公募セッション(第138回大会)
公募セッションは、既存の部門ではカバーできない部門横断的なテーマについて会員の研究交流を継続的に進めることを目的としたセッションです。発表者は公募します。
- T1. 生物多様性保全と森林管理
Biodiversity conservation and forest management - T2. 森林の放射能研究
Research on radioactivity in contaminated forests - T3. 樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots - T4. 総合学・原論としての森林科学
Pursuing Forest Arts and Sciences as Comprehensive Studies - T5. フォレストデジタルツインの構築と活用
Development and Use of Forest Digital Twins - T6. ネットゼロ社会における森林の役割(第三回)
The Role of Forests in a Net Zero Society in Japan (III) - T7. 持続的な木質バイオマス供給に関する課題と展望
Current issues and future prospects on sustainable wood biomass supply
T1. 生物多様性保全と森林管理
Biodiversity conservation and forest management
略称
生物多様性保全
ポスター発表
あり
コーディネータ
山中聡(森林総合研究所北海道支所)
河村和洋(北海道大学農学研究院)
赤池友樹(宮崎大学農学工学総合研究科)
山浦悠一(森林総合研究所)
趣旨
森林の減少・劣化は世界規模で進行しており,森林生態系の生物多様性保全とその持続可能な利用のための行動が必要とされています。日本の国土の約7割は森林に覆われていますが,人間活動による改変が少ない森林は限られており,原生林やそれらに依存する生物の生息地を維持することは重要です。また近年では,里山などで人間活動の衰退に伴う生物多様性の減少も懸念されています。その一方で,日本の森林の4割を占める人工林は各地で伐採が進み,林業の地域社会や経済への貢献が期待されています。これらの人工林は一般に生物多様性が低いことが知られていますが,管理の仕方によって多くの生物の生息地として機能するとも指摘されています。森林と林業の社会的価値や持続可能性を向上させていくために,日本でも生物多様性の保全に配慮した森林管理が,今後より重要となっていくと考えられます。
生物多様性の保全に配慮した森林管理を行うには,様々な分類群や林相(天然林や人工林など),地域を対象とした生態学的研究や保全技術の開発や検証,集積が必要です。また,得られた知見を実際の森林管理に導入するためには,政策学や社会経済学など,様々な学問分野からのアプローチが必要とされます。
本セッションでは,森林生態系における生物多様性の保全という共通の課題を扱う研究の発表を募ることで,これまで異なるセッションで発表されてきた研究や研究者が集まる場を作りたいと考えています。研究対象とする生物多様性の階層(遺伝子,種,生態系)や空間スケール(林分,景観,流域など),学問分野は問いません。発表形式は口頭発表とポスター発表の両方を対象とします。 当セッションは今回6回目の開催です。今後も継続することで,参加者の方々が取り組んでいる課題について情報を交換・議論し,理解を深め,生物多様性に配慮した森林管理の実践に寄与できる場を作りたいと考えています。
T2. 森林の放射能研究
Research on radioactivity in contaminated forests
略称
森林の放射能
ポスター発表
あり
コーディネータ
今村直広(森林総合研究所北海道支所)
高橋純子(筑波大学)
大久保達弘(東北農林専門職大学)
趣旨
令和8年4月から5年間の「第3期復興・創成期間」が始まった。当該5年間は、東京電力福島第一原発事故の影響が残る福島県の再生と住民帰還に向けた総仕上げの期間と位置づけられており、里山の恵みを享受できるための森林整備の再開や放射性物質対策、原木や原木しいたけ等の産地再生に向けた取組、バイオマス発電施設活用を含む樹皮の有効利用、森林整備作業者の安全ガイドラインの策定、更には、野生きのこ、山菜、ジビエ等の食品について基準の再検討、分かりやすい形で情報発信・リスクコミュニケーションの推進などが進められている。一方、復興庁の設置期間は令和13年3月までであり、第3期復興・創成期間の終了とともに、森林の放射能研究も大きな節目を迎えることが予想される。我が国では放射能に関する話題に触れることは少なくなってきているが、世界的に見れば、放射性セシウムを利用し研究できる数少ない環境にある。これまで15年間に培われた森林の放射能研究を活かし、放射性セシウムを活かした新たな研究分野の創出を試みることも重要であると考える。このように、福島の森林・林業の復興・再生のための研究推進、更には、放射性セシウムを用いたサイエンスとしての研究推進のためにも、幅広い分野の研究者の交流が重要である。本セッションでは、森林内の放射性セシウム動態から、林業や山村地域の再生を含めた社会・経済的影響、さらにはリスクコミュニケーションまで、幅広い研究発表を募集し、森林の放射能研究に携わる研究者、またはそれ以外の分野の研究者との意見交流の場としたい。
