1. トップページ
  2. 日本森林学会大会
  3. 第126回日本森林学会大会
  4. 第126回日本森林学会大会・テーマ別シンポジウム(企画シンポジウム)一覧

第126回日本森林学会大会・テーマ別シンポジウム(企画シンポジウム)一覧

T1 大気環境変化にともなう森林の生産性と分布の予測
Forest productivity and vegetation under changing atmospheric environment

コーディネータ: 渡辺誠(東京農工大学)

27日 午後

趣旨: 産業革命以降、化石燃料の消費拡大に代表される人間活動によって、森林を取り巻く環境は劇的に変化している。特に大気CO2濃度の増加やそれに伴う気候変動、窒素を始めとした酸性物質の沈着量の増加、PM2.5を始めとした微粒子、そして大気汚染物質である対流圏のオゾンが森林生態系に与える影響は世界的に懸念されている。たとえば今世紀末に予測されている濃度のオゾンによって多くの陸域生態系の生産性が30%以上低下することがモデルシミュレーションから予測されている。またドイツで行われた欧州ブナ成木を対象とした8年間に渡るオゾン暴露実験によって、幹の成長量が約40%低下したことが報告されている。数十年の長い年月が必要とされる木材の生産や環境資源としての森林の持続的利用のためには、これら大気環境の変化が樹木の生育や森林の生産性に与える影響を明らかにする必要がある。さらに、大気環境の変化に伴って葉からの揮発性有機化合物の放出量が変化する、といった森林から大気へのフィードバック影響の解明も重要な視点である。本シンポジウムでは樹木生理生態学を基礎として、大気環境に関するモニタリング、実験的研究およびフィールド調査、さらには森林や樹木への影響評価手法に関する研究等について最新の知見を持ち寄り、日本をはじめとしたアジア地域の森林に対する大気環境の変化の影響と将来の展望を議論する。

T2 持続可能な森林管理のための保残伐施業-日本への導入に向けて-
Retention forestry as a method to manage forest sustainably: toward its application to Japan

コーディネータ: 尾崎研一(森林総合研究所) 長坂晶子(北海道立総合研究機構林業試験場) 対馬俊之(北海道立総合研究機構林業試験場) 山浦悠一(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨: 北米主導で90年代から始まった保残伐(retention forestry)は現在、環境に配慮した森林伐採手法として世界的に注目され、大きな普及を見せている。例えば多くの国で、保残伐は認証材を出荷するための条件の一つとなっている。主伐時に生立木あるいは枯損木を維持するという本施業の検証実験は、現在世界各地で行われている。しかし、保残伐への注目度は東アジアでは低く、実証実験も行われていない。一方で、日本では1,000万haを超す人工林が伐期を迎え、低迷する木材自給率の向上が期待されている。伐採に伴う環境への負のインパクトを低減する、環境調和型の伐採手法の開発が早急な課題である。
 このような中、北海道のトドマツ人工林(道有林)において、保残伐の有効性を検証する東アジア初の大規模実験が昨年から始まった。本実験は、人工林の保残伐実証実験としては世界初のものである。針葉樹人工林に混交する広葉樹は動物群集の多様性を増加させることから、人工林に混交する広葉樹が本実験での保残対象である。現在、人工林は世界的に急速に拡大している。本実験の開始は、人工林林業と環境保全の両立に、日本が貢献するための第一歩である。
 本シンポジウムの目的は、北海道の保残伐実験を国内への保残伐導入のきっかけにすることである。まず、保残伐実験の概要、河畔生態系・水土保全機能との関係、開始に至るまでの経緯を説明する。これらは、他の地域で保残伐への注目度を上げ、検証実験を行うために大きな参考になるだろう。次に、実験を進めながら分かってきた、保残伐の現場での課題を、研究者と現場の実務者から紹介する。これにより、保残伐を応用する際に直面する課題が明らかにされる。最後に、日本における保残伐の応用・普及に向けて、保残伐の専門家からコメントをしていただく。これらから、日本への保残伐の導入について議論を行う。

