第128回日本森林学会大会/公募セッション一覧

公募セッションは、既存の部門ではカバーできない部門横断的なテーマについて会員の研究交流を継続的に進めることを目的としたセッションです。発表者は公募します。

T1 持続可能な森林経営と森林環境のモニタリング
Sustainable forest management and forest environmental monitoring

本セッションは取消となりました。

T2 森林生態系中の放射性セシウム汚染に関する新たな知見
New evidence for radiocesium contamination in forest ecosystem

コーディネータ:金子真司(森林総合研究所)、大久保達弘(宇都宮大学)

ポスター発表可

趣旨:福島原発事故から5年が経過し,避難指示区域の見直し,被災地における林業の再開が進められている。しかしながら,森林に降下した放射性セシウム(Cs)は自然減衰によって低下しつつあるものの,系外への流出は少なく大半が森林内に留まっている。このため,森林利用再開にあたっては汚染状況を継続的に把握することが大切である。特に,広葉樹に関してはキノコ栽培用原木と菌床に対する放射性Csの指標値がそれぞれキログラムあたり50ベクレルと150ベクレルと厳しく設定されており,汚染地では利用が困難になっている。さらに,野生キノコや山菜も基準を越え出荷制限されている地域も多く,放射性Csの汚染状況の将来予測が求められている。

過去5回の森林学会大会で森林の放射能汚染に関するセッションを開催し,放射性Csの初期沈着および動態,樹木による放射性Csの吸収と樹体内の移動,放射能汚染の対策および除染,林業木材・里山利用への影響等に関する多くの研究成果知見が発表され,毎回熱心な議論が交わされてきた。森林生態系内の放射性Csに関して,新たな知見が日々見出されていることから,これまでの議論を継承しつつ,新たな成果に基づき,被災地における森林・林業の復興のために何が必要かを考えていくことを目的として本公募セッションを設けることにした。

T3 樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots

コーディネータ:平野恭弘(名古屋大学)、野口享太郎(森林総合研究所)、大橋瑞江(兵庫県立大学)

ポスター発表可

趣旨:『樹木根の成長と機能』の公募セッションでは,樹木根をキーワードに太い根から細い根まで,生態系レベルから細胞レベルまで,根と関連した多岐にわたる研究を公募し,報告対象といたします。

本公募セッションでは,樹木根だけでなく,境界領域分野との融合を目指します。すなわち,研究内容に「根」の測定項目があれば,葉など樹木地上部,材質特性,土壌化学性,土壌緊縛力など物理性,土壌微生物,温暖化や酸性化といった環境条件など,根以外を主な対象とする発表も広く歓迎いたします。「根」を測定項目としたい会員向けに測定方法の共有も目的とします。発表形式は口頭発表またはポスター発表とします。

さらに趣旨説明では2017年6月にエストニアで開催第7回国際樹木根会議など樹木根の国際的動向を森林学会員に広く情報提供し,樹木根と境界領域分野の関連研究者間のネットワーク作りを促進するための総合討論も行いたいと思います。

当日は趣旨説明の後,発表していただき適宜発表間に討論時間を設け,最後に総合討論の時間を設ける予定です。

T4 流出を測る —分野横断的な解析ツールとしての流出研究の応用と可能性—
Discharge measurements — As a common tool for cross-sectional studies

コーディネータ:勝山正則(京都大学)、芳賀弘和(鳥取大学)、小田智基(東京大学)

ポスター発表可

趣旨:本公募セッションで対象とする「流出」とは,単に河川・渓流からの水の流出(狭義の流出)にとどまらず,森林生態系全体やその一部を一つのシステムと捉え,その内側から外側へ水や風によって物質が輸送される現象(広義の流出)として幅広く定義する。水やガス,溶存あるいは粒子状の水質成分の輸送に加え,土砂や落葉枝のようなリターの輸送などがこれに含まれる。流出現象の解明は,対象場での水・物質収支の正確な把握に必要であるだけでなく,環境変動に対する生態系の応答や下流域への影響の理解においても不可欠である。広義の流出研究は,森林学会において防災,立地,植物生態,造林,生理などの幅広い部門で,様々な環境を対象に,様々な手法を用いて進められてきた。しかし,その測定手法や考え方には,各分野において独自に発展してきたものも多く,他分野にとっては馴染みが薄い場合がある。森林学会の場で「流出を測る」ことを幅広い視点で議論し,分野横断的な解析ツールとして利用することは,今後の森林生態系のゾーニングや流域管理に対して指針を示すとともに,地球環境問題に対する森林の役割解明という共通課題に取り組む道筋を示すことにもつながる。

