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Journal of Forest Research, Vol.22, No.5(2017年10月)

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:Selection of chipper engine size based on business scale and optimised cost of chipping and transportation
巻頁: J For Res 22 (5): 265–273
題名: 事業規模に応じたチッパ出力の選択とチッピングと輸送のコスト最適化
著者: 吉田美佳・酒井秀夫
所属: 筑波大学生命環境系
抄録: チッピングと輸送のコストを最適化することにより、事業規模に応じて適切なチッパ出力を選択することができる。また、チッパの稼働率を高くすることにより、チップ供給コストを低減することができる。岩手県下をモデルに回帰分析を行った結果、チッピングと輸送コストをチッパ出力の関数として表すことができ、両者のコストの間にはトレードオフの関係があることが示された。チッパ出力が200kWから400kWの間にあるチッパを中型チッパとすると、これらの年間事業規模は少なくとも約20,000m3程度となり、経済性および輸送管理の面で最適なチッパ選択となる。小型チッパはこれよりもチップ供給コストは高くなるが、年間事業規模が約10,000m3以下の事業体が使用するのには適している。年間事業規模が約50,000m3以上では大型チッパが導入可能となり、チッピング費用を低減することができるが、サプライチェーンマネジメントを容易にするため、より大きなトラックやトレーラが必要となる。今後、シャトルトラック輸送システムにおいて、サイクルタイムの1/4から1/5を占める荷下ろし時間と空荷走行を減らすことが求められる。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:Growth responses of Abies spectabilis to climate variations along an elevational gradient in Langtang National Park in the central Himalaya, Nepal
巻頁: J For Res 22 (5): 274–281
題名: ネパール中央ヒマラヤのランタン国立公園における標高傾度に沿った気候変異に対するAbies spectabilisの成長反応
著者: Krishna Shrestha, Parveen Kumar Chhetri, Raju Bista
所属: University of Bergen
抄録: Studies on tree-growth responses to climatic variations in a subalpine ecoregion of the central Himalaya are limited. The Himalayan silver fir (Abies spectabilis (D. Don) Spach), a dominant tree species in subalpine forest on mesic north-facing slopes, was used to analyse the tree-growth‒climate relationship along an elevational gradient. Tree-growth shows sensitive responses to both growing-season and non-growing season temperature and precipitation variability at all elevations. Temperature has a strong influence at the boundaries (highest and lowest elevation) of the forest range. The uppermost tree-limit boundary is strongly associated with summer temperature, and the lowest forest boundary with winter temperature. Autumn temperatures (November, prior to growth year) influence tree-growth regardless of elevation. Premonsoon precipitation has a significant influence on growth only at intermediate elevations. As the study describes the response pattern from only a mesic area, more studies covering a range of climate regimes are required to see whether there is a clear pattern of species-specific growth responses to climate variables along an elevational gradient.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:Quaternary range-shift history of Japanese wingnut (Pterocarya rhoifolia) in the Japanese Archipelago evidenced from chloroplast DNA and ecological niche modeling
巻頁: J For Res 22 (5): 282–293
題名: 葉緑体DNAと生態ニッチモデルの知見に基づくサワグルミの日本列島における第四紀分布域変遷
著者: 菅原可奈子・金子有子・阪口翔太・伊藤哲・山中啓介・崎尾均・星崎和彦・鈴木和次郎・山中典和・井鷺裕司・百原新・瀬戸口浩彰
所属: Graduate School of Human and Environment Studies, Kyoto University
抄録: Based on organelle DNA phylogeographic analyses and ecological niche modeling (ENM), we investigated the range-shift history of the Japanese wing nut (Pterocarya rhoifolia) during the Quaternary climatic oscillations with particular emphasis on the Last Glacial Maximum (LGM). Phylogeographic patterns of this species were determined using 376 individuals from 53 populations for chloroplast DNA sequencing of three spacers. Spatial analysis of molecular variance (SAMOVA) revealed the current phylogeographic structure would be sculptured by multiple range shifts from each glacial refugium, which would have been repeated several times during the Quaternary climatic oscillations. High haplotype diversity and private haplotypes were detected in southwestern Japan, where wing nut is currently infrequent and found mainly in high mountains, whereas in northernmost Japan haplotype diversity was low though this plant is quite common at present. According to ecological niche modeling (ENM) approach, during the LGM the climatically suitable distribution areas were not recovered in northeastern Japan but in lowlands of southwestern Japan. Our combined results suggest that Japanese wing nut primarily persisted in the lowlands of southwestern Japan and coastlines below 36.5°N latitude during the LGM, having led to the post-glacial range expansion from the refugia in each area of southwestern and lower-latitudinal northeastern Japan, and to the wide-range recolonization from the southerly refugium/refugia to the north in northernmost Japan. The southwestern and coastal refugia have played a role in shaping the current haplotype diversity and phylogeographic structure, whereas some rear edge populations, harboring unique haplotypes, have been also maintained.