T3 車両系機械化システムを活用した伐採・再造林作業を考える
Issues on harvesting and silviculture operations utilising ground-based forest machinery

コーディネータ: 佐々木尚三(森林総合研究所) 中澤昌彦(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨:国内の人工林資源の充実を背景に、木材生産の低コスト化や安全性の確保などが強く求められており、そのための機械化の推進が図られている。しかし、急速に進められる機械化に対して、土壌の撹乱や立木への損傷など負の問題も提起されており、また一方で今後増加が予想される皆伐-再造林を持続的に進めるために、造林コストの低減のためのさらなる機械化も考える必要がある。
 近年、全国各地の緩中傾斜地林分を中心に、ハーベスタなどの車両系機械を活用して、伐採作業の合理化、高生産性が実現され始めている。またブルドーザや油圧ショベルを利用した地拵も一般的になりつつある。さらにこれまで別工程で行われて来た伐採と造林作業を、上記のような機械化と組み合わせて同時期に行うことにより、全体のコスト低減を図る取組みが見られるようになってきた。
 このような新しい作業システムを推進させ、効率や安全性などの改善を図るとともに、林分への悪影響や植栽時期が限定されることなどマイナスと考えられる要因を解消する必要がある。そのためには、これら伐採造林作業の機械化に関する諸問題についてさまざまな分野の視点から検討して、問題解決を図らなければならない。本シンポジウムでは、こうした機械化人工林管理に向けた各分野の研究や状況について報告を受けて、それらの情報を共有し、今後の方向性を見いだすことを目的とする。

T4 現代の育林経営の諸問題とビジネス化の展望
The problems of plantation forestry and the possibility to become forestry industry

コーディネータ: 餅田治之(林業経済研究所) 山田茂樹(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨:近年、我が国では、長期にわたる立木価格の低迷で、所有者の森林経営からの撤退が顕在化しています。一方で、国家財政が逼迫する中、森林整備や再造林の費用負担の在り方やその担い手について、国民共通の理解が求められていると言えます。そうした中、今日では世界の育林経営がビジネスとして展開し、第三者に経営信託されている実態もあります。振り返って、今日、わが国の木材市場では国産材が見直され、川下側の加工・流通システムについては、工場の大型化を背景として、外材と競争をしても引けを取らない生産・供給システムが形成されつつあります。しかし、木材を供給する川上側の森林所有とそれに基づく経営は依然として小規模・分散的で非効率のまま変わりなく、素材生産も間伐を主体とした生産形態が維持されているのが現状です。その結果、大型化・効率化を果たした川下側の生産システムと、従来のまま大きな変化のない川上側の生産システムの間のギャップは次第に大きくなってきていると言えます。本企画では、大型化を背景に定着しつつある川下側のビジネスモデルに対して、川上側についてはどのようなビジネスモデルを描くことができるか、あるいは描くべきか、その姿を考えることを目的としています。シンポジウムの構成は、企画の趣旨説明の後、超短伐期モデルのハンガリー、短伐期化が進行するアメリカ、NZ、補助金が無くなったフィンランド等の育林経営の実態について報告した上で、我が国で芽生えつつあるビジネス的な育林経営、経営信託の動きについて紹介し、我が国の育林経営の諸問題とビジネス化の展望を描きたいと考えています。なお、本企画は、JSPS科研費24580238 (研究代表餅田治之「川上側林業ビジネスモデルの定式化とそれに向けた政策のあり方に関する研究」)の助成を受けて実施するものです。

T5 木質バイオマスの中小規模熱利用の課題と展望
Issues and future outlook of small to medium scale heat utilization of the wood biomass energy

