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Journal of Forest Research, Vol.24, No.2(2019年4月)

種類: 原著論文/Socioeconomics, planning, and management
Title: Forestry machine sharing system in self-employed forestry
巻頁: J For Res 24 (2): 71-76
題名: 自伐林業における伐出機械の共同利用
著者: 吉田美佳,興梠克久
所属: 筑波大学生命環境系
抄録: 森林所有者が伐出工程において森林管理へ参画することが自伐林業である。社会的、地縁的動機によって他の森林所有者を森林管理へ参画させる可能性があり、自伐林業とその協同作業に注目が集まっている。本稿は自伐林業の機械化方法を明らかとするため、その一方法である車両系機械の共同利用について分析した。モデルは静岡県のある自伐林家協業体の取組である。この協業体では、伐採作業の生産性を高めるため、自治体と協力して作業道開設機械と伐出機械の共同利用を行っている。2000年から2013年の共同利用データを分析し、一般レンタルの場合と比較したところ、その伐出費用はレンタルしたときとほとんど変わらなかった。共同利用の利点は、維持管理費を払った後の共同利用費用の残高が協業体内に蓄積され、協業体の経済的独立性を高め、持続的な活動への投資を可能にすることである。機械の損傷、作業の丁寧さ、補修頻度と維持管理費用の関係については今後調査が必要である。この共同利用システムを水平展開する場合、機械の選択、補助金の割合、共同利用費用の決定が成否を分けるため、協業員と自治体との連携が欠かせない。モデル協業体では機械稼働率が低く、今後も補助金が必要であることが明らかとなった。機械稼働率を上げるにはトラクタ等多目的に使える機械の導入が挙げられる。また、補助金がない場合は一般レンタルによる機械化も一方法である。


種類: 原著論文/Socioeconomics, planning, and management
Title: Effects of managed forest versus unmanaged forest on physiological restoration from a stress stimulus, and the relationship with individual traits
巻頁: J For Res 24 (2): 77-85
題名: 森林管理の有無が生理的回復に与える効果および個人特性の影響
著者: 齋藤暖生,堀内雅弘,高山範理,藤原章雄
所属: 東京大学富士癒しの森研究所
抄録: 森林浴はポジティブな生理的反応を引き出し,ストレスを軽減しうる.本研究は,ストレス刺激からの回復に森林の管理状態と個人的な特性がどのように影響するかを検討した.実験区として植生の密生した非管理区と,間伐等の施業により見通しをよくした管理区を用意し,男性17人を被験者とする実験を実施した.NEO-FFIおよびBDI-IIを用いて被験者の性格特性とうつ傾向を把握した.実験において,被験者は各自の最大握力の30%強度で握力計を2分間握るストレス刺激(静的運動)を経験したのち,15分間各実験区内での座観を行った.被験者の血圧指標と唾液中のコルチゾールは刺激後に上昇したが,それらの値は座観後に有意に減少し,その現象の程度は非管理区よりも管理区において有意に大きかった(p<0.05).心拍数はいずれの実験区においても座観中に変化することはなかった.副交感神経活動活性度の指標とされる心拍変動の低周波/高周波成分比(LF/HF比)は,座観終了前5分間において管理区では減少したのに対して,非管理区では有意に上昇した(p<0.05).ストレス刺激直後と座観後の収縮期血圧の変化は,非管理区において被験者の神経症傾向およびうつ傾向の値との関係性が認められたが,管理区においては認められなかった.以上から,管理されていない森林よりも管理された森林においてより効果的にストレスからの生理的な回復が期待できること,こうしたポジティブな効果は一部の個人特性とも関係していることが示唆された.これらの知見は,今後の森林管理にとって有益な情報となる.


