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Journal of Forest Research, Vol.24, No.5(2019年10月)

種類: 原著論文/Socioecnomics, Planning, and Management
Title: Policy effects for forest conservation and local livelihood improvements in Vietnam: a case study on Bach Ma National Park
巻頁: J For Res 24 (5): 267-274
題名: ベトナムの森林保護および地域住民の生計向上における政策的効果:バックマー国立公園の事例
著者: 岩永青史,横山繁樹,Dang Thai Duong,Nguyen Van Minh
所属: 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所
抄録: 2012年,ベトナム政府は森林保護とバッファーゾーンに居住する地域住民の生計向上を目的とした首相決定第24号を施行した.このプログラムでは地域住民が国立公園内への侵入およびそこでの林産物採取を止めることを条件に,地域のニーズに即して住民によって作成された年間計画に沿った金銭的支援が行われる.本研究では,国立公園管理における意思決定という形での地域住民の政策への参加に焦点を当て,プログラムの森林保護と地域住民の生計向上における効果と限界を明らかにした.バックマー国立公園事務所とトゥアティエンフエ省ナムドン県の関係する5つのコミューン事務所,そしてバッファーゾーンに居住する95世帯に対して聞き取り調査を実施した.その結果,村に計画・実施の裁量が大きく与えられているため,村の行政能力が森林保護の成否を決定する重要な要因であることが明らかになった.国立公園に侵入していない世帯が対象となるなど,不適当な事例も見られ,政策の目的は必ずしも達成されていなかった.国立公園事務所や県行政は,地域住民の需要のみを考慮するのではなく,支援を効果的に活用する管理能力があるかどうかを判断することも重要である.森林保護と適切な国立公園管理のためには,ボトムアップ型の意思決定も重要ではあるが,その意思決定の過程における国立公園事務所や県行政の適切で補完的な参画もまた不可欠の条件であると結論付けた.



種類: 原著論文/Forest Environment
Title: Biochar amendment changes the effects of nitrogen deposition on soil enzyme activities in a Moso bamboo plantation
巻頁: J For Res 24 (5): 275-284
題名: モウソウチク林におけるバイオチャーの添加が窒素負荷による土壌酵素活性への影響に与える効果
著者: Chunju Peng, Quan Li, Zhiting Zhang, Zhizhuang Wu, Xuzhong Song, GuomoZhou, Xinzhang Song
所属: Zhejiang A&F University, China
抄録: Soil enzymes are the metabolic motors for soil organisms. However, how soil enzymes respond to biochar amendment in plantations under increasing chronic atmospheric nitrogen (N) deposition is poorly understood. In this study, we analyzed the effects of N deposition (30, 60, and 90 kg N ha−1 yr−1 for treatments N30, N60 and N90, respectively) and biochar amendment (20 and 40 t ha−1 for treatments BC20 and BC40, respectively) on six soil enzyme activities (β-fructofuranosidase, cellulase, nitrate reductase, nitrite reductase, urease, and acid phosphatase) in a Moso bamboo (Phyllostachys edulis (Carrière) J. Houz) plantation. We found that N deposition significantly decreased the β-fructofuranosidase activity in the N30 and N90 treatments (P < 0.01) and urease activity in N90 (P < 0.001), but not those of the four other tested enzymes (ns). BC40 amendment alone significantly decreased urease and acid phosphatase activities (P < 0.01). Biochar amendment neutralized the negative effect of N deposition on urease activity. Our results suggest that N addition could decrease soil pH to reduce urease activity and change the limiting factor for β-fructofuranosidase activity from N to carbon (C). The adsorption capability of biochar to soil N nutrient elements could decrease urease activity to limit the utilization of N; meanwhile, biochar addition could aggravate phosphorus (P) limitation to repress acid phosphatase activity. However, biochar addition could increase soil pH to promote urease activity. These findings provide new insights into the effects of biochar amendment on soil enzyme activities in plantations that suffer from the effects of N deposition.