コーディネータ: 伊藤幸男(岩手大学) 相川高信(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
27日 午後
趣旨: 再生可能エネルギーの固定価格買取制度の施行により、木質バイオマス利用においても発電が注目され、全国で多数の計画が立案されている。一方で、木質バイオマスエネルギーが最も期待され、かつ実績のある利用方法は直接燃焼による熱利用である。中小規模の熱利用は、石油代替を進め、地域住民レベルへの経済波及効果が高いとされており、最優先で地域導入を進めていくべき再生可能エネルギーの一つであろう。しかしながら、木質燃料の多様さ(あるいは不均一さ)、地域の林業構造の違い、熱需要の地域性の違いなどから、課題が個別化し共有されにくく、各地で同じような問題を抱えていることも少なくないことが近年明らかになってきた。本シンポジウムでは、木質バイオマスの中小規模の熱利用を推進していくための課題の共有を第一の目的としている。実務担当者や研究者等の報告に基づき、地域性を踏まえつつ熱利用の課題について整理した上で、将来展望について議論したい。

T6 「住まい」を通じた人工林資源の循環的利用の可能性-建築用材による「地材地消」の仕組み作り-
Possibility of cyclical use of forest resources by an enhanced collaboration with homebuilding sectors - a comprehensive study for Japanese larch in Hokkaido -

コーディネータ: 津田高明(北海道立総合研究機構林業試験場) 新田紀敏(北海道立総合研究機構林業試験場)  寺澤和彦(東京農業大学)
27日 午後
趣旨: 資源面での原木供給能力が整いつつある国内人工林では、成熟した人工林を伐採・販売し、再造林につなげる循環的利用体制の構築が大きな課題である。再造林を進めるには林業採算性の改善が必須であり、素材生産コストや再造林コストの低減技術の開発および新規市場の開拓等による売上高の向上が進められている。このうち、売上高の向上については製材工場との地域材の流通体制の構築等の様々な取組が全国的に行われているものの、様々な課題から林業採算性の改善までに至った事例は多くはない。
 針葉樹素材生産量が全国第3位である北海道でも同様の問題を抱えている。北海道では地場産の木材を積極的に利用する「地材地消」に取り組んでおり、主要造林木であるカラマツを中心とした北海道内での木材自給率は約57%に達している。しかし、その用途は安価な小中径木を使用原木とした産業用資材やパルプ材等の低次利用が中心であり、林業採算性は低いままである。
 これらの状況を改善し、林業採算性を向上させる方策として、より付加価値の高い建築用材での「地材地消」を推し進めることが考えられる。以上の背景から、北海道では、地域材の生産・利用の仕組み作りとして、木材需要の柱である住宅分野と林業・木材利用分野の複数の研究機関が連携し、カラマツ資源を対象とした建築用材としての循環的利用方法および流通体制の構築を進めてきた。本シンポジウムでは、前半にカラマツ資源の将来予測、建築材利用に向けた加工技術、住宅での利用可能性に関する話題を提供する。後半は原木から住宅部材までの流通の実証研究と事業化に関する話題を提供する。それらを踏まえ、建築用材を通じた地域材の「地材地消」おける、川上-川中-川下の連携への展望や課題について議論したい。

T7 樹木の大量枯死現象が森林生態系に与える影響
Effects of coarse woody debris on forest ecosystems after forest dieback events

コーディネータ: 深澤遊(東北大学) 鈴木智之(東京大学) 小林真(北海道大学)
27日 午後
趣旨: 様々な要因で起こる樹木の大量枯死は、森林生態系に最も大きな影響を与える撹乱と言えるだろう。大量枯死が森林生態系に与える影響や、その後の森林回復を左右する要因を明らかにすることは、森林の生態系機能を安定的に享受する上で重要である。大量枯死は、森林の構造と機能を大きく変化させる。さらに、結果として生じる大量の枯死木は、その長期的な分解プロセスを通じて様々な生物の生息場所あるいはエネルギー源となり、また養分のソースあるいはシンクとなることで森林の生物多様性や物質循環に大きな影響を与える。すなわち、大量枯死後の枯死木の取り扱いが、その後の森林生態系の動態に大きく、そして長期的に影響することが予想される。本セッションでは、樹木の大量枯死現象を、その原因から病虫害、台風、森林火災、伐採、の4タイプに分け、それぞれの大量枯死において生じた枯死木が森林の動態に与える影響を、生物的側面および物質循環的な側面から検討することで、タイプ間の相違点や類似点を浮き彫りにし、大量枯死後の枯死木の取り扱いを総合的に考える端緒としたい。