本セッションでは,最新の観測技術・装置の開発や適用事例,これまで捉えることが困難であった流出現象をアイディアや工夫によって捉えた研究,長期観測の継続によって見えてきた新たな現象の紹介などの基礎研究を主な対象とする。また,観測から得られた情報を活用したモデル化の応用研究や,森林生態系の機能評価研究なども歓迎する。議論を通じて,このような流出現象を捉えることができれば新たな発見につながるというような展望を共有し,こういうものを測ってみたいがどうすればいいかという疑問に対して解決の糸口を探りたい。公募セッションである利点を生かし,若手・学生研究者の積極的な発表も歓迎し,活発な議論の場としたい。

T5 森林におけるシカ問題の解決に向けて
Constructing solutions against the impact of deer on forestry and forest ecosystems

コーディネータ:明石信廣(北海道立総合研究機構林業試験場)、藤木大介(兵庫県立大学)、田村淳(神奈川県自然環境保全センター)、安藤正規(岐阜大学)、飯島勇人(山梨県森林総合研究所)

ポスター発表可

趣旨:全国各地におけるシカの増加によって,森林では様々な影響が顕在化している。シカによる森林への影響を軽減するためには,シカの生態や個体数管理,シカの生息状況や森林への影響の把握方法,影響の程度を決定する要因の解明などシカを対象とした研究だけでなく,これらの知見を育林技術や林業経営,さらには森林に関する施策と統合するための多様な視点からの検討が必要である。

シカによる影響の蓄積によって,森林生態系に容易には回復させることのできない変化が生じることが明らかにされつつあり,他の生物や土壌などに及ぼす影響についても研究がすすんでいる。森林への影響が広域化し,これまでシカの少なかった地域でもシカ対策が求められるようになっているが,そこでは,すでに対策がすすんでいる他地域の事例が大いに参考となるだろう。また,人工林資源が成熟して更新面積が増加し,幼齢造林地におけるシカ被害がさらに増加することが懸念されている。シカ対策に要するコストは林業経営における大きな問題となりつつある。一方,林業関係者がシカ捕獲に関わるための施策が実施されるなど,新たな展開に対応するため,現場からもシカ対策の研究成果が強く求められている。

本セッションでは,シカに関する幅広い研究発表とともに,シカ問題に関心をもつ多様な分野の研究者の参加を期待し,森林におけるシカ問題解決に向けた議論をすすめたい。

T6 観光とレクリエーション
Tourism and recreation

コーディネータ:庄子康(北海道大学)、愛甲哲也(北海道大学)、久保雄広(国立環境研究所)

ポスター発表可

趣旨:本公募セッションの目的は,近年の観光やレクリエーションに対する社会的な注目を反映し,これらについて議論できる場を設定し,研究交流の促進を図ることにあります。扱う対象は森林だけでなく,自然保護地域や自然公園,都市公園,景観,野生動物など幅広い対象を想定しており,観光やレクリエーションという文脈の下,様々な学問分野の研究発表がなされることを想定しています。観光とレクリエーションはこれまで風致部門においてキーワードレベルで扱われてきました。しかし,1)林業が名目GDPに占める割合は0.1%に満たないのに対し,観光業は5.0%を占めており,自然地域での観光がこの値すべてに関係している訳ではないものの,かなりの部分で関係していること,2)全国の大学で観光関係の学部が新設されており,そこには森林学会に所属している研究者も数多く教員として採用されていること,の二点から公募セッションを設けることとしました。本公募セッションは一昨年度に引き続きの三回目の開催になります。皆様のご参加をお待ちしております。

T7 木質バイオマス発電のための未利用木材を長期にわたり安定的かつ調和的に供給するために
Toward a stable and coordinated supply chain of fuel chips for power-generation plants for a long period

コーディネータ:横田康裕(森林総合研究所)、寺岡行雄(鹿児島大学)、久保山裕史(森林総合研究所)、吉岡拓如(日本大学)、有賀一広(宇都宮大学)

趣旨:2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始されて以降,木質バイオマス発電,特に買取り価格が高く設定された未利用木材を燃料とする発電施設が,全国で多数計画されている。2016年末までにその多くが稼働を本格化する一方,未利用木材の供給が間に合わない可能性が懸念されている。この問題について,2016年3月の第127回日本森林学会大会において,「2016年問題-発電所は燃料の未利用木材を安定的に確保できるのか?-」と題した企画シンポジウムを開催し,議論した。その結果,当初予定されていた林地残材などのD材ではなく,製紙用チップ用材などのC材が発電利用にあてられ,燃料材は確保されているが,C材は値上がりし,輸入チップを調達する事例も生じていることが明らかとなった。また,今後,計画されているすべての発電所が稼動した場合,年間500万ンの需要が新規に発生するとも見積もられ,長期的な燃料材供給に関する懸念が払拭されているわけではないことも明らかになった。このため,総括として,未利用木材の供給に関しては今後も注視していく必要があるとの認識で一致し,未利用木材の低コスト供給と長期的に安定的なサプライチェーンの構築が今後の課題と考えられた。そこで,今年度は,これらの2つの課題に関する検討をさらに掘り下げるべく,全国から広く各地域の事例や調査研究についての報告を求めることとした。なお,未利用木材の供給にあたっては,上記の製紙用チップとの競合問題の例のように,それが森林・林業・林産業・地域社会に及ぼす影響について高い関心が寄せられており,両者の調和を保つための取組に関連する報告も求める。また,未利用木材に関する検討を相対化するために,一般木材やリサイクル木材との比較検討に関連する報告等も歓迎する。本セッションにおいて,長期にわたり安定的かつ調和的な未利用木材の供給の在りように関する議論が深まることを期待する。