種類: 原著論文/Forest Environment
Title: Effects of thinning on canopy transpiration of a dense Moso bamboo stand in western Japan
巻頁: J For Res 24 (5): 285-291
題名: 高稈密度モウソウチク林の間伐が林分蒸散に与える影響
著者: 市橋隆自,小松光,久米朋宣,篠原慶規,鶴田健二,大槻恭一
所属: 九州大学宮崎演習林
抄録: 本研究ではモウソウチク林の勢力拡大が地域の水動態に与える影響及びその有効な管理方法に関する知見を得ることを目的とし,高密度化したモウソウチク林の間伐に伴う林分蒸散量(Ec)の変化を評価した.Ecの評価は樹液流計測に基づいた.間伐は非選択的に行い,1年目の夏期に調査地の稈数を45%切除し(1次間伐),翌春,多数の新稈が生じた後で,同数程度の稈を再び切除した(2次間伐).1次間伐の直後から,同じ気象条件(蒸発散位,Ep)下における林分平均樹液流束密度(Js)は60%程度上昇し,結果Ecは間伐前の90%に達した.翌年の2次間伐の後,新たに生じた当年稈のJsは,同じ Epに対して間伐前の2倍程度の高い値を示したが,その他の古い稈ではJsは再び間伐前のレベルまで低下した.全体として,2年目のEcは間伐前の78%に相当した.本研究の結果から,高密度の竹林からの水消失を制御するために,軽度の間伐では顕著な効果が生じないこと,従って強度の間伐が必要であることが示唆された.竹林の間伐に対して,個々の稈の水利用は大きく変化し,一方で林分全体の水利用の変化は比較的小さかった.この過程は,タケがクローン植物であり,竹林を構成する個々の稈同士が構造的,生理的につながっていることと関係があると思われた.



種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences
Title: Relationship between the composition and distribution of nutritional substances, secondary metabolites, and internal secretory structures in the bark tissues of Larix gmelinii var. japonica, L. kaempferi, and their F1 hybrid and susceptibility to vole herbivory
巻頁: J For Res 24 (5): 292-302
題名: グイマツ、カラマツ、およびそれらの雑種F1の樹皮組織における栄養物質、二次代謝物、内分泌構造の組成および分布と、野ネズミの植食に対する感受性との関係
著者: 関 一人、折橋 健、斎藤直人、来田和人、中田圭亮
所属: 北海道立総合研究機構 林産試験場
抄録: グイマツ(Larix gmelinii var. japonica)、カラマツ(L. kaempferi)、グイマツ雑種F1(L. gmelinii var. japonica × L. kaempferi)のリチドーム(外樹皮)および二次師部(内樹皮)における、栄養物質(可溶性糖、デンプン、タンパク)、二次代謝物(テルペノイド、フェノール性化合物)の組成および分布、内分泌構造(樹脂道、樹脂嚢)の長さ、面積、密度について、これらカラマツ類3分類群の北海道におけるヤチネズミによる植食に対する感受性に関する要因を明らかにするために調査した。これらカラマツ類3分類群の両樹皮組織において、ほとんどの栄養物質の含有量は有意な差は無かった。グイマツおよびグイマツ雑種F1の両樹皮組織において、carane型モノテルペノイドおよびlabdane型ジテルペノイドの含有量は、カラマツと比較して、有意に高かった。グイマツの両樹皮組織におけるフェノール性化合物の含有量は、カラマツと比較して、有意に低かった。グイマツ雑種F1の両樹皮組織におけるほとんどの二次代謝物の含有量は、グイマツとカラマツの中程であった。グイマツおよびグイマツ雑種F1の両樹皮組織において、テルペノイドを含有する、樹脂道および樹脂嚢の面積および密度は、カラマツと比較して、有意に高かった。これらの結果より、グイマツおよびグイマツ雑種F1では、ヤチネズミによる植食に対する樹皮組織における化学的防御物質として、高含有のモノテルペノイドおよびジテルペノイドがその役割を果たしていることが示唆された。