T8 今後の再造林に向けたコンテナ苗研究の現在
Hot issues on the utilization of plug seedlings grown in the containers for the future replantation system

コーディネータ: 田中浩(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨: 国内の人工林資源の伐期の到来を背景に、国産材生産量の増加に対応して、間伐のみならず皆伐・再造林の必要性が徐々に増してきている。しかし、今後、皆伐ー再造林の流れを持続的に進めるためには、材価に対し高過ぎる再造林コストの低減、また苗木の安定供給体制の整備が必須である。低コスト再造林システムとして、植栽時期を選ばず、植栽効率の良いコンテナ苗を利用した、伐採から植栽までの「一貫作業システム」が提案されている。しかし、コンテナ苗の様々な林地でのパフォーマンスについては、いまだ正負の情報が錯綜し、コンテナ苗の低コスト化も大きな課題である。本シンポジウムでは、こうした低コスト再造林に向けたコンテナ苗の利用に関する最新の研究状況を報告していただき、今後の方向性を検討することを目的とする。

T9 ブナの豊凶が何かおかしい? -全国のブナ林からの報告-
Mast seeding of beech is something strange? - Reports from nationwide beech forests -

コーディネータ: 八坂通泰(北海道立総合研究機構林業試験場)
27日 午後
趣旨: 最近、「ブナの豊凶が何かおかしい?」と樹木種子の豊凶モニタリングを続けている研究者は感じ始めている。例えば、北海道南部のブナ林においては、1990~2002年の13年間の調査では、平均すると5年に1回の頻度で豊作が訪れていたが、2003~2014年の12年間では1度しか豊作がきていない。これまでブナの豊凶は、主にブナの開花量とブナヒメシンクイなど蛾の幼虫による虫害率の年変動により生じることがわかっている。また、開花量には気象条件が、虫害率には開花量の連年比(前年の開花量と当年の開花量の比)が関係しているとされる。これらは、ブナの豊凶が広域で同調するメカニズムの1つとしても理解され、適応的意義としては捕食者飽食説や受粉効率説を支持してきた。
 近年のブナの豊凶現象の変化は、気温や積雪など気候の変動下において、ブナの開花パターンと蛾の幼虫による捕食パターンの関係性が変わり、これらの複雑な相互作用のもとで起きていると予想される。変化のパターンは、ブナの生態や気候変動の地域性に起因し地域差が生じると推察される。また変化の影響は、ブナ林の動態や再生だけでなく、ブナ林に生息する野生生物にも及ぶ可能性が高い。因果関係は不明だが、全国でクマの里への出没が大きな社会問題にもなっている。こうした気候変動等が樹木の豊凶現象に及ぼす影響については、海外でも関心が高まっているが、その影響は十分解明されていない。近年の変化が、偶発的に特定の場所で起きていることなのか?こうした疑問を解き明かすには1カ所のモニタリングデータだけでは不十分だろう。今回の企画シンポでは、全国でブナの豊凶をモニタリングしている研究者から、ブナを中心とした近年の豊凶の各地の実態について報告してもらい、樹木の豊凶現象の近年の変化について関係者で情報の交換と共有を図り、今後の豊凶モニタリングに関連した研究の方向性等について議論したい。

T10 天然更新施業による保続的木材生産の可能性
Possibility of the sustainable wood production by the natural regeneration management

コーディネータ: 石橋聰(森林総合研究所) 吉田俊也(北海道大学) 正木隆(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨: 戦後造林された人工林資源が充実し、生産、更新(再造林)の低コスト化が課題となっている。現在はまさに人工林施業時代といえる。しかし、低コストというキーワードからみれば、天然更新によって更新ができれば大きなコスト低減となる。また、広葉樹を中心に多種の木材を得られる、遺伝的多様性が保全できるなど天然更新の利点は多い。一方で、天然更新研究の歴史は長いが、その成果が林業現場に本格的に適用され、木材の保続生産につながっている例は少ない。天然更新研究には、更新を阻むササ類など下層植生との関係、目標樹種と競合する他樹種の扱いなど、大きな課題が残っている。また、仮にこれらの課題が技術的に解決されたとしても、施業コストの状況によっては経営上実行することが不可能となる。本シンポジウムでは、長年にわたり天然更新研究が行われてきた北方針広混交林とブナを中心とした広葉樹林の施業を題材に、これまでの成果や浮き彫りになった問題点などを現在進められている研究を通して紹介するとともに、これらをもとに天然更新施業による保続的木材生産の可能性について議論を行いたい。

