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Journal of Forest Research, Vol.24, No.6(2019年12月)

種類: 原著論文/Socioecnomics, Planning, and Management
Title: Impacts of selective logging on spatial structure of tree species composition in Bornean tropical rain forests
巻頁: J For Res 24 (6): 335-340
題名: ボルネオ熱帯林における択伐が樹種組成の空間構造に及ぼす影響
著者: 今井伸夫, John Baptist Sugau, Joan T. Pereira, Jupiri Titin, 北山兼弘
所属: 東京農業大学 森林総合科学科
抄録: マレーシア・サバ州の熱帯雨林において、択伐施業が樹種組成の空間構造に及ぼす影響を調べた。2つの森林伐採コンセッションにおいて、強度劣化林から原生林にわたって半径20m(面積0.12 ha)のプロットを50個ずつ設置した。その際、任意の2プロット間の距離が0.2-40 kmになるように設置した。また0.2 kmスケール以下の空間構造についても解析できるように、100×200 mプロットを原生林、低インパクト伐採林、従来型伐採林に一つずつ設置し、その中を40×30 mコドラート(面積0.12 ha)に分割した。原生林と弱度伐採林では、空間スケール(0.2 kmスケール以上か以下か)にかかわらず、任意の2プロット間の種組成の類似度は、プロット間距離が離れるほど低下した。こうした空間構造は、空間スケールによらず強度伐採林では見られなかった。強度伐採林では、パイオニア種優占の更新パッチと遷移後期種優占の残存パッチがモザイク状に分布していた。そのため、種組成の空間変動は高く、原生林などで見られた距離依存的な空間構造は見られなかった。このように、低インパクト伐採は樹種組成の距離依存的空間構造を維持できる一方、強度択伐はランダムな植生パッチ形成を通してこうした空間構造にダメージを与えることが分かった。



種類: 原著論文/Socioecnomics, Planning, and Management
Title:  Indonesia Provincial Spatial Plans on mangrove in era of decentralization: Application of content analysis to 27 provinces and "blue carbon" as overlooked component
巻頁: J For Res 24 (6): 341-348
題名: 地方分権化時代のインドネシアの州空間計画にみるマングローブ保全の分析:27州を対象とした内容分析と見過ごされている領域としての「ブルーカーボン」
著者: Kevin Muhamad Lukman, Jay Mar Quevedo, 柿沼 薫, 内山 愉太, 香坂 玲
所属: 東北大学大学院環境科学研究科
抄録: 「ブルーカーボン」という用語に象徴されるよう、マングローブ林を含む沿岸・海域生態系の炭素貯留への注目が高まっている。インドネシア共和国は法制度の大規模な改革を経ており、分権化の時代において州政府によるブルーカーボン生態系の扱いを把握することは非常に重要である。本研究ではインドネシア共和国においてデータが利用可能な27州を対象に、その州空間計画(Provincial Spatial Plans)に対して内容分析を実施した。その結果、州空間計画の内容は9つのクラスターに区分された。管理や利用に関する項目のうち「活動の禁止」に関連するクラスターが、州空間計画において最も頻繁に言及されていた。続いて、マングローブ林の観光・教育への活用に関するクラスターが頻出していた一方で、炭素貯留の機能やブルーカーボンの側面についてはほとんど言及されていなかった。本研究により、州空間計画は州政府のマングローブ林に対する優先事項や意識の動向を把握するベンチマークとして有用であることが確認された。



