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日本森林学会会長就任にあたって

日本森林学会会長就任にあたって

日本森林学会会長 黒田慶子

このたび日本森林学会会長に就任いたしました神戸大学の黒田慶子です。会長就任にあたりご挨拶申し上げます。これまで森林学会では企画・広報を担当し、また2014年から4年間は副会長として学協会連携を担当してまいりました。北海道大学の中村前会長に引き続き、関東圏以外から選出いただきました。副会長や理事、主事、事務局の皆さまに助けていただきながら、森林学会の発展に努める所存です。

森林学会は林学会として設立され、2014年に100周年を迎えました。歴史の長い学会として様々な活動により発展し、現在に至ります。当学会で扱う研究は、連綿と続く育林技術に関するものに加えて、近年では環境保全や生物多様性に関する基礎研究へと範囲が広がり、研究者の研究動機や価値観が変化していることがわかります。しかしながらここには課題もあります。林業が不活発であるために、森林全体の保全・管理が実践しにくくなっていることです。原生林のように資源利用しないことが前提の場所は除外しますが、人工林以外の森林についても、「資源利用なしには森林の持続性担保は難しい」ことや、「自然に任せる」状態で発生している諸問題について、今一度意識する必要があると思います。森林管理の方向性について将来を見据えた議論と提案を続けて、具体的な科学情報を社会に提供することと、国や地方行政に人材を提供することは、森林学会の重要な役目と言えるでしょう。

これまでの学会での仕事を通じて、森林科学分野の研究発展のためには、学会としての明確な意思表示が必要と感じています。たとえば日本学術会議での説明や、科学研究費(日本学術振興会)に関する提案などです。今後の課題あるいはビジョンとしては以下の事柄を重視し、理事や会員の皆様と共に学会の運営方針を検討したいと思います。

(1)研究の新規性と発展。基礎研究から技術開発まで、高水準でバランスのとれた研究発展を目指すにはどうすれば良いでしょうか。学会での活発な議論が必要です。また当学会は、以前は地方行政や公立研究機関(都道府県の林業試験場)、国有林職員が実践的報告を行う場でもありました。最近では、論文の価値基準が純粋な基礎に傾いており、現場の情報を論文にしにくいという意見があります。農学分野に属する森林科学としては、真理探究と同時に実学であることを意識したいと思います。

(2)人材育成、就職への橋渡し。近年は研究者の減少が危惧されており、研究者への進路に関する情報提供が必要です。2年前の大会から大学院進学推進の企画を実施し、日本学術振興会特別研究員の申請のコツや、大学院進学者の進路の紹介などのセミナーを行っています。会員の要望が多様化していることもあり、若手〜中堅研究者に役立つ情報を提供したいと思います。学会誌編集担当による論文執筆講座も実施しています。

(3)社会への情報発信。「環境保全は大事」という認識が世の中に広く認知されつつありますが、森林に関しては種々の誤解があります。農学部の大学生でも森林に関する知識が少ないのは残念です。森林ボランティアが増えていることもあり、社会への情報発信はこれまで以上に重視すべきでしょう。学会時の公開講演会にとどまらず、いろいろな形での発信が必要と思われます。

さて今回は、林学会〜森林学会を通して初めての女性会長になります。「林業・林学は男の世界」と思われがちな分野で会長に選出いただいたのには、それなりの経緯があると思っています。当学会では男女共同参画の観点により、2005年の選挙以来、「多様な代議員(評議員)の選出促進のお願い」という一文を投票の際に提示してきました。「女性、40歳未満の若手、大学以外のさまざまな機関の会員の参画」を意識した投票のお願いで、これは高年齢層の首都圏在住の男性会員に偏った運営にしないためです。その結果、男女の中堅研究者が一定数選出されるようになり、代議員や理事の年齢構成が若くなりました。私自身は、女性であることを意識せずに仕事を続けてきましたが、誰かを選出する作業では、少数派を「無意識で除外」しやすいと実感しています。そのような場合、上記の文言を目にすると、女性や若手の顔も含めて思い浮かべて投票いただけるようです。当学会では100周年記念大会で「森林分野におけるダイバーシティ推進」(https://www.forestry.jp/activity/gender-equality/)を宣言しています。男女共同参画推進担当は今年度から「ダイバーシティ推進」と名称を変更しましたが、男女共同参画はダイバーシティ推進の根幹をなすことには変わりがありません。これまで以上に多様な会員が森林科学の研究や林業実務に参画できるようサポートしたいと思います。

日本森林学会では、言うまでもありませんが地球環境の保全に直結する研究を担っています。自然科学と社会科学の両方をつなぐ分野でもあります。このような研究分野の特性から、国の政策や行政判断に関わる情報を提供する立場にあることを意識し、新規性の高い研究を推進していきたいものです。その過程において、学会がどのように会員をサポートできるのか考えながら頑張っていきたいと思います。会員の皆様からの要望やご提案をお待ちしています。今後ともご支援いただけますよう、よろしくお願いいたします。簡単ですが会長就任の挨拶とさせていただきます。


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