T11 都市近郊林の文化的サービスの持続的発揮に向けて-多様な学問領域の視点から-
Toward the sustainable and sophisticated supply of diverse cultural services in suburban forests - Beyond "the gap" of the people's different perspectives -

コーディネータ: 高山範理(森林総合研究所) 八巻一成(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨: 居住地に近い都市近郊林では、市民の森林に対する関心の高まりとともに、今まさに保健休養、教育、景観・地域文化形成といった"森林の文化的サービス"を高度に発揮させながら、持続的な自然資源の保全を行うことが求められている。そこで"森林文化系"といえるような、自然科学・社会科学を問わず、森林の有する文化的サービスに対して学術的に高い興味または関心を有している研究分野および研究者は、都市近郊林の利用と保全が抱える矛盾や問題に対して、どのような貢献が可能なのかについて、森林総研の清野嘉之氏、井上真理子氏、平野悠一郎氏を登壇者に迎え、企画者の八巻一成、高山範理を加えた計5名の専門分野の異なる研究者によって、複眼的な視点からそれらの解決に寄与する合理的かつ実効可能な方法論や枠組みについて議論したいと思います。なお、当企画シンポジウムは二部構成で実施します。
 第一部(都市近郊林の文化的サービスの利用と自然資源の保全の両立に向けた「まなざし」の共有)では、各登壇者がそれぞれ異なる専門領域において、これまで都市近郊林がどのように扱われてきたのかを、それぞれの解釈やまなざし(視座)を含めたレビューとして簡単に紹介します。
 第二部(都市近郊林の文化的サービスの持続的な利用に向けて -まなざしの違いから生じる「すきま」を埋めるには?-)では、第一部の登壇者を中心にパネルディスカッションを行います。議題として、まず、第一部の議論で明らかとなった「すきま(各研究者の立ち位置の違いや、必要性が高いのに個々人での取り扱いが難しい課題、および十分に取り組みがなされていないが研究すべき事柄等)」 の確認を行い、さらに都市近郊林の利用に関わる諸機能を高度に発揮するために、その「すきま」をどう埋めるのか、またどう連携すべきなのかなどについて、参加して戴いた学会員のみなさまとともに、多角的に議論したいと思います。

T12 国際認定は地元を豊かにしたのか -世界自然遺産、エコパーク、世界農業遺産、ジオパークの定量・定性的分析事例から-
Did international recognitions and certifications benefit the local communities? - From the analysis of UNESCO World Heritage, MAB, Geo Park and GIAHS in Japan -

コーディネータ: 香坂玲(金沢大学)
27日 午後
趣旨: 森林をはじめとする自然資源の保全、観光などの活用をめぐる国際的な認定としては、基準が比較的明確な世界自然遺産と、ユネスコ・エコパーク(MAB)、世界農業遺産が存在する。保護地域を中心とするものから、里山など人の営みを前提とした制度まで様々な題材と基準が存在する。
 同時に、認定される地域は市町村や県をまたぐことも多く、認定制度を効果的に活用するためには、関係主体間での観光の戦略の共有や位置づけが鍵となる。過去には白神山地のような自治体ごとの違いが浮き彫りとなった事例もある。同時に市町村によっては、屋久島・白山(申請中)のように世界自然遺産とMAB等の複数の制度を活用する状況もあり、認定制度全体を比較分析することは研究上重要な課題である。
 そこで本シンポジウムでは、屋久島、小笠原諸島、能登半島といった地方自治体レベルのローカルな文脈の事例を取りあげる。設定する課題としては、世界自然遺産、エコパーク、世界農業遺産、ジオパークといった国際認定の取得のプロセス、戦略、そして「地元を豊かにしているのかどうか」という問いに取り組む。事例研究を中心としながらも、その定性的な比較だけではなく、定量的な手法を組み合わせた研究も含む。また豊かさも、経済的、自然から、共有や人のつながりといったネットワークも含める。個別の事例やその比較が中心となりがちな分野において、経済、政策、テキスト・マイニングなどの定量的な手法を用いた研究の動向のフロンティアを探る。また、観光学という新領域において、専門の学部、研究所の専門家を招いて、どのような議論と学際的な研究が行われているのか、森林科学分野との接点を探る。
 近年の人口減少を受け、「消滅」という危機感を煽る言説と、「地方振興」「地域再生」といったスローガンの間で揺れ動いてきた。森林の分析を通じて、個別の自治体の実像を明らかにする一助となれば幸いである。