種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences
Title: Time trends of genetic parameters and genetic gains and optimum selection age for growth traits in sugi (Cryptomeria japonica) based on progeny tests conducted throughout Japan
herbivory
巻頁: J For Res 24 (5): 303-312
題名: 日本全国の次代検定林から得られたスギ成長形質の遺伝パラメータ、遺伝獲得量の経時変化および最適選抜齢
著者: 平岡裕一郎,三浦真弘,武津英太郎,井城泰一,山野邉太郎,栗田学,磯田圭哉,久保田正裕,高橋誠
所属: (国研)森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター
抄録: スギの遺伝的改良効果に関する基礎的情報を提供するために、日本全国にある429の次代検定林から得られたデータに基づいて、成長形質(樹高及び胸高直径)の遺伝パラメータ、直接選抜および間接選抜により得られる遺伝獲得量、最適選抜齢を推定した。樹高と胸高直径の狭義の遺伝率の林齢毎の中央値の範囲は、それぞれ0.289〜0.445と0.235〜0.276となった。樹高の遺伝率は、林齢15年以上で有意に高くなった一方で、胸高直径の遺伝率には林齢による有意な差はなかった。林齢間の遺伝相関の中央値は、ペアとなる林齢差が同じ場合に類似し、樹高と胸高直径とも林齢差が大きくなるにつれて低下する傾向があった。目標林齢を30年と想定した場合、年あたり遺伝獲得量が最大となる林齢は、樹高で5年、胸高直径で10年となった。5年次の樹高は、次代検定林により大きく異なるため、選抜の誤りが発生する可能性がある。それゆえ、スギでは目標林齢の1/3での早期選抜が効率的と考えられた。


種類: 原著論文/Forest Health
Title: Influence of oviposition timing on offspring diapause and growth in Monochamus alternatus endai (Coleoptera: Cerambycidae)
巻頁: J For Res 24 (5): 313-319
題名: マツノマダラカミキリMonochamus alternatus endai (鞘翅目:カミキリムシ科)の産卵時期が仔の休眠と成長に及ぼす影響
著者: 富樫一巳
所属: 東京大学農学生命科学研究科
抄録: マツノマダラカミキリの1亜種Monochamus alternatus endaiは,日本と韓国におけるマツ材線虫病の主要な媒介者である。本種の幼虫は終齢で休眠を誘起する。雌成虫が経験した季節的環境が仔の休眠,成長,発育に及ぼす影響を明らかにするために,6月から9月まで,屋外の自然条件下で12または4期間(各期間は6または7日)に渡って,日本産の2系統の成虫にアカマツ丸太に産卵させた。それらの仔を25℃で12時間明期12時間暗期(LD 12:12 h)または16時間明期8時間暗期(LD 16:8 h)の光周期の下で17週間飼育した後,休眠幼虫をLD 12:12 hで10℃の条件下に8または16週間おき,最後にLD 12:12 hで25℃の条件下に移した。雌成虫の環境は仔の休眠に影響を与えなかったが,雌成虫が経験した季節初期の環境は,季節後期の環境より,仔である幼虫と成虫の体重を増加させた。休眠を覚醒した幼虫の割合は,16週間の低温処理より8週間の低温処理で小さく,実験室条件下では休眠覚醒に十分な低温処理期間が必要であることを示した。休眠を覚醒した幼虫の割合はまた,低温処理前にLD 12:12 hに曝されたときよりLD 16:8 hに曝されたときに小さく,光周期LD 16:8 hはLD 12:12 hより休眠を強く(深く)することが示された。そして,そのことによって,初夏の休眠前の幼虫は強い休眠を誘起し,初秋のそれらは弱い休眠を誘起することが示唆された。


種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title: Evaluation of cutting diameter and hormones for clonal propagation of Bambusa balcooa Roxb.
巻頁: J For Res 24 (5): 320-324
題名: タケ(Bambusa balcooa Roxb.)のクローン増殖における稈の直径と植物ホルモンの影響の評価
著者: Jay Prakash Mishra, Deepti Bhadrawale, P. K. Rana, Yogeshwar Mishra
所属: Tropical Forest Research Institute, India
抄録: The effects of cutting diameter and exogenous hormone treatments on rooting were studied in this experiment to improve the efficiency of cutting propagation in Bambusa balcooa. The cuttings of different diameter class and hormone types significantly affected rooting percent. The cuttings of 12-14 cm diameter class treated with 200 ppm indole-3-butyric acid (IBA) recorded with optimum rooting success of 88.4% followed by 10-12 cm and 8-10 cm diameter class. Similarly, the cuttings of 12-14 cm diameter class also recorded with maximum shoot length of 204 cm treated with IBA followed by 10-12 cm and 8-10 cm diameter class produced shoot of 132.2 cm and 93.75 cm length, respectively. However, the cuttings of 8-10 cm diameter class with IBA treatment ranked next to 12-14 cm diameter class and recorded with 20.91 and 35.62 cm for root number and root length, respectively. In the present paper, the effect of cutting diameter on rooting efficiency is discussed and an optimal cutting diameter is suggested, which provide valuable information for propagating Bambusa balcooa.