T3. 樹木根の成長と機能
Development and function of tree roots
略称
樹木根
ポスター発表
あり
コーディネータ
平野恭弘(名古屋大学環境学研究科)
大橋瑞江(兵庫県立大学環境人間学部)
野口享太郎(国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所)
牧田直樹(信州大学理学部)
福澤加里部(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)
檀浦正子(京都大学農学研究科)
趣旨
公募セッション「樹木根の成長と機能」では、樹木根をキーワードに太い根から細い根まで、生態系レベルから細胞レベルまで、根と関連した多岐にわたる研究を発表の対象といたします。本公募セッションでは、樹木根だけでなく、様々な境界領域分野との融合を目指しています。研究内容に「根」に関わる測定や事象があれば、葉や幹をはじめとする樹木地上部に関する研究、土壌微生物や土壌物理化学特性、緊縛力など防災・減災に関する研究、温暖化など環境変動に関する研究など、根以外を主な対象とする発表も広く歓迎いたします。また「根」を測定項目としたい会員向けに、測定方法の共有も目的としています。
本年も口頭及びポスター発表を広く公募します。発表当日は、趣旨説明の後、口頭発表をしていただき、適宜発表の間に討論の時間を設け、最後に総合討論の時間を設ける予定です。趣旨説明では、根研究学会の開催する根研究集会から根の研究の国内動向を紹介するとともに、2026年6月にイタリアで開催された第9回国際樹木根会議をはじめとした樹木根研究の最新国際動向を森林学会員に広く情報提供させてただきます。総合討論では、樹木根と境界領域分野との研究者間ネットワーク作りを促進するための討論も行います。
T4. 総合学・原論としての森林科学
Pursuing Forest Arts and Sciences as Comprehensive Studies
略称
総合学・原論
ポスター発表
なし
コーディネータ
平野悠一郎(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所多摩森林科学園)
竹本太郎(東京農工大学)
齋藤暖生(東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林樹芸研究所)
水内佑輔(金沢大学融合研究域)
芳賀和樹(法政大学人間環境学部)
山本伸幸(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所)
趣旨
今日でこそ各部門に分かれる森林科学は、本来、多様な生態系や人間社会と森林との関わりに向き合う総合学・現場主義の「林学」として、日本を含めた世界各地で発展を遂げてきた。そこでは、多様性や不確実性を前提としながらも、保続の思想や森林美学等が模索され、「森林の価値・機能・サービスとは何か」、「持続性とは何か」、「人と自然との関わりがどうあるべきか」といった理念的・原論的な議論も行われてきた。
また、近年では、歴史学、文学、民俗学、考古学、倫理学といった人文科学のアプローチにおいて、林学・森林科学が向き合ってきた人間と森林との多様な関わりの内実が掘り下げられるようにもなった。その中で、林学・森林科学全体、或いは各部門や専門分野で論じられてきた思想・理論や実践が、学史や学説、技術史や地域間比較研究といった形で振り返られ、深められようともしている。また、歴史学等のアプローチを通じた長期の地域履歴・データの検証が、今日の森林をめぐる課題解決や管理保全に活かされる道筋も模索されつつある。
その一方で、生物多様性の維持、地球温暖化防止、SDGsの達成、Well-beingの実現等、今後の人間社会のあり方を規定する概念や議論がグローバル化する中、それらの要諦としての森林をいかに管理保全していくかには、大きな注目と期待が寄せられ、森林科学としての応答や発展も求められている。
これらの動きは、「総合学・原論としての森林科学」を改めて議論し、再構築していく必要性を提起するものである。そこで、本セッションでは前年に続き、各部門に跨って、①森林科学と人文科学等の他分野の接点となる研究、②林学・森林科学の歩みを解明する研究(学史・学説・思想研究等)、③森林科学や森林との関わりの意義やあり方を問う研究(哲学・倫理・美学・価値研究等)などを広く公募し、部門横断的なForest Arts and Sciencesとしての研究交流・発展の場を、日本森林学会内に形成していくことを狙いとする。
