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Journal of Forest Research, Vol.20, No.3(2015年6月)

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種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Socioeconomic development and wood consumption
巻頁: J For Res 20 (3): 309-320
題名: 社会経済発展と木材消費
著者: 加用千裕,岡裕泰,橋本征二,水上碧,高木重定
所属: 東京農工大学大学院農学研究院
抄録: 木材需要の将来予測の検討に資するために、社会経済発展と木材消費量との関係を分析した。先進国(OECD)および新興国(BRIICS)の合計39カ国における過去32年間のパネルデータを用いて、経済水準(1人当たりGDP)、人間開発指標(HDI)、人口変化率、人口密度、都市化率、森林率、時間トレンド等の社会経済因子を説明変数、1人当たり木材(製材、合板、木質ボード、紙・板紙、木質燃料)消費量を被説明変数とする回帰分析を行った。その結果、経済発展に伴って、合板、木質ボード、紙・板紙の消費量は飽和・減少するが、製材と木質燃料の消費量は増加することが分かった。特に木質燃料は、近年の先進諸国を中心としたバイオ燃料の利用推進状況が影響していると考えられる。また、人口密度の増加や都市化の進展は木材消費量の減少に、森林の拡大は木材消費量の増加に寄与することが分かった。人口分布の変化や森林管理の動向は、木材需要の将来予測において考慮すべき重要な因子であることが明らかになった。


種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Estimation of relative illuminance within forests using small-footprint airborne LiDAR
巻頁: J For Res 20 (3): 321-327
題名: 航空機LiDARによる林内相対照度推定
著者: 山本一清,近藤直人,村瀬康久,江藤稚佳子,渋谷研一
所属: 名古屋大学大学院生命農学研究科
抄録: 航空機LiDARデータにおける全パルス中の地上到達パルスの割合として算出されるレーザー透過率(LPI: %)は、LAI等と密接な関係性が示されてきた。前報で、我々は航空機LiDARデータを自動的に林冠部と林冠下部の反射パルスに分離する新たな手法を提案した。そこで本研究では、前報で提案した手法で得られる林冠下部の反射パルスを地面パルスとしてLPIを算出し、林内相対照度(RI:%)との関係を比較した。その結果、本研究で提案した方法で算出したLPIはRIと密接な関係(P<0.01)にあり、その関係はオーバーラップ観測によるパルス密度(単位地上面積当たりのパルス数)の増加にほとんど影響を受けなかった。さらに、本研究ではLPIを観測点を中心とする仮想円形プロットを対象に算出したが、この円形プロットの半径を2.5mから15mまでの6段階で比較した結果から、半径5m未満の円形プロットは、特に点密度が低い場合、RI推定に適さないことが示唆された。


種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Distribution pattern of coniferous seedlings after a partial harvest along a creek in a Canadian Pacific northwest forest
巻頁: J For Res 20 (3): 328-336
題名: カナダ太平洋沿岸北西部の小河川沿いにおける間伐後の針葉樹実生の分布様式
著者: 南佳典,大場麻衣,小島覚,John S. Richardson
所属: 玉川大学農学部
抄録: 管理された森林においては,河畔域を含む立地での間伐は伐採の機会を提供し河畔植生がもついくつか機能を維持する一つの手法である.本研究では,北米太平洋岸北西部の針葉樹二次林において,材積の約半分を伐採する間伐による針葉樹実生の反応について検討した.部分的な林冠部の開放は,Tsuga heterophyllaやThuja plicataの定着を促進するが,Pseudotsuga menziesiiでは同じような傾向は見られなかった.このことから,それぞれの実生の定着は光環境の違いを反映していることが示唆された.光環境の改善は,同様に湿潤な環境におけるRubus spectabilisの生育を良好にし,その密な被覆は針葉樹実生の定着を妨げていた.ひとたびR. spectabilisが定着すると,連続した茎が密で堅固な被覆を作り出し,強い撹乱が起こったとしてもその個体群の維持には影響を及ぼさない.したがって,R. spectabilisは,河畔林域における主要な競争種となり得る種で,針葉樹実生の更新を抑制することが理解された.Gaultheria shallonもその被覆を拡大していたが,密なG. shallonの被覆はR. spectabilisと同様な厳しい競争にはならなかった.


種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Projection of the probability of local extinction of canopy tree species in forest landscapes
巻頁: J For Res 20 (3): 337-346
題名: 森林景観における樹木種の地域絶滅確率予測
著者: 石田敏,正木隆,宮本麻子,田中宏,中静透
所属: 東北大学大学院生命科学研究科
抄録: 近年、萌