種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title:  Detection of genetic segregation in sika deer (Cervus nippon) by tandem repeat variations in the mitochondrial DNA D-loop region
巻頁: J For Res 24 (5): 325-329
題名: ミトコンドリアDNA D-loop領域内のタンデムリピート多型によるニホンシジカ(Cervus nippon)の遺伝的分化の検出
著者: 畑尚子,岡崎千尋,小西清夏,吉岡さんご,久保田将之,新井一司,溝口康
所属: 東京都農林総合研究センター 緑化森林科
抄録: ニホンジカ(Cervus nippon)は,食害により森林植生に深刻な被害をもたらしている.関東南部地域においても,ニホンジカは植栽木を食害し,伐採後の再造林を妨げている.このような地域においてニホンジカの個体数を適切に管理するためには,ニホンジカの動態を把握するための遺伝マーカーが必要となる.これまで,ミトコンドリアD-loop領域に基づき,関東山地と丹沢山地の間のニホンジカ個体群が遺伝的に分化していることを明らかにした.本研究では,D-loop領域内のタンデムリピート配列に着目することにより,有益な遺伝マーカーを探索することを目的とした.東京都,埼玉県,山梨県,神奈川県で採取されたニホンジカ145個体について,タンデムリピート領域を解析した結果,関東南部において16のタンデムリピートハプロタイプが存在することを明らかにした.
これらのタンデムリピートハプロタイプは,これまで特定された9つのD-loopハプロタイプのうち5つを細分化し,さらにそのうち1つのD-loopハプロタイプについて,新たに遺伝的分化を検出した.このことから,タンデムリピートハプロタイプは,D-loopハプロタイプよりも高感度で遺伝構造が検出可能であることがわかった.さらに,タンデムリピートの繰り返し数は4回から11回と,高い多型を示した.このことは,関東山地の個体群の特有な歴史的背景によるものである可能性がある.このように,高い多型を有するタンデムリピートハプロタイプは関東南部地域のニホンジカの動態を把握するための有用な指標であることが明らかとなり,また他の地域のニホンジカの遺伝構造の分析にも応用可能と考えられる.


種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title: Development of highly polymorphic genomic microsatellite markers and their application to gene flow in a natural population of Abies firma
巻頁: J For Res 24 (5): 330-334
題名: モミの多型性ゲノムマイクロサテライトマーカーの開発と天然集団における遺伝子流動への適用
著者: 岩泉正和,大谷雅人,那須仁弥,高橋誠
所属: (国研)森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター関西育種場
抄録: モミ(Abies firma)は近年天然集団が減少しており遺伝子資源の保全対象樹種となっている。各集団レベルでの遺伝的動態を理解するうえで重要な、遺伝子流動の評価を行うためには、分子マーカーリソースの拡充が必要である。本研究では、モミのゲノムマイクロサテライト(SSR)マーカーを15マーカー開発し、天然集団内の散布種子に対して胚と雌性配偶体を併用するDNA分析法に基づき、花粉親と種子親を正確に区別した親の特定解析へ適用した。開発した15マーカーは多型的であり、ヘテロ接合体率の期待値の平均は0.74以上を示した。親子解析に適当と思われた7マーカーを用いた結果、上記の両親を区別した親子解析が可能であり、雄性および雌性配偶子による集団外(近接集団)からの遺伝子流動を推定することが可能であった。今回開発したゲノムSSRマーカーは、既存マーカーと組み合わせて効率的なマーカーセットを構築することにより、親子解析に強力な高い候補親排斥率を実現し、遺伝子流動解析および今後の当該樹種の保全遺伝学研究を進めるうえで有効であると考えられた。