T5. フォレストデジタルツインの構築と活用
Development and Use of Forest Digital Twins
略称
デジタルツイン
ポスター発表
なし
コーディネータ
橋本昌司(森林総研)
南光一樹(東京農工大学)
瀧誠志郎(森林総研)
山下尚之(森林総研)
中澤昌彦(森林総研)
陣川雅樹(森林総研)
趣旨
都市部を中心にデジタルツインの整備が急速に進み、都市防災シミュレーションやゲーム開発への活用が進められています。デジタルツインとは現実世界(リアル空間)で収集した情報を基に仮想空間上にリアル空間を再現する技術を指します。都市部のデジタルツインは都市情報のあり方や活用法を劇的に変えつつあります。森林版のデジタルツインであるフォレストデジタルツインは、従来の森林情報のあり方を大きく変革し、資源把握、木材生産、防災、多様性、レクリエーション、教育など様々な森林生態系サービスに活用できる可能性を秘めた革新的技術です。一方、都市部と比べると、森林は広域で、複雑な地形の上に生物で構成されており、森林特有の工夫と克服すべき課題もあります。これまでのセッションでは日本版フォレストデジタルツインの可能性と課題が明確になってきました。本セッションは、日本版フォレストデジタルツインの課題に加え、構築と活用について情報交換とネットワーキングを行います。デジタルツインの構築、デジタルツインを利用した研究、デジタルツインの社会実装、デジタルツインと連携できる可能性があるセンシングやデータベース、マッピング、モデリングなど、デジタルツインに関わる幅広い研究内容を含みます。総合討論では、日本版フォレストデジタルツインの可能性と課題について議論します。是非お気軽にご参加ください。
T6. ネットゼロ社会における森林の役割(第三回)
The Role of Forests in a Net Zero Society in Japan (III)
略称
ネットゼロ森林
ポスター発表
あり
コーディネータ
小南裕志(森林総合研究所)
加用千裕(東京農工大)
趣旨
これまでに引き続き、公募セッション「ネットゼロ森林」では、パリ協定での2050年の日本の温室効果ガス排出正味ゼロを目指す長期目標に対して日本の森林が果たす役割の評価についての幅広い研究を公募し、報告対象とします。2021年に閣議決定された「森林・林業基本計画」や「地球温暖化対策計画」においては森林資源の循環利用の促進や2013年時点からの温室効果ガス排出量削減の2.7%を森林吸収で担うなど、ネットゼロ社会に向けた森林の機能の強化がうたわれています。一方、森林のCO2吸収量の真の値の姿や森林管理による影響、頻発する森林攪乱の影響、伐採木材製品(HWP)の炭素隔離効果など、日本全体での森林の炭素蓄積効果の推定といった場合にはまだ多くの研究課題があり、また異なる専門分野間の横断的な議論が必要であると考えます。本セッションでは、個別の森林から日本全体までのさまざまなスケール、あるいは森林生態系における炭素循環からHWPに至るまでの多くの課題のなかで、ネットゼロ社会における森林の役割について興味をもつ方々に参加をいただき、これからの人間社会と森林の在り方や未来の日本の森林のあるべき姿について幅広い議論を行うことを目的とします。発表形式は口頭発表またはポスター発表とします。
T7. 持続的な木質バイオマス供給に関する課題と展望
Current issues and future prospects on sustainable wood biomass supply
略称
木バイ供給課題
ポスター発表
なし
コーディネータ
久保山裕史(森林総合研究所東北支所)
泊みゆき(バイオマス産業社会ネットワーク)
有賀一広(宇都宮大学農学部)
寺岡行雄(鹿児島大学農学部)
趣旨
2012年7月にFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)が施行されて以降、木材を燃料とする木質バイオマス発電が全国各地に広がり、燃材需給量は1,200万㎥を超すまでに拡大しました。一方、燃材価格の上昇や逼迫によって経営破綻する事業体も現れ始めています。このため、維持・管理コストを削減するとともに、安価な燃材を安定調達することが必要となっています。
本公募セッションでは、今日における環境・社会と調和した持続的な木質バイオマスネルギー利用のあり方について理解を深めること目的とします。これまで森林学会で行われてきた、燃料の低コスト供給に関する報告はもちろんのこと、経営面における燃焼灰処理、廃熱利用等による事業性改善、環境面における森林資源の持続可能性や生態系・生物多様性保全への配慮のあり方、LCA、木材のカスケード利用、地域社会への貢献等、幅広い分野からの報告を期待します。また、発電事業に限らず、熱利用・小規模分散型エネルギー利用等のエネルギー利用全般に関する報告も歓迎いたします。多くの方からご報告頂くとともに、多くの方にご参加頂くことを願っております。