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Journal of Forest Research, Vol.26, No.3(2021年6月)

種類: 特集/巻頭言

Title: Ecological management of insular forests: conservation of endangered species and native ecosystems in Ryukyu Archipelago

巻頁: J For Res 26 (3): 169-170

題名: 島の森林の生態系管理:琉球列島における絶滅危惧種と在来生態系の保全

著者: 安部哲人、亘悠哉、今井伸夫

所属: 森林総合研究所九州支所

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1890877

種類: 特集/原著論文

Title: Latitudinal and altitudinal variations across temperate to subtropical forests from southern Kyushu to the northern Ryukyu Archipelago, Japan

巻頁: J For Res 26 (3): 171-180

題名: 日本の九州南部と南西諸島北部における温帯林と亜熱帯林の緯度と標高による変異

著者: 相場慎一郎,吉良友祐,荒木小梅,今村文子,石貫泰三,永田貴文,下西聡一郎,鵜川信,脇山成二,山田俊弘,米田健,鈴木英治

所属: 北海道大学大学院地球環境科学研究院

抄録: 日本の九州南部と南西諸島北部の温帯・亜熱帯地域に設置された24調査区において,樹木の組成と種多様性の緯度と標高による変異を調査した.0.25haに分割した調査区の在・不在データに基づくクラスター分析の結果,気候と地史を反映した以下の3つの森林帯が区分された.すなわち,トカラ海峡以北(九州・屋久島)の冷温帯針広混交林,トカラ海峡以北の暖温帯常緑広葉樹林,トカラ海峡以南(奄美大島・徳之島・沖縄島)の亜熱帯常緑広葉樹林である.冷温帯混交林は吉良の暖かさの指数(WI)が100℃未満の条件にあった.暖温帯と亜熱帯の常緑広葉樹林はWIの範囲が重なっていたので,両者の境界は気候ではなく地史により決定されていた.樹木400本あたりの種数はWIが大きな調査区ほど多かったが屋久島では少なく,地史(トカラ海峡による隔離だけでなく九州からの隔離も)が屋久島の種多様性を低下させていることが示唆された.亜熱帯常緑広葉樹林の種多様性が高いのはトカラ海峡以南のみに分布する種の存在のためであり,地域フロラの多様性が調査区あたりの多様性に影響していることが示された.他方,屋久島の冷温帯混交林の種多様性が九州より低いのは,九州以北のみに分布する種が存在しないためであり,屋久島の冷温帯フロラが貧弱化していることが示された.結論として,温帯から亜熱帯への移行帯である当地域において,老齢林の樹木群集の組成と多様性は気候と地史により決定されている.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2020.1854065

種類: 特集/原著論文

Title: Plant indicator species for the conservation of priority forest in an insular forestry area,Yambaru, Okinawa Island

巻頁: J For Res 26 (3): 181-191

題名: 沖縄県やんばるで優先的に保全すべき森を指標する植物種

著者: 安部哲人,工藤孝美,齋藤和彦,高嶋敦史,宮本麻子

所属: 森林総合研究所九州支所

抄録: 老齢林の減少は地球規模の生物多様性保全にとって重要な課題である。精度の高い指標種は保全が必要な老齢林の特定を容易にすると期待される。また、指標種の信頼性の評価には、その種が保全すべき森林に関係する理由を理解する必要がある。そこで本研究では、林齢が異なるやんばる(沖縄島)の森で69地点の植生を調査し、維管束植物種の優占度と3つの基準パラメーター(着生植物種数と絶滅危惧植物種数,林齢)との関係を分析した。 3つのパラメーター全てと有意な正の相関を示す11種が指標種候補と考えられ、そのうち10種は木本種であった。これらの中で、イスノキは野外で簡単に識別でき、その生態学的特性も十分に研究されていることから最も有力な指標種の1つと見なされた。指標する理由と考えられる3つの樹種特性(萌芽力、年成長率、材密度)については、低萌芽力、高材密度の樹種の優占度が高い森林では絶滅危惧植物の種数が多くなり、低年成長率、高材密度の樹種が優占する森林では着生植物種数が多かった。これらの樹種特性は林齢とも相関しており、イスノキが保全すべき森林の指標となる理由を説明できた。以上の結果は、これらの特性を持つ種の大径木が保全すべき森の効果的な指標となることを示唆している。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2020.1858535