種類: 原著論文/Forest Environment
Title: Wildfire burned soil organic horizon contribution to runoff and infiltration in a Pinus pinaster forest soil
巻頁: J For Res 24 (2): 86-92
題名: 森林火災で燃焼した土壌有機物層がフランスガイカンショウ林の土壌における流出や浸透へ果たす役割
著者: Cristina Fernández, Teresa Fontúrbel, José A. Vega
所属: Centro de Investigación Forestal, Spain
抄録: The immediate effects of a low soil burn severity wildfire on hydrological parameters and soil erosion were evaluated in a Pinus pinaster Ait. stand by means of rainfall simulations (140 mm h−1). The unburned forest soil was repellent at the mineral surface (100%) at the same degree as the burned ones. The diameter of soil aggregates and the particle size distribution did not differ between burned and unburned soils. The mean storage capacity of the unburned soil organic layer was 0.94-4.85 mm m−2 from the litter to the duff layers. The corresponding values for the capillary capacity were from 7.11 mm to 6.72 mm. In the burned plots, these figures were 1.42 mm m−2 for the mean storage capacity and 5.9 mm for the capillary capacity. The burned plots recorded significantly lower infiltration rates (29 mm h−1) and higher runoff (111 mm) and sediment yields (20.8 g m− 2) compared to the unburned controls. The characteristics of the soil organic layer significantly affected the infiltration rate and runoff volume. In a subsequent experiment, the remaining organic layer was completely removed and a new rainfall simulation was carried out. In unburned soils decreases in the infiltration rate and increases in the runoff volume were recorded with no significant changes in the sediment yields. In the burned plots, removal of the duff layer only led to a significant increase in soil erosion (20.8-51.4 g m−2). The above information could be used to help plan post-fire stabilization actions.

種類: 原著論文/Forest Health
Title: Spatial and temporal distribution of Bursaphelenchus xylophilus inoculated in grafts of a resistant clone of Pinus thunbergii
巻頁: J For Res 24 (2): 93-99
題名: 1クローンの抵抗性クロマツ接ぎ木苗における接種したマツノザイセンチュウの樹体内分散とその経時変化
著者: 中島剛,井城泰一,山野邉太郎,中村克典,相川拓也
所属: 青森県産業技術センター林業研究所
抄録: マツ材線虫病の未被害地域において,既存のクロマツ海岸林に抵抗性品種由来の実生苗の補植を進めることは,この地域の海岸林を維持する手法の一つとして重要である.この実生苗の種子を生産する採種園の整備には,接ぎ木増殖に用いる抵抗性品種の穂木が必要であるが,この品種は人為的なマツノザイセンチュウ(マツ材線虫病の病原体)の接種により選抜されるため,樹体内に病原体が分散,生存している可能性がある.本研究では1クローン(遊佐155)の抵抗性クロマツ接ぎ木苗に接種したマツノザイセンチュウの分散,生存について,接種した7ヶ月後と19ヶ月後に枝齢別に調査した.生存個体数調査とDNA検出調査の結果,接種したマツノザイセンチュウの分散,生存の大部分は穂木の幹と台木に限定されていた.接種後7ヶ月経過した穂木の枝では低い頻度でマツノザイセンチュウのDNAが検出されたが,生存個体は確認できなかった.一方,接種後19ヶ月経過した穂木の枝からはマツノザイセンチュウのDNAと生存個体は確認できなかった.これらのことから,この抵抗性品種(遊佐155)では,接種以降の成長期に伸長したシュートがマツノザイセンチュウに感染している可能性は極めて低いことが示唆された.これらのシュートはマツノザイセンチュウ非感染な穂木として増殖に用いることが可能であるため,未被害地域に病原体を持ち込むことなく抵抗性品種の採種園が整備できるだろう.

種類: 短報/Socioeconomics, planning, and management
Title: Productivity of a single-grip harvester in a beech dominated stand: a case-study under Bavarian conditions
巻頁: J For Res 24 (2): 100-106
題名: ブナ優占林分におけるシングルグリップハーベスタの生産性:バイエルン州における事例
著者: Eric R. Labelle, Johannes Windisch, Philipp Gloning
所属: Technische Universitat Munchen
抄録: Forest conversion from spruce dominated forests to close-to-nature stands with considerable proportion of deciduous tree species is of high importance in Germany. During mechanized harvesting operations, the complex tree architecture and high wood density of deciduous tree species, in particular of beech, pose a challenge during the processing phase. Usually more powerful machinery is required than for softwood stands of comparable age and tree dimensions. This pilot-study assessed the productivity of a TimberPro 620-E single-grip harvester with a LogMax 7000C harvesting head in a mature mixed-wood stand located in southern Germany. A total of 82 trees previously inventoried were harvested using one of two silvicultural treatments (clear-cut or selective-cut). A conventional time and motion study was performed using a hand-held computer on the selected trees that were harvested. Results demonstrated considerable differences in percent distribution of the harvesting related work cycle elements between the two tested silvicultural treatments, particularly with machine movement. Based on single-tree recovered volume estimations, average harvesting productivity during the clear-cut was 31% higher for spruce compared to beech trees. During the selective-cut, average harvesting productivity was 33.9 m3/PMH0 for spruce compared to 23.4 m3/PMH0 for beech, thus indicating a 45% higher productivity in spruce recorded during the pilot study.

