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Journal of Forest Research, Vol.21, No.5(2016年10月)

種類: 特集/巻頭言
Title: Climate change — mitigation, impacts and adaptation in the forestry sector/Preface
巻頁: J For Res 21 (5): 197–198
題名: 気候変動:林業セクターにおける緩和策、影響および適応策/巻頭言
著者: 松本光朗・岡裕泰
所属: 森林総合研究所北海道支所
抄録: 気候変動に対する科学的な関心は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の諸報告に示されているように大きなものであり、また政策的関心の強さは気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)のパリ会合で2015年12月に採択されたパリ協定に示されている。気候変動に対して森林は、二酸化炭素の吸収、森林減少による二酸化炭素の排出、木材利用による化石燃料や化石燃料に依存した資材の代替などの面で、大きな影響を持っている。そして森林分野では気候変動に対する適応策と緩和策という2つの方向性を持つ対策が補完的に重要とされている。本誌ではこれまで気候変動が森林に与える影響を中心に、気候変動に関するさまざまな論文を取り扱ってきた。本特集では緩和策と適応策に関して、日本と韓国の事例を中心に国際的な視野を持った論文を集めることによって、森林分野における気候変動研究の発展に寄与したい。


種類: 特集/原著論文
Title: Carbon balance of forest stands, wood products and their utilization in South Korea
巻頁: J For Res 21 (5): 199–210
題名: 韓国における林分と木材製品およびその利用に関する炭素収支予測評価
著者: Hee Han・Woodam Chung・Joosang Chung
所属: オレゴン州立大学
抄録: 森林は木材製品やバイオエネルギーとバイオベース製品のための原料を提供し、二酸化炭素排出量を削減することによって、気候変動を緩和することができる。林産物の炭素排出削減効果を評価するために、我々は、森林サプライチェーン全体での個別のカーボンプールの長期間にわたる炭素収支を分析した。我々は、分析対象として、とくに韓国のマツ林経営に関係する森林サプライチェーン活動をシミュレートした。二つの異なる輪伐期(すなわち40年と70年)のシナリオについて、280年の期間にわたって、サプライチェーンに沿った各炭素プールにおける炭素蓄積の変化、炭素プールの間の炭素移動、代替効果、および木材製品からの遅れた炭素放出の面で評価を行った。全期間にわたる平均炭素蓄積レベルにおいては70年伐期シナリオの方が高かったが、期末までの炭素吸収の合計量では40年伐期の方が高かった。この研究結果は、林産物もエネルギー原料供給も、どちらも炭素排出量を削減し、炭素貯留量を増加させることができることを確認した。しかしサプライチェーンに沿った炭素会計は非常に複雑なので、森林炭素管理オプションを評価するために使用する場合には、多様な視点からの十分な評価が必要である。


種類: 特集/原著論文
Title: Potential contributions of forestry and wood use to climate change mitigation in Japan
巻頁: J For Res 21 (5): 211–222
題名: 日本における林業と木材利用による気候変動緩和への貢献の可能性
著者: 松本光朗・岡裕泰・光田靖・橋本昌司・加用千裕・恒次祐子・外崎真理雄
所属: 森林総合研究所
抄録: 森林による大気からの炭素吸収と、木材利用による排出削減の間のトレードオフおよび補完性を考慮して、我々は日本の森林セクターの炭素統合モデルを開発した。そしてモデルの予測に基づいて、日本の気候変動緩和策を検討した。統合モデルは、森林モデルと木材利用モデルから構成されている。伐採と木材利用に関する3つのシナリオ(ベースライン、緩やかな増加、急激な増加)のもとで、統合モデルを用いて2050年までの森林による大気中の炭素の吸収と、より広い木材利用を通じた排出削減による緩和効果を予測した。その結果、3つのどのシナリオでも森林は2050年まで純炭素排出源とはならなかった。そしてほとんどの期間においてベースラインシナリオが気候変動を緩和するために最も効果的であった。また急速な増加のシナリオの下での森林による炭素吸収と木材利用による炭素排出削減の合計は、2043年以降では緩やかな増加のシナリオよりも大きくなった。これは再植林を強力に推進し、新たな高収量品種を使用し、木材利用を促進するという強力な緩和策によるものである。また、急激な増加のシナリオにおいて、木材利用拡大による排出削減の増加は、2050年には伐採増加による森林の炭素吸収の減少の67.9パーセントを埋め合わせることが示された。これらの結果は、日本の人工林が比較的若いために森林における炭素吸収が少なくとも2050年までは最も重要であることを示している。これよりさらに長期的に見た場合には、建築等の資材やエネルギーの代替による累積的な緩和効果の重要性がより高くなる可能性がある。


種類: 特集/原著論文
Title: Wind damage risk estimation for strip cutting under current and future wind conditions based on moment observations in a coastal forest in Japan
巻頁: J For Res 21 (5): 223–234
題名: 列状伐採を行った海岸林の現在および将来の気象条件下における風害リスクのモーメント観測に基づく評価
著者: 鈴木 覚・坂本知己・野口宏典
所属: 国立研究開発法人森林総合研究所森林防災研究領域
抄録: 手入れ不足や松枯れ発生後の天然更新のため、極めて立木密度の高い海岸林がみられ、本数調整手法の確立が急務となっている。松枯れ発生後に天然更新したクロマツ海岸林で1.2m幅および5m幅の列状伐採が行われた。そこに1.2m伐採区、5m伐採区、対照区の3つのサイトを設け、各伐採列に面した個体にひずみセンサーを取り付けてモーメントを測定した。風速、モーメント、最大抵抗モーメントの関係から、個体ごとに限界風速を計算した。再現期間50年の風速を"まれな強風"の基準とし、限界風速がそれを下回ったものをまれな強風で風害を受ける個体と判定した。5m伐採区は他の試験区よりも有意に限界風速が小さく、まれな強風で一部の個体が被害を受けると判定された。一方、1.2m伐採区と対照区は被害を受けないと判定された。また、将来の気象条件として風速が増加した場合を想定したとき、5m伐採区の風害リスクは高まるが、1.2m区と対照区は風害リスクの上昇はわずかであると予想された。評価対象の林帯でモーメント観測を行い、まれな強風の水準を設定することによって、定量的な風害リスク評価が可能であることを示した。