種類: 特集/原著論文

Title: Recent nest tree use by the critically endangered Okinawa woodpecker in relation to forest age and two exotic forest pests

巻頁: J For Res 26 (3): 192-200

題名: 絶滅危惧種ノグチゲラによる営巣木利用と林齢及び二つの外来樹木病虫害との関係

著者: 小高信彦,Jason Preble,齋藤和彦,渡久地豊,久高将洋,迫田拓,八木橋勉

所属: 森林総合研究所九州支所

抄録:営巣木の利用可能性は、キツツキにとって極めて重要な繁殖要件である。ノグチゲラ(Dendrocopos noguchii)の営巣木の保護区外管理手法に資するため、213本の営巣木の特徴を整理し、航空写真と森林簿を用いて営巣場所の詳細な林齢を評価した。ノグチゲラは17種の樹木と1種の木性シダを利用した。主な利用樹種は、スダジイCastanopsis sieboldii (営巣木全体の34%)、センダンMelia azedarach11%)、ハンノキAlnus japonica24%)、リュウキュウマツPinus luchuensis8%)であった。スダジイは樹齢60年以上の森林で最も多く利用されており、ハンノキ、リュウキュウマツ、センダンは、より若い森林で最も多く使用されていた。ハンノキとリュウキュウマツの枯死木での営巣頻度が比較的高かったのは、それぞれ、外来種であるタイワンハムシPlagiosterna formosanaによる枯死と、マツノザイセンチュウBursaphelenchus xylophilusを原因とするマツ材線虫病の発生による枯死が影響していると考えられた。しかし、これら外来の病虫害による枯死は一時的なものであり、また発生した立枯れ木は、温暖で湿潤な気候の中では長期的な資源として機能しない可能性がある。ノグチゲラのために、安定して営巣木を確保するためには、樹齢60年以上の森林を保全すること、伐採の際には数本のスダジイを残すこと、若齢林では更新してきたほとんどのセンダンを除伐の際に残すことを推奨する。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1913790

種類: 特集/原著論文

Title: Landscape features of endangered Ryukyu long-furred rat (Diplothrix legata) roadkill sites in Yambaru, Okinawa-jima Island

巻頁: J For Res 26 (3): 201-207

題名: 沖縄島やんばるにおける絶滅危惧種ケナガネズミ(Diplothrix legata)のロードキル発生地の景観の特徴

著者: 宮本麻子,玉那覇彰子,亘悠哉

所属: 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所 

抄録: ロードキルは多くの野生生物にとって大きな脅威である。保護地域における生息地管理や保全対策を実施するためには、景観スケールでロードキルに関連する要因を明らかにすることが重要となる。本研究は、沖縄島北部やんばるにおいて、絶滅危惧種ケナガネズミ(Diplothrix legata)のロードキルに関わる景観要因を明らかにした。20115月から20174月までのルートセンサスデータ(13.9km)を用い、一般化線形モデルによりロードキル地点と景観要因(常緑広葉樹林面積、マツ林面積、平均植生高、道路曲線の最小半径)との関係を解析した。さらに、ロードキル件数と国立公園地種区分との関係を明らかにした。ロードキル件数は、平均植生高やマツ林面積割合と正の相関があった。また、ロードキル件数は、保護レベルの高い地域では、保護レベルの低い地域や保護されていない地域に比べて高かった。これらの結果は、成熟林やマツ林の割合が高い地域など、これらの景観要素を含む地域でのロードキル対策の必要性を示唆している。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1887437

種類: 特集/原著論文

Title: 大文字Effects of topography and anthropogenic alterations in forest environments on the breeding use by two endangered frog species in Amami-Oshima Island