種類: 原著論文/Socioecnomics, Planning, and Management
Title:  Habitat suitability models of Korean crevice salamander (Karsenia koreana) at forested area in Daejeon metropolitan city, Republic of Korea
巻頁: J For Res 24 (6): 349-355
題名: 韓国大田広域市の森林域におけるサンショウウオ(Karsenia koreana)の生息域適性モデル
著者: Ji-Hwa Jung、Eun-Jae Lee、Woo-Shin Lee、Chang-Deuk Park
所属: Seoul National University, Korea
抄録: We studied the relationship between the Korean crevice salamander (Karsenia koreana) and several environmental factors, thereby contributing to the basic ecological knowledge required for the future conservation of salamander populations. The aims of this study were to derive a habitat suitability model for K. koreana using presence-absence data for the species and habitat factor information, and to identify the environmental factors that greatly influence the occurrence of K. koreana. In 2015 and 2017, 179 survey plots within five forested areas of Daejeon Metropolitan City were surveyed for the presence of K. koreana using both line transect surveys and time-constrained surveys. Three categories of environmental factors were measured for each habitat. Habitat suitability model of K. koreana was derived from this information, and factors that significantly affected the presence of K. koreana were determined. The presence of K. koreana was detected at 77 survey plots within the five forested areas. In terms of forest structural factors, the amount of coarse woody debris and the percentage cover of various substrate types were found to be major factors determining the occurrence of K. koreana. Leaf litter depth and pH were found to be important soil condition factors, and water temperature, dissolved oxygen, and channel width were the major water condition factors. These factors need to be referenced and utilized for the future conservation of the species, and extensive studies are needed to identify further correlations among these factors.



種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences
Title: Effect of cutting size on rooting ability and first year growth of Pinus thunbergii in nursery containers
巻頁: J For Res 24 (6): 356-364
題名: さし穂のサイズがクロマツコンテナ苗木の発根性と初年度成長に及ぼす影響
著者: 松永孝治,大平峰子
所属: 森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター九州育種場
抄録: マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツのさし木苗の生産性を向上させるため、さし穂のサイズが発根性と初年度成長に及ぼす影響を調べた。遺伝的に異なる4クローンの採穂台木からさし穂として採取した萌芽枝を様々なサイズの組み合わせ(5~6の直径クラスと4つの長さクラス)に割り当てた。さしつけ一年後,発根率と苗高を調査し,一般化線形混合モデルと線形混合モデルを用いてさし穂のサイズの影響を解析した。直径が小さいさし穂の発根性は高く,苗高は低かった。一方,直径の太いさし穂の発根性は低く,苗高は高かった。この結果はさし木苗の生産性を最大化する最適な中間的な直径が存在することを示唆する。長い挿し穂の苗高は高くなったが,さし穂の長さは発根性に影響しなかった。発根性と初年度成長はクローン間で異なり,生産性を高める最適な直径はクローン間で異なること,また生産性の向上には適切なクローンの選択が重要であることが示唆された。



種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences
Title: Survival and recruitment of Sasa kurilensis culms in response to local light conditions in a cool temperate forest
巻頁: J For Res 24 (6): 365-370
題名: 冷温帯林における局所的な光条件がチシマザサの稈の生残と加入に及ぼす影響
著者: 赤路康朗,藤好恭平,呉崇洋,服部一華,廣部宗,坂本圭児
所属: 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター
抄録: クローナル植物であるササは樹木の更新を阻害することが知られているが,局所的な光条件がササの稈の動態に及ぼす影響については十分に理解されていない.そこで本研究では,西日本にあるブナ老齢林において,光条件とチシマザサの稈の生残および新規加入の関係を調べた.2014年,林内に2×2m方形区を40個設置し,方形区内に生育していた長さ0.5m以上のチシマザサの稈を1466本識別した.2015年,識別した稈の生残を確認すると共に,新たに出現した稈の本数を方形区ごとに記録した.結果として,2014年から2015年にかけて,全方形区面積である160m2内において枯死稈は179本,新規加入稈は118本存在した.モデル解析の結果,稈の新規加入密度はササ層の上の光強度に依存せず,既に存在していた稈の本数が多いほど増加することが示された.対照的に,稈の生残率は,ササ層の上の光強度が強くなるほど増加し,また,稈を被陰する同種の葉のバイオマスが多いほど減少することが明らかとなった.この結果から,チシマザサの稈の寿命は局所的な光条件に応答して水平および垂直方向の両方にわたって変動していることが,本林分において示唆された.