種類: 短報/Forest Environment
Title: Marked difference of rainfall partitioning in an unmanaged coniferous plantation with high stand density
巻頁: J For Res 24 (2): 107-114
題名: 非管理高密度針葉樹人工林の雨水配分の特異性
著者: 鄭聖勲,大槻恭一,井上昭夫,篠原慶規
所属: 九州大学大学院生物資源環境科学府環境農学専攻
抄録: 近年、日本では林業不振の影響等で非管理針葉樹人工林が増加している。一般的に針葉樹人工林の植栽本数は1ha当たり2500本以上である。しかし、この一般的な植栽密度の非管理針葉樹人工林における雨水配分に関する研究事例は少ない。本研究では、九州大学福岡演習林高田サイトの32年生非管理高密度ヒノキ人工林 (2500本/ha) において1年間雨水配分の測定を行い、本研究および従来の研究で報告されている過去36件の雨水配分率と比較した。本サイトでは、林外雨量2248.6 mm に対し、樹冠通過雨量は1068.4 mm(47.5 %)、樹冠遮断量は754.9 mm(33.6 %)、樹幹流量は425.3 mm(18.9 %)であった。他の針葉樹人工林と比較した結果、本研究の樹冠通過雨率は最小で特異的に小さく、樹冠遮断率および樹幹流率は最大で特異的に大きかった。このように、非管理高密度針葉樹人工林では、樹冠通過雨率や樹冠遮断率だけでなく、樹幹流率も特異的な値を取ることが示された。


種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences
Title: Allometric equations for estimating the aboveground biomass of bamboos in northern Laos
巻頁: J For Res 24 (2): 115-119
題名: ラオス北部における主要なタケの地上部バイオマス推定式
著者: Singkone Xayalath,広田勲,富田晋介,中川弥智子
所属: 名古屋大学大学院生命農学研究科
抄録: ラオス北部ではタケは広くみられ,地域住民の暮らしと密接に関連している.本研究では,その地域の主要な11種のタケを対象に,稈のサイズ(胸高直径[DBH]とDBH2H;Hは稈長)から各種の地上部バイオマスを推定するための相対成長式を作成した.また,11種をまとめたデータから作成した共通相対成長式の適用性についても検討した.各種のアロメトリー関係の多くは有意であった.くわえて,稈や地上部のバイオマスに対する共通相対成長関係も特に高い相関を示した(r2 > 0.96)ことから,種不明のタケや相対成長式がないタケが混交するような竹林でのバイオマス推定には,共通相対成長式が有用であることが示唆された.また,DBHとDBH2Hを用いた地上部バイオマス推定の当てはまりの良さに大きな差は見られなかったため,現場でのバイオマス推定にはDBHを使うのが実用的であろう.本研究で作成した主要なタケの各種および共通相対成長式によって,ラオス北部の竹林における炭素の蓄積量や循環に関する今後の研究の進展が期待される.

種類: 短報/Forest Health
Title: Fungi associated with Cryphalus rhusi (Scolytinae; Coleoptera) infesting lacquer tree, Toxicodendron vernicifluum
巻頁: J For Res 24 (2): 120-124
題名: ウルシに繁殖するツタウルシノコキクイムシに随伴する菌類
著者: 升屋勇人,遠藤力也,安藤裕萌,田端雅進
所属: 国立研究開発法人森林総合研究所東北支所
抄録: ウルシに繁殖しているツタウルシノコキクイムシに随伴する菌類について調査した。またウルシへのキクイムシの潜在的影響を明らかにする一つの段階として、分離された菌について病原性を評価した。枝から脱出した新成虫から3種の菌類、Yamadazyma sp., Fusarium sp.、Penicillium pinophilumが分離された。これらの中で、Yamadazyma sp.が全ての成虫から分離されたことから密接に関係していると思われた。病原性試験ではFusarium sp.が対照区よりも僅かに大きい病斑(~2mm)を形成したが、Yamadazyma sp.では対照区と変わらない壊死斑であった。よってツタウルシノコキクイムシと随伴菌はウルシにとって重要な病虫害にはならないと考えられた。