T13 樹木根の成長と機能
Growth and development of tree roots

コーディネータ: 平野恭弘(名古屋大学) 野口享太郎(森林総合研究所) 大橋瑞江(兵庫県立大学)
27日 午後
趣旨: 「樹木根の成長と機能」の企画シンポジウムでは、樹木根をキーワードに細い根から太い根まで、細胞レベルから生態系レベルまで多岐にわたる研究を報告対象としています。樹木根研究は、これまでもテーマ別セッションとして毎年活発な議論が行われ、多くの方々に関心を持っていただいています。今回は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの片山歩美先生に、【ボルネオ島熱帯雨林における炭素配分-根圏はどのくらいの炭素を利用するのか?-】について、特別講演として30分程度、話題提供していただく予定です。
 また、本シンポジウムでは、森林の炭素・養分動態に関連する樹木根動態・機能に関する研究報告のほか、2014年9月に名古屋大学で開催された第6回国際樹木根会議について森林学会員に対して広く情報提供し、今後の樹木根とその関連分野による共同研究や国際的なネットワーク作りを促進するための議論もしていきたいと思います。なお当日は15分の趣旨説明の後、15分の口頭発表を8件程度、片山先生の特別講演を30分行います。最後に総合討論の時間を15分設け、3時間のシンポジウムとする予定です。

T14 生理部門特別セッション「樹木の成長と環境」
Special session of the Physiology Section "Tree Growth and Responses to Environmental Factors"

コーディネータ: 則定真利子(東京大学) 小島克己(東京大学) 斎藤秀之(北海道大学) 津山孝人(九州大学) 二村典宏(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨: 講演会と生理部門のポスター発表の1分紹介からなる、生理部門の特別セッションを催します。
 生理部門では樹木の成長の仕組みを明らかにする研究に携わっておられる方々の情報・意見交換の場となることを目指します。キーワードとして以下の20語を掲げています:樹木生理、個体生理、生態生理、水分生理、光合成、呼吸、栄養成長、生殖成長、環境応答、ストレス応答、代謝、栄養、物質輸送、植物ホルモン、細胞内小器官、細胞壁、組織培養、形質転換、遺伝子発現、ゲノム科学。個体から細胞・分子レベルまでの幅広いスケールの現象を対象とした多様な手法によるアプローチを含んでおりますので、これまでの研究分野の枠組みにとらわれることなく、さまざまなスケール・手法で樹木の成長の仕組みの解明に携わっておられる多くの皆様に生理部門での口頭・ポスター発表にご参加頂くとともに本特別セッションにご参集を頂きたいと考えております。
 講演会では、岡山大学の吉川賢さんに、長年、乾燥地の樹木の水分生理特性を生理生態学的に研究してこられた成果をご披露して頂きます。樹木の乾燥応答に関する学術的知見のみならず、乾燥地緑化への研究成果の応用まで、視野の広いお話を伺えるまたとない機会になると期待しています。引き続いて、名古屋大学の齋藤隆実さんに展葉時のシュート内の水ポテンシャルのポテンシャル勾配形成について、東京大学の小笠真由美さんに木部の通水阻害についてMRIを用いた非破壊解析を中心に、樹木の水分生理の研究成果をご披露頂きます。
 1分紹介では、生理部門でポスター発表をされる方に発表内容を1分間でご紹介頂きます。大会での発表申し込みの締め切りの後に、生理部門でのポスター発表に発表申し込みをされた方々に1分紹介への参加を呼びかける予定です。