巻頁: J For Res 26 (3): 208-214

題名: 奄美大島における絶滅危惧のカエル2種による繁殖利用に地形と森林環境の人為的改変が与える影響

著者: 岩井紀子

所属: 東京農工大学

抄録: 両生類は世界で最も絶滅が進んでいる分類群の一つであり、人為的な環境改変はその個体数の減少を引き起こす重要な要因と考えられている。人為的環境改変は複数の異なる経路で起こりうるが、複数の経路が関与する場合、効果的な保全を行うためには、それぞれの経路の相対的な重要性を知る必要がある。本研究は、複数の人為的環境改変が森林環境に影響を与えていると考えられる奄美大島の亜熱帯林において、2種の絶滅危惧のカエル(オットンガエルとアマミイシカワガエル)による繁殖地選択に影響する要因の、相対的重要性を明らかにすることを目的とした。対象2種による繁殖利用の有無に対して、9つの地形的変数と、3つの人為的環境改変の変数(林齢、林道密度、外来種マングース密度)を用いて、ランダムフォレストによる解析を行った。オットンガエルの繁殖利用を決定する変数は、流域面積、地形湿潤指数、標高の順に重要性が高く、アマミイシカワガエルの場合は、標高、流域面積、地形湿潤指数の順であった。人為的環境改変に関する変数は地形的変数よりも重要性は低く、その中では林齢の重要性が高く、マングース密度の重要性は低かった。流域内の平均林齢が40年未満で、半径500mバッファー内の林道が多く、マングース密度が高い場所では繁殖利用可能性が低かった。人為的環境改変の変数が地形的な変数に比べて重要性が低かった理由としては、対象2種のカエルの繁殖に必要な地形的条件が特殊であることが考えられた。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1899577

種類: 特集/原著論文

Title: The endangered epiphytic orchid Dendrobium okinawense has a highly specific mycorrhizal association with a single Tulasnellaceae fungus

巻頁: J For Res 26 (3): 215-221

題名: 絶滅のおそれがあるラン科着生植物オキナワセッコクはツラスネラ科の1菌種と特異的に菌根共生している

著者: 蘭光健人,阿部真,安部哲人,小高信彦,久高将洋,久高奈津子,木下晃彦,辻田有紀

所属: 鹿児島大学大学院連合農学研究科

抄録: ラン科着生種は維管束着生植物の68%を占め、多くの希少種を含んでいる。ラン科植物は菌根菌への栄養依存度が極めて高く、菌根菌の存在下でしか種子発芽できない特殊な生態をもつ。したがって、特定の菌根菌のみと共生する菌特異性が高いランは分布域が制限されやすく、希少性が高い傾向にある。本研究は、台湾南部と沖縄県のやんばる地域にのみ分布する極めて希少なラン科着生種であるオキナワセッコクの菌根菌を調査した。やんばる地域にて10個体より合計25本の根を採集し、nrDNAITS領域の塩基配列を元に菌根菌を特定した。その結果、全ての個体から担子菌類のツラスネラ科に属する1菌種が検出されたことから、オキナワセッコクは菌特異性が極めて高いことが明らかになった。オキナワセッコクが属するセッコク属種の多くは複数の菌根菌と共生しており、菌特異性が比較的低い傾向にある。したがって、オキナワセッコクの希少性はその高い菌特異性と関連していることが示唆された。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1876587

種類: 特集/原著論文

Title: Development of a male specific genetic marker for Garcinia subelliptica Merr. tree

巻頁: J For Res 26 (3): 222-229

題名: フクギ(Garcinia subelliptica Merr.)の雄特異的DNAマーカーの開発

著者: 伊礼彩夏,Matin Miryeganeh,玉城雅範,佐瀨英俊,浦崎直也,太郎良和彦

所属: 沖縄県農業研究センター

抄録: フクギ(Garcinia subelliptica Merr.)は雌雄異株の樹木で琉球諸島沿岸の防風林として伝統的に植栽されている。幼苗期での早期の性判別および選抜により、効果的な植林と維持管理が可能となるが、フクギのゲノムや性決定システムは、まだ良く理解されていない。本研究では、k-mer解析を用いて雌雄のゲノムサイズを最大12Gbと推定した。さらに、RAD-seq(Restriction-Site-Associated DNA sequencing)解析を用いて、フクギの雄特異的DNAマーカーを開発した。FSDM ("fukugi" sex determination marker)と名付けた660 bpの増幅断片は、すべての雄で増幅されたが、雌では増幅されなかった。加えて、マーカーの分離比は供試した集団では1:1であった。FSDMのDNA配列は、抗真菌性タンパク質ginkbilobin-2遺伝子と有意な類似性を示した。フクギの性特異的な遺伝マーカーの開発によって、世界自然遺産候補地である沖縄本島北部周辺における伝統的景観の効果的な保全や、将来を見据えた集落設計が可能になるかもしれない。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1897060