T8 熱帯林研究
Tropical forestry research

コーディネータ Coordinators:藤原敬大 Fujiwara Takahiro(九州大学 Kyushu University)、鈴木遥Suzuki Haruka(京都大学 Kyoto University)、江原誠 Ehara Makoto(森林総合研究所 Forestry and Forest Products Research Institute)、寺内大左 Terauchi Daisuke(京都大学 Kyoto University)

Purpose: This session is designed to share knowledge, information, and experiences on tropical forestry research. To address issues and achieve better conservation and utilization of tropical forests, it is essential to have the following: (1) knowledge on interdisciplinary approaches, (2) dialogue based on accurate information, and (3) learning from past experiences of trial and error. We invite presentations from various research fields such as ecology (e.g. biodiversity, carbon stock), silviculture, socioeconomics (e.g. farm economy, community forestry), anthropology (e.g. local livelihood, culture), politics (e.g. national and international policy), and information science (e.g. remote sensing, GIS). We also welcome presentations by international students as well as young Japanese researchers. To carry out discussion among participants from different countries, English is official language for all presentations and following question and answer in this session. To facilitate lively discussion in this session, the speakers are encouraged to make your presentations understandable for the participants with different background and mother languages.

T9 森林環境の持つ保健休養機能の基礎的研究と応用研究
Basic and applied researches on forest environment amenities

コーディネータ:上原巌(東京農業大学)

ポスター発表可

趣旨:本セッションは本大会で13回目を迎え,森林科学研究の分野の中で,一般市民の関心が高い分野の1つである。これまでの大会では,生理的および心理的なアプローチの基礎的研究をはじめ,臨床事例,研究手法,尺度開発,国内外の地域における事例研究などが発表されてきた。基礎的研究から,保健休養に供する森林環境の整備といったハードの課題,治療・保養プログラム作成等のソフトの課題,そして各臨床症例・事例研究や,保養地事例などに至るまで多岐にわたった内容になっていることが特徴である。そのため,森林・林業関係者だけでなく,医療,社会福祉,心理,教育など,多領域の専門家とコラボレーションを行ってきていることも本セッションの特色であると言える。森林環境は,一般市民の日常的な健康増進はもとより,職場における保健衛生や,医療,福祉,教育などの社会における諸分野での可能性が大きい。本大会のセッションでは,そのような視点から生活習慣病や心の健康づくりに供する森林,樹木の利用,活用手法などの調査研究,事例研究に特に重点を置き,森林環境の持つ保健休養機能についての研究手法,アプローチ方法についても検討,考究したいと考えている。活発で自由な雰囲気のもと,のびのびとしたセッションを展開していきたい。

T10 多様な主体による森林教育
Forest education with diverse implementing entities

コーディネータ:杉浦克明 (日本大学)、大石康彦(森林総合研究所)、井上真理子(森林総合研究所)、青柳かつら(北海道博物館)

ポスター発表可

趣旨:日本森林学会における森林教育をテーマとするセッションは2003年に開始され,これまで継続して森林教育の研究を先導し,数多くの研究発表が行われてきた。第127回大会では,「地域」をキーワードに持続的な森林教育の条件等について議論された。さらに森林教育に関連した企画シンポジウムとして,「森林管理者と社会をつなぐ森林の教育・社会貢献の在り方—大学演習林からの再考—」と「技術教育,専門教育としての森林・林業教育—学校教育を中心に—」の2件が開催され,大学演習林での教育と,専門教育としての森林・林業教育に関する発表が行われた。これまでの教育セッションでの視点に加えて,森林管理者の視点や技術教育・専門教育の視点から議論が展開された。3件の森林教育に関する研究発表の場が設けられ,合計24件の研究発表が行われたことは,森林教育に対する社会の期待や要請の増加と,それに応える研究活動の活発化を意味していると考えられる。これまでの議論から,森林教育は,専門的な人材育成にとどまらず,人間と森林との関係を知り,自然と共生した持続可能な社会を担う市民の人材育成をも含むもので,森林教育が多様な実践主体,内容,対象者,実施場所,社会制度など様々な要素で構成されている複合分野であることが明らかにされてきている。

そこで本セッションでは,10年以上セッションを重ねてきた歴史や社会的要請の高まりを鑑みながら,教育の種別(専門教育,学校教育,社会教育)を問わず,多様な主体による森林教育の教育内容や方法について議論を深めたい。加えて,森林教育の部門化を視野に入れた議論も深めたいと考えている。多くの方のご参加を期待している。