種類: 原著論文/環境
Title: Changes in soil microbial community and activity in warm temperate forests invaded by moso bamboo (Phyllostachys pubescens)
巻頁: J For Res 21 (5): 235–243
題名: モウソウチク侵入による暖温帯林の土壌微生物群集・活性の変化
著者: 王 新・佐々木晶子・戸田 求・中坪孝之
所属: 広島大学大学院生物圏科学研究科
抄録: この数十年、日本ではモウソウチク(Phyllostachys pubescens)林が急速に拡大し、周辺の自然林に侵入するという現象が起きている。本研究では、モウソウチクの侵入が西日本の暖温帯林の土壌微生物群集と活性に及ぼす影響について検討した。モウソウチク侵入林と隣接する未侵入の自然林で採取した土壌について、微生物呼吸速度を測定し、土壌微生物組成の変化を調べるためリン脂質脂肪酸(PLFA)分析を行った。その結果、モウソウチク林と自然林との間では、土壌のいくつかの性質、微生物の組成が有意に異なっていた。自然林と比較してモウソウチク林の方が、バクテリアPLFAに対する菌類PLFAの比率は高く、有機物層のバクテリアPLFA量は低かった。土壌微生物呼吸については、モウソウチク侵入によって、有機物層では低く、鉱質土層では高くなる傾向が認められた。また、全PLFAあたりの微生物呼吸速度で表される微生物呼吸活性についても、モウソウチク侵入によって、有機物層では低く、鉱質土層では高くなることが確認された。これらの結果から、モウソウチクの侵入は森林土壌の微生物群集と土壌有機物の分解パターンにも影響を与えていることが明らかになった。


種類: 原著論文/生物−生態
Title: Establishment of a high-frequency regeneration system in Cerasus humilis, an important economic shrub
巻頁: J For Res 21 (5): 244–250
題名: 経済的に重要な灌木であるCerasus humilisの組織培養による高効率な植物体の再生系の確立
著者: Rui Fang Wang・Feng Lan Huang・Jian Zhang・Qiu Yan Zhang・Li Na Sun・Xing Shun Song
所属: Northeast Forestry University, China
抄録: Cerasus humilis is a species of small, perennial, drought-resistant and multipurpose deciduous shrub grown in arid and semi-arid conditions in northern China. In this study, an efficient protocol for the rapid micropropagation of C. humilis has been standardized using stem and/or leaf explants. Direct multiple shoot induction was observed when the stem explants were cultured on Murashige and Skoog (MS) medium supplemented with different plant growth regulators. The highest shoot induction was obtained when stem explants from adult trees were cultured on MS medium supplemented with 2.0 mg L−1 6-benzyladenine (6-BA) and 0.9 mg L−1 α-naphthaleneacetic acid (NAA). The leaf and stem explants cultured on MS medium with 1.0 mg L−1 6-BA and 0.6 mg L−1 NAA, and 0.5 mg L−1 6-BA and 0.8 mg L−1 NAA, respectively, produced the highest induction frequency of callus. Maximum proliferation of callus was observed on MS medium containing a combination of 0.5 mg L−1 6-BA with 0.6 mg L−1 2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-d). Optimal shoots differentiated from callus were obtained on MS medium supplemented with 5.0mg L−1 6-BA and 0.9 mg L−1 NAA. In vitro rooting was achieved on half-strength (1/2) MS medium containing 0.5 mg L−1 NAA. Rooted plantlets were hardened under control conditions and successfully acclimatized under field conditions.


種類: 原著論文/生物−生態
Title: Cesium absorption through bark of Japanese cedar (Cryptomeria japonica)
題名: スギにおけるセシウムの樹皮吸収
巻頁: J For Res 21 (5): 251–258
著者: 王韡・花井勇一・竹中千里・富岡利恵・飯塚和也・小澤創
所属: 名古屋大学生命農学研究科
抄録: 放射性セシウムの樹皮からの表面吸収、およびその後の材、葉への輸送は、樹木における放射性汚染の原因の一つと言われている。しかし、このプロセスについては不明点が多い。そこで安定セシウムを用いて、樹皮から樹体内への吸収、および吸収されたセシウムの輸送を確認するために、樹皮塗布実験を行なった。福島県郡山市の10年生スギと栃木県の26年生のスギを対象し、1.2 mの高さの樹皮に安定セシウムを塗布した。複数の高さの樹皮、辺材と心材(26年生のみ)及び先端の葉におけるセシウム濃度を測定した。その結果、塗布部(1.2 m)の辺材と心材におけるセシウム濃度は、コントロールより、塗布個体のほうがかなり高かった。よって、セシウムが樹皮に吸収され、木材まで輸送されたことが明らかとなった。辺材より心材におけるセシウムの平均濃度が高かったことから、セシウムがスギの心材まで輸送され蓄積される傾向が示唆された。また、実験個体において葉で高いセシウム濃度が検出されたことから、セシウムが先端の葉など成長の盛んな部位へ積極的に輸送されたことが明らかになった。