T15 マツ材線虫病研究の最前線 -オミクス的展開による挑戦-
Frontier of recent research against the pine wilt nematode disease: challenges by omics-based approach

コーディネータ: 渡辺敦史(九州大学) 高田克彦(秋田県立大学) 高橋誠(森林総合研究所) 佐橋憲生(森林総合研究所)
27日 午後
趣旨: ゲノミクス、トランスクリプトーム、プロテオミクスを包含するいわゆるオミクスは、様々な生物種で生命現象の本質に迫りつつある。マツ材線虫病に対しても、寄生虫であるマツノザイセンチュウについては全ゲノムが解読され、バイオインフォマティクスの利用と共にゲノム基盤情報が整備された。プロテオミクスを駆使することで、マツノザイセンチュウの病原性に関与するタンパク質の探索が開始され、再度全国規模で収集されつつあるマツノザイセンチュウの表現型に対する新たな評価技術も模索されている。宿主であるマツについても膨大な発現遺伝子が収集され、これらを利用した大規模発現解析により感受性と抵抗性間の相違だけでなく、線虫侵入後の病徴が遺伝子レベルで理解され始めた。マツ材線虫病研究が新たな視点で、より深く掘り下げられる様になった現在、寄生虫側と宿主側双方の研究者間の連携だけでなく、様々な分野が有機的に結びついてこそ、初めてマツ材線虫病の本質的理解が進むと考えられる。マツ材線虫病の拡大に伴い、関係諸国からも次々に精力的な研究が報告される一方、日本では寄生虫側と宿主側の研究者が公式な場で一堂に会して議論する場がこれまで少なかっただけに、本企画シンポジウムではオミクス研究に携わる研究者から最新の研究をレビューしていただくと同時に、今後の連携や展開について改めて討議し、マツ材線虫病の本質的理解を目指すオミクス的研究の現状と問題点を詳らかにする必要性がある。これらの成果は研究としての位置づけだけでなく、更にそれらを昇華させ、実際の防除や対策に向けてどのように活用されるべきかを議論すべきであり、聴衆も含めた議論の場を提供したい。

T16 最新の森林系統地理学と将来展望
The latest phylogeography of forest organisms and future perspectives

コーディネータ: 戸丸信弘(名古屋大学) 津村義彦(森林総合研究所) 井鷺裕司(京都大学) 陶山佳久(東北大学)
27日 午後
趣旨: 系統地理学とは、遺伝マーカーを用いて種内集団間の系統を明らかにし、その地理的分布を調べることにより、その種が辿ってきた歴史を探求する学問である。系統地理学は、1987年に新しい学問として提唱されて以来ほぼ20年で、急速に進展し、 樹木を始めとする森林生物においても、数多くの研究が報告されてきた。これまでの系統地理学の研究では、オルガネラDNA(葉緑体DNAやミトコンドリアDNA)や、近年では、核のマイクロサテライトを遺伝マーカーとして用いて、生物種における分布拡大や分断・縮小の歴史が調べられてきた。しかし、特にオルガネラDNAを用いるアプローチでは、1遺伝子座のデータであるため、結果は偶然性に左右されやすい、定性的な推測しかできない、仮説を立てて統計的に検証することができないなどの問題がある。近年、コンピューターの性能が飛躍的に向上したことにより、集団遺伝学的なモデルを立てて、MCMCやベイズ統計などを用い、過去の集団動態(デモグラフィー:個体数変動、集団の分岐・混合、移住など)を推定することが可能となった。その手法を取り入れた系統地理学は、「統計的な系統地理学」と呼ばれており、再び大きく発展する可能性がある。そこで、本シンポジウムでは、樹木を始めとする森林生物を対象として、モデルベースのデモグラフィー推定を行っている系統地理学的研究を中心に、最新の研究を紹介していただくことにより、系統地理学の最前線を概観し、今後の研究の方向性などについて議論したい。