種類: 原著論文/Forest Health

Title: Effects of three host pine species on diapause induction and life-history traits of Monochamus alternatus alternatus (Coleoptera: Cerambycidae)

巻頁: J For Res 26 (3): 230-236

題名: マツノマダラカミキリの亜種Monochamus alternatus alternatus (Coleoptera: Cerambycidae) の休眠誘起と生活史形質に及ぼす寄主マツ3種の影響

著者: 富樫一巳

所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科

抄録:  マツノマダラカミキリの1亜種Monochamus alternatus alternatus Hopeは中国と台湾に分布し,マツ材線虫病の病原体マツノザイセンチュウを伝播する。日本土着の亜種Monochamus alternatus endai Makiharaは1化性または半化性であるのに対して,M. a. alternatusは2化性(年2世代)である。広食性の植食性昆虫には,摂食する寄主植物によって休眠率が影響を受ける種がいる。その場合,年間世代数(化性)は寄主植物に依存して変化する。M. a. alternatusの定着に及ぼす外来のマツ属樹種の影響を評価するために,実験室でその幼虫を日本在来のアカマツとクロマツおよび北アメリカ原産のエキナタマツの小丸太で飼育した。その結果,3種のマツは幼虫の休眠率を1.0に増加させることはなく,どの種も昆虫の化性を変えないことが示唆された。さらに,どのマツ種も非休眠の雌の卵巣小管数に影響を与えないことが明らかにされた。アカマツとクロマツの摂食が成虫体重に及ぼす影響は変わりやすく,アカマツとエキナタマツの間では成虫の体重に違いはなかった。このため,M. a. alternatusの化性は日本や北アメリカのようなM. a. alternatusの未分布地に土着のマツ種のいくつかによって変化しない,つまりこの昆虫がそれらの土地に侵入して定着する場合,年間の世代数減少によって年あたりの増殖率は減少しないことが示唆された。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1885104

種類: 原著論文/Forest Health

Title: Effects of planted tree species on biodiversity of conifer plantations in Japan: a systematic review and meta-analysis

巻頁: J For Res 26 (3): 237-246

題名: 植栽樹種が日本の針葉樹人工林の生物多様性に及ぼす影響:系統的レビューとメタ解析

著者: 河村和洋,山浦悠一,曽我昌史,Rebecca Spake,中村太士

所属: 北海道大学農学部

抄録: 世界的に増加している人工林では,一般に天然林と比べて生物多様性が低いことが知られる.しかし,人工林も森林性生物の重要な生息地として機能する場合があり,林業と生物多様性の保全を両立させるためには,人工林の生物多様性とその規定要因を明らかにする必要がある.人工林の生物多様性を規定する要因のひとつとして,植栽樹種の重要性が指摘されてきた.しかし,地域内で複数の樹種が植栽されることは少ないことから,詳細には検証されてこなかった.本研究では,針葉樹人工林と天然林の生物多様性を比較した国内研究を収集し,メタ解析により植栽樹種が人工林の生物の個体数・種数に及ぼす影響を定量化した.マツ科(カラマツなど)の人工林では,多くの分類群で個体数や種数は天然林と大差がなく,生息地としての重要な役割が示唆された。一方でヒノキ科(スギ、ヒノキ)の人工林では,ほとんどの分類群で個体数・種数が天然林と比べて有意に低かった.これらの結果は,人工林の生息地機能やその管理は植栽樹種に応じて個別に考えるべきであることを示している.今回の系統的レビューでは,西日本で脊椎動物を対象とした研究が乏しいなど,取り組むべき課題も明確になったため,今後はこれらに対応したより包括的な研究の蓄積が期待される.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1891625