種類: 短報/Socioecnomics, Planning, and Management
Title: From joint forest management to more smallholder-based community forestry: prospects and challenges in Java, Indonesia
巻頁: J For Res 24 (6): 371-375
題名: 共同森林管理からより小農ベースのコミュニティ林業へ: インドネシア、ジャワ島での可能性と課題
著者: 大田真彦
所属: 九州工業大学教養教育院
抄録: 本研究は、近年のインドネシアのジャワ島を事例として、どのように、林野行政主導の共同森林管理から、より小農ベースのコミュニティ林業への移行が可能になるのかについて、示唆を提供する。P.39 2017スキームは、ジャワ島の林業公社(SFC)管区でのコミュニティ林業アプローチであり、既存の共同森林管理プログラムと比べて、小農がより大きなイニシアティブを担う。本研究では、P.39 2017スキームに関する制度分析と村落事例研究を実施した。林業公社の現場森林官による初期の反感と抵抗は、プロセスの進展に伴い緩和されていた。約半数の小農のインタビュー回答者は、より強固な林地保有の確実性を、本スキームから期待していた。しかし、約1/3の回答者は、スキームに関する知識がなく、また、関心のある者であっても、スキームの具体的な規制に関する知識を欠いていた。小農による林地の不法開墾の複雑な現実も確認された。これらの結果は、1)上官の理解と積極的な態度が民主的な移行を促進し得ること、2)既存の実態上の林地利用を実施過程で考慮に入れるべきであること、を示唆している。最初のステップは、全ての参加者に対し、必要な情報をリソースを入手可能とすることである。また、既存の複雑な林地開墾の状況を考慮に入れた上で、公正で現実的な植林を保証する統治体制を確立すること、そして、財政的・技術的リソースを確保するため、各種ステークホルダーの関与を促進することも重要である。



種類: 短報/Socioecnomics, Planning, and Management
Title: Allometric equations for predicting the aboveground biomass of square bamboo, Chimonobambusa quadrangularis
巻頁: J For Res 24 (6): 376-381
題名: シホウチクにおける地上部バイオマス推定のためのアロメトリ式
著者: 井上昭夫,越河一樹,佐藤太裕,島 弘幸
所属: 近畿大学農学部
抄録: シホウチクにおける地上部バイオマス推定のためのアロメトリ式を作成した.20本のシホウチクを伐採し,稈と枝葉におけるバイオマスを計測した.シホウチクにおける地上部バイオマスは128 gから2,075 gの範囲に分布しており,平均は910 gであった.地上部バイオマスの推定においては,胸高直径(D)の方が,稈高(H)やD2Hといった他の変数よりも実用的であることがわかった.バイオマスとDとのアロメトリ指数は,稈(2.258)において枝葉(1.262)よりも大きかった.地上部バイオマスの稈への配分は,Dの増大にともなって46 %から75 %へと増加し,この割合は他のタケに比べて低かった.このことは,シホウチクにおける地上部バイオマスの推定において,枝葉が無視できない要素であることを示唆している.本研究において作成したアロメトリ式は,シホウチク林における生産力を評価したり,持続可能な管理戦略を立てたりする上で有用である.



種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title: Development of 15 novel microsatellite markers for a Haloxylon ammodendron (Amaranthaceae) using next-generation sequencing
巻頁: J For Res 24 (6): 382-385
題名: 次世代シークエンサーを用いたHaloxylon ammodendron (Amaranthaceae)の15マイクロサテライトマーカーの開発
著者: Nyam-Osor Batkhuu, Sang-Chul Kim, Jei-Wan Lee, Kyung-Nak Hong
所属: National University of Mongolia, Mongolia
抄録: Microsatellite primers were developed in Haloxylon ammodendron (Amaranthaceae). This species is an ecologically important component of the desert ecosystem and is one of the main tree species used for restoration. These markers will facilitate population genetic studies within Haloxylon ammodendron. Fifteen polymorphic microsatellite markers were developed from Ion torrent data.The four to twenty-six alleles were detected for each locus, the levels of observed and expected heterozygosity ranged from 0.375 to 0.933 and form 0.413 to 0.931, respectively. In 6 populations of plants, the levels of observed and expected heterozygosity ranged from 0.613 to 0.730 and from 0.633 to 0.676, respectively. These new microsatellite markers will be useful in future studies of the phylogeography, reproductive genetics, and population genetics of H. ammodendron.