種類: 原著論文/生物-生態
Title:Survival and growth of Fagus crenata seedlings in relation to biological and microtopographical factors in a cool temperate broadleaf forest
巻頁: J For Res 22 (5): 294–302
題名: 冷温帯落葉広葉樹林において生物学的要因と微地形がブナ実生の生残と成長に与える影響
著者: 赤路康朗・廣部 宗・宮崎祐子・牧本卓史・木下 秋・服部一華・坂本圭児
所属: 岡山大学大学院 環境生命科学研究科
抄録: 樹木の生活史において非常に重要な実生の生残や成長には、空間的に不均質な非生物的要因と生物的要因が影響する。本研究は、ブナ実生の生残や成長に7つの要因(ササの稈密度、傾斜角、地形の凸度、同種成木までの最短距離、ブナ実生の局所密度、実生のサイズと樹齢)が与える影響を、微地形要因については影響の方向と強さの空間非定常性も考慮して検証した。西日本の冷温帯林に90×30m調査区を設置し、2011年に主軸長50cm未満の全てのブナ実生を記録した。2012年にそれらの生死を確認し、生残個体の主軸長を測定した。赤池情報量規準により選択した最良モデルでは、生残にはサイズ、樹齢および同種成木までの距離が正の影響を、傾斜角と凸度が負の影響を示した。加えて、凸度が持つ負の影響は調査区内の位置によりその強さが変動した。一方、成長にはサイズが正の影響を、ササの稈密度が負の影響を示した。これらの結果から、ブナ実生は同種成木から離れた緩傾斜の平坦地〜多少の凹地形地において生残しやすく、ササが疎らな場所で成長が良いことがわかった。また、凸度が示す影響の空間非定常性もブナ実生生残の空間パターンに寄与することを実証した。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:Stand recovery of a temperate hardwood forest 60 years after a stand-replacing windthrow based on a permanent plot study
巻頁: J For Res 22 (5): 303–308
題名: 固定プロット調査による林分置換撹乱後60年間の温帯広葉樹林の林分回復
著者: 戸田真理子・渋谷正人
所属: 北海道大学大学院農学院
抄録: 強い風害後の森林回復モデルに有効な傾向を明らかにするために,風害で強く撹乱された北海道の落葉広葉樹林の60年間の林分構造と種組成の動態を,2箇所の固定プロットで検討した。樹木密度,種数,種多様性,遷移構成と林分発達段階の経時変化を分析した。両プロットとも広葉樹林として回復した。両プロットで密度と種数は風害後増加し,35~40年後に最大となり,その後減少した。これらの結果から,両プロットとも風害後35~40年間は林分初期段階(stand-initiation stage)であり,その後若齢段階(stem-exclusion stage)へ移行したと結論した。種多様性は,両プロットで林分初期段階の種数の増加とともに増大し,その後やや減少した。遷移構成は両プロットで60年間にそれほど大きな変動はなく,若齢段階には風害前の構成へと戻る傾向がみられた。本研究でみられた経時的な変化は,本調査地の近くに位置する固定調査区における先行研究の結果とひじょうに類似していた。従って,本研究は,林分置換撹乱後の温帯林の回復モデルの構築に有効な情報を提供できたと考えられる。

