校の森林・林業教育,大学校の状況も報告されてきている。大学に加えて高等学校や中学校でも,専門性を持つ指導者の養成や確保,教育内容の検討が必要な状況が報告されている。

当日は,さまざまな校種で関係機関などと連携した取り組みを行っている研究者や実践者からの報告を予定している。専門教育の現況をふまえて,専門教育の改善や人材育成の方向性について議論を深めていきたい。森林科学の教育に関心のある研究者や,人材育成に関心のある実践者や行政職員の方を含めて,多くの方にご参加頂き,森林科学の根幹をなす専門教育の可能性を追求していく機会としたい。

S4. 「森林サービス産業」:エビデンス収集から社会実装への転換期に森林科学はどのように貢献できるのか?
“Forest-related Service Industry”: How can forest science contribute to the transition from evidence collection to social implementation?

コーディネータ:高山範理(森林総合研究所), 八巻一成(森林総合研究所),平野悠一郎(森林総合研究所),木俣知大(東京学芸大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

「森林サービス産業」は、健康・観光・教育産業への貢献を柱として2019年2月に林野庁等が提唱し、2021年度から林野庁補助事業として、企業の健康経営に資するためのエビデンスの取得がはじまるなど、これまで健康分野を中心に支援が進められてきた。事業開始から約2年が経過し、成果も一定程度蓄積し、各種フォーラムにてモデル地域のエビデンス報告が行われるなど、関係者による活発な取組紹介が行われてきた。

他方、令和3年6月に閣議決定された「森林・林業基本計画」を皮切りに、各種行政計画に「森林サービス産業」の位置付けが進む中で、徐々に社会的な認知が広がってきた。また、林野庁が設置した「forest styleネットワーク」には320を超える企業・団体等の参画し、企業と地域、関係者を結ぶプラットフォームとして順調に発展しつつあり、長野県や岐阜県でもローカルなプラットフォームづくりが進んでいる。さらに、「林業イノベーション」、「デジタル林業戦略拠点」や「農山漁村発イノベーション」等の諸施策においても、異分野連携による研究開発の要素として「森林サービス産業」等が位置付いてきている。

こうした中で、これまでのエビデンスの取得を中心した取り組みから、それらを異分野連携による社会実装や、地域経済・地域づくりへの活用に向けた研究開発への要請が高まっている。また、同時に健康分野以外の観光・教育等の分野にも耳目が集まりつつあるが、森林学会ではあまりこうしたことの情報共有がなされていない。

そこで、学会員と「森林サービス産業」を取り巻く状況や研究開発の視点からの異分野連携に関わる施策の動向を共有することを目的とした企画シンポジウムを開催したい。本シンポジウムでは、まず登壇者の報告を通じて、「森林サービス産業」の全体像や施策の状況、これまでの健康分野におけるエビデンス取得等や観光・教育分野の取り組み、その社会的・学術的な位置づけや意義について整理・共有する。それを踏まえ、登壇者とコメンテータおよび参加者を交えて、森林科学分野において、今後産官学民が連携・協働して、異分野連携で「森林サービス産業」を社会実装していくために、どのような研究開発が必要なのか、また学術界の役割等を総合的に議論する。

S5. ポスト2020生物多様性枠組(GBF)における保全と利用の相克と科学政策対話の役割
Conservation and Sustainable Use in Era of Post-2020 Biodiversity Framework: Designing Map, Indicators and Incentives as Boundary Objects

コーディネータ:香坂玲(東京大学), 栗山浩一(京都大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

2022年末には,ポスト2020生物多様性枠組(GBF)が生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)において採択される予定となっている。なかでも2030年までに30%程度のエリアについて森林を含む陸域と沿岸・海域までを一体的に保全をすること,いわゆる「30 by 30」は大きな目標となる。主に国家など公的な機関が定める保護地域の保全デザインに加え,先住民の居住地区,社有林,社叢林等を含む民間取組等と連携した自然環境保全(OECMs)が注目される。一方で公的な指定による保全区域とOECMsを巡っては共通・連続する領域と独自の改善手法,課題が見込まれる。

そのため,本企画シンポジウムでは,対象地域は指定を伴う公的なもの(国際認定のパーク・遺産制度,国立公園等)及び萌芽期にあるOECMsなどを想定する。主に日本国内の生物多様性との関係性が深いエリアを想定するが,国際比較も歓迎する。人口縮退,災害,再生可能エネルギーとの土地利用の競合,エビデンスやデータに基づいた分析が政策や地域の合意形成にどのように寄与ができるのかを主眼としている。議論には,森林を含む自然環境と人の移動に関するデータ,保全や持続的な利用に向けたインセンティブの設計等を含める。具体的には利用者の携帯電話等の利用者側のビッグデータと,自治体の森林の保全・利用に関しては,森林経営管理制度,ゾーニング,森林環境譲与税などを含む制度設計に関する議論も試みる。専門家と利害関係者との協働を実現するツールであるバウンダリー・オブジェクトとしての地図・指標・インセンティブの活用と情報の提供と整理も行なう。