種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title: Effect of preweeding size of competitive plants in a young hinoki (Chamaecyparis obtusa) plantation on their resprouting ability after weeding in a warm-temperate region
巻頁: J For Res 24 (6): 386-390
題名: 下刈り前の競合植物のサイズが下刈り後の萌芽発生に与える影響
著者: 今岡成紹,平田令子,光田靖,伊藤哲
所属: 宮崎大学大学院農学研究科
抄録: 暖温帯域におけるヒノキ幼齢林において,下刈り前の競合植物のサイズが下刈り後の萌芽発生に与える影響を明らかにするために,下刈り前の競合植物のサイズと下刈り後に発生した萌芽のサイズおよび発生数を調査した.さらに,下刈り前の競合植物の胸高断面積合計(TBA)と幹高が,下刈り後の萌芽の成長にどの程度寄与しているのかを推定することで,従属栄養に依存して萌芽が成長する期間を検討した.その結果,下刈り前の競合植物のサイズ(胸高断面積合計)と,下刈り後に発生した萌芽のサイズ(幹高とD2H:DBH2×幹高)との間には正の相関は見られなかった.これらの結果は,萌芽の成長に対する親株の効果は,萌芽の成長の早い段階で減少していたことが関係したと考えられた.このことは,萌芽幹が従属栄養によって成長する期間は,下刈り後のかなり早い段階に限られることを示す.一方、下刈り前の競合植物の胸高断面積合計は,萌芽の発生数に対して正の効果を持っていた。このことは,競合植物のサイズの増加は下刈り後の萌芽発生数を増加させ,その後の下刈り時の誤伐をまねいたり,下刈りにかかる労力や時間を増加させることにつながるかもしれない。



種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title: Forest dieback proceeds rapidly around the coastal lake Sugari-oike in Owase City, Japan
巻頁: J For Res 24 (6): 391-395
題名: 三重県尾鷲市の海跡湖須賀利大池で急速に進行中の森林枯死
著者: 平山大輔,伊藤洸亮,山本和彦,藤井伸二
所属: 三重大学教育学部
抄録: 三重県尾鷲市の須賀利大池(国指定天然記念物)は,およそ3,300年から3,500年前に海から隔てられて形成された海跡湖である.この湖岸で近年急速に進行している樹木枯死の要因を解明するために,水際と陸側に調査区を設け,種組成,林分構造,樹木の枯死率を3年間調査した.また,湖の水質と1年間の水位変動も調査した.樹木の枯死には,樹種の偏りも個体サイズの偏りもみられなかった.水際での枯死率は,一般的な照葉樹林で報告されている値よりも著しく高く,10% yr-1を超えた.一方,陸側での枯死率は水際よりも低く,2.8% yr-1であった.調査期間を通じて陸側調査区の胸高断面積合計(basal area)はわずかに増加したものの,水際調査区では,高い枯死率を反映して低下した.日ごとの水位変動は大きく,ピーク時には40 cm上昇した.水質は富栄養の状態にあったが,約20年間変化しておらず,最近の枯死の要因とは考えられなかった。水質そのものではなく,水際の樹木の冠水期間が増加している可能性が考えられるが,その検証にはさらなる調査が必要である.



種類: 短報/Forest Health
Title: A report of dieback and mortality of elm trees suspected of Dutch elm disease in Hokkaido, Japan
巻頁: J For Res 24 (6): 396-400
題名: 北海道で発生したニレ類立枯病が疑われるハルニレの枝枯れと枯死被害の報告
著者: 宮本敏澄,升屋勇人,小泉章夫,山口岳広,石原誠,山岡裕一,岡根泉,志津木眞理子,大原昌宏
所属: 北海道大学大学院農学研究院
抄録: 2014〜2016年にかけて札幌市内の北海道大学キャンパスにおいて、突然複数のハルニレの枯死木が発生した。枯死あるいは瀕死木は最大距離で300m程度の範囲に集中しており、推定樹齢は36〜186年であった。1950年代に北海道で深刻なハルニレの枯損被害の発生したことが記録に残されているが、当時はニレ類立枯病菌の存在は確認されていなかった。今回の被害で枯死あるいは瀕死状態となったハルニレの樹皮下やキクイムシの坑道からニレノオオキクイムシの成虫や幼虫が確認された。さらに、坑道から得られた材部やニレノオオキクイムシからはニレ類立枯病菌であるOphiostoma ulmi と O. novo-ulmi が分離・同定された。キクイムシの坑道が認められたハルニレの周辺には枝先の葉が萎れ、枝が枯れたハルニレが多数認められたことから、ニレ類立枯病による被害が疑われた。