種類: 短報/環境
Title: Effects of deer grazing on soil C and N dynamics in Miscanthus sinensis grassland and Quercus serrata forest in Ashiu Research Forest, Japan
巻頁: J For Res 22 (5): 309–313
題名: 芦生研究林のコナラ林およびススキ草原においてシカの採食が土壌炭素・窒素動態に与える影響
著者: 福島慶太郎・石井勝之・吉岡崇仁
所属: 京都大学フィールド科学教育研究センター / 首都大学東京都市環境科学科
抄録: シカによる植生変化が土壌の炭素・窒素動態に与える影響を把握するため,採食圧が非常に高い京都府南丹市にある京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林のコナラ植林地およびススキ草原地を対象に調査を行った。コナラ植林地とススキ草原にシカ排除柵を設置し,土壌水分,無機態窒素濃度,無機化・硝化速度,土壌全炭素・窒素濃度について植生タイプ,シカ排除柵内外,土壌深度の効果を解析した。秋季のリター量に関して,柵内のススキ草原では,回復したススキによるリター量がコナラ林の約3倍あり,土壌炭素濃度も高かった。また,ススキ草原,コナラ林とも年間を通して柵外の方が柵内よりも硝酸態窒素濃度が高かった一方,硝化速度は夏季に柵内の方が高かった。以上のことから,排除柵設置によって回復した草本植生,特にススキが,土壌中の炭素や硝酸態窒素の保持に重要な役割を果たすことが示された。

種類: 短報/生物-生態
Title: Growth and photosynthesis characteristics of invading larch saplings in an occasionally flooded dry stream bed in cool-temperate Japan
巻頁: J For Res 22 (5): 314–319
題名: 稀に冠水する涸れ川流路に侵入したカラマツ稚樹の成長と光合成の特性
著者: 市橋隆自・小林剛
所属: 香川大学農学部
抄録: 日光国立公園周辺の水辺域では,周辺植林地由来のカラマツ稚樹の侵入がしばしば確認される.水辺域においてカラマツが定着する可能性を検討するため,大雨時に冠水する「涸れ川流路」と,近傍の「非水辺域」に生育するカラマツ稚樹(高さ3 m程度)の地上部構造・個葉レベルの生理生態特性の比較を行った.涸れ川の稚樹は高さ成長が遅く,個体全体の当年伸長量(当年枝長の総和)は非水辺域稚樹の半分程度であったが,明瞭な茎伸長を伴わない短枝を多く作ることにより,非水辺域の個体と同程度の葉量を保持していた.涸れ川稚樹の針葉は窒素含有率が低く,光飽和条件下の光合成能力(CO2同化速度,電子伝達速度)は非水辺域の稚樹よりも有意に低かった.これらの結果は,涸れ川流路のカラマツ稚樹が,明らかに環境からストレスを受け,しかし比較的長期間にわたって着実に成長を続けていることを示し,よって,カラマツの侵入が水辺環境とその植生に影響を与える可能性を暗示している.近年のカラマツ植林の長伐期化傾向は,種子生産源となる成熟林の増加につながる.植林地から周辺環境へのカラマツの侵入とその影響について,今後一層の注意を払う必要がある.

種類: 短報/生物-生態
Title:Identification of Cupressaceae species from airborne pollen grains using chloroplastic markers: implications for reproductive interference evaluation in a remnant natural population of Chamaecyparis pisifera (Sieb. et Zucc.) Endl
巻頁: J For Res 22 (5): 320–324
題名: 葉緑体マーカーを用いた空中花粉からのヒノキ科樹種の同定 −断片化されたサワラ天然林における繁殖干渉の評価にむけて−
著者: 蘇 彰宏・鶴田燃海・向井 譲
所属: 岐阜大学大学院応用生物科学研究科
抄録: サワラ(ヒノキ科ヒノキ属)の天然林の多くは、現在断片化され、近縁のヒノキやスギの人工林に囲まれた状態にある。サワラ雌花の周りに散布される花粉粒の種組成を明らかにするため、葉緑体DNAのtrnL(UAA)イントロンにおける塩基配列の違いを基にした二つの遺伝マーカー(Chaps-trnL01とChaps-trnL02)を開発した。この領域では、サワラにのみClaIの制限酵素認識サイトがあり、増幅断片を制限酵素で消化することで、他のヒノキ科樹種とサワラとを容易に見分けられる。なお開発したマーカーは、花粉一粒から抽出したサワラ、ヒノキ、スギのDNAにおいて、それぞれ75.0%、58.3%、100%の増幅成功率が得られた。次にこの手法を、サワラの天然林で採取した空中花粉の種組成の同定に適応した。空中花粉の90%以上はヒノキの花粉であると同定され、大量の異種花粉がサワラの開花期間に飛散していることが示された。このことは、断片化されたサワラ個体群が、同種の花粉との受粉機会が減少することによる繁殖干渉にさらされていることを示唆する。