発表内容としては、①コーディネータ(香坂玲,栗山浩一)による趣旨説明の後,②国際認定制度(GIAHS・MAB)に関連して,林浩昭(国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会)が国東半島宇佐地域における事例,③鈴木(名古屋大,東京大)らが南アルプスのケースを発表する。方法論・データ分析では,④久保雄広(国立環境研究所)らが観光行動についてのビッグデータ分析,⑤藤木庄五郎(株式会社バイオーム)らがスマートフォンを活用した市民参加型生物データ収集,⑥内山愉太(神戸大)らが野生鳥獣管理やパーソントリップ調査について発表する。ゾーニングに関連して,⑦大澤剛士(東京都立大)が農地のOECM候補に関して推定,⑧高取千佳(九州大)らが衛星画像活用の農林地の管理状況評価,⑨山本一清(名古屋大)らが航空機LiDAR活用の森林管理状況把握について発表する。森林環境税・森林経営管理制度では,⑩嶌田栄樹(産業技術総合研究所)がナッジの活用,⑪松岡光(理化学研究所)らが地方議会議事録分析,⑫岸岡智也(金沢大)らが自治体における野生動物保護管理の事業デザインについて発表予定となっている。

S6. 山地森林環境の長期的な変化と,それらが水・土砂・流木の流出に及ぼす影響をふまえた災害予測の可能性
The effect of long-term changes in mountain forest environment on water, sediment and woody debris transport and possibility of disaster prediction based on those knowledges

コーディネータ:浅野友子(東京大学), 内田太郎(筑波大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

人が身近な森の資源に頼って暮らしていた100年前には多くの里山は今より荒廃し,毎年の降雨による表土の侵食速度は現在に比べて大きかったと考えられる。一方,近年は,森林資源があまり使われなくなり森林や下層植生が回復し,表土は年々厚さを増し,山地流域内では土量と材積量が増加しつつある。つまり,里山の多くは今,この100~200年では経験したことのない,豊かな植生と厚い土層に覆われている。その結果、水・土砂移動の形態が,「表面流・表層浸食型」から「地中流・崩壊型」へ変化したことが指摘されているが(塚本2002),毎年起こる表層浸食に比べて単発的に生じる崩壊の予測は難しい。さらに近年,気候変動の影響があらわれ始め,今後いっそう豪雨の頻度や強度が増すことが予想されている。このように場の条件と災害の誘因となる外力のいずれもが変化しており,災害の生じ方や対策が従来と異なってくると考えられる。一方で,現在の災害対策技術は過去の災害の経験をもとにしている部分が多くあり,将来の災害を予防するためには,山地森林環境の歴史的な変化を理解し,それらが水・土砂・流木の流出に及ぼしてきた影響を考慮した上で将来を予測する必要がある。

第132回,133回日本森林学会で行った同じテーマの企画シンポジウムでは,時間の流れの中で山地環境の変化を理解した上で、山地の水や土砂の流出機構を解明し、災害予測の現状・課題を考察することに焦点を当て,主に江戸時代以降に大きく変化した山地・森林,土壌やそれらを取り巻く社会や災害の変遷を振り返った。その結果,山地森林環境が成立した歴史的な経緯は多様であることを認め,個別に理解することが重要であること,過去を知り正しく整理・分析することは容易ではないが,様々な資料を分析するなど視野を広げればその方法があることがわかってきた。今年度も同じテーマでシンポジウムを行い,過去の現象理解を深め,災害予測や今後の森林管理につなげる可能性をさぐる。

S7. 生理部門企画シンポジウム「光エネルギーの上手な利用」とポスター紹介
Tree Physiology Section Symposium “Wise use of photoenergy” and poster introduction

コーディネータ:則定真利子(東京大学), 津山孝人(九州大学),斎藤秀之(北海道大学),田原恒(森林総合研究所),小島克己(東京大学)

3月26日 **:**~**:** 会場 Room *

講演会「光エネルギーの上手な利用」と生理部門のポスター発表の1分紹介とで構成する生理部門の企画シンポジウムを開催します。

生理部門では,個体から細胞・分子レベルまでの幅広いスケールの現象を対象に,多様な手法を用いて樹木の成長の仕組みを明らかにする研究に携わる方々の情報・意見交換の場となることを目指しています。従来の研究分野の枠組みにとらわれることなく,さまざまなスケール・手法で樹木の成長の仕組みの解明に携わる多くの皆様に,生理部門での口頭・ポスター発表にご参加頂くとともに,本シンポジウムにご参集頂きたいと考えております。

講演会では,植物の光エネルギー利用に注目し,生育の礎を作り出すのに不可欠でありながら,過剰にあると機能損傷をもたらす光エネルギーを植物が上手く利用する仕組みを見つめます。東京大学の矢守航さんに,光合成が巧みに光応答して個体の生育を支えている仕組みについてご講演頂きます。北海道大学の田中亮一さんに,常緑針葉樹が冬季に光合成機能を維持する仕組みについてご講演頂きます。九州大学の後藤栄治さんに,林床植物が葉緑体の細胞内での配置を変化させることで林床での光変動に適応している仕組みについてご講演いただきます。

講演会に引き続き,生理部門でポスター発表をされる方々に発表内容を1分間でご紹介いただきます。

生理部門では,必要に応じて大会のプラットフォームを補完する形で,口頭発表およびポスター発表に関する討論のためのオンラインスペースを用意することを検討しています。詳細については,生理部門のFacebookページ(森林学会_生理部門/Tree_Physiology_JFS)やツイッター(@TreePhysiol_JFS)などで随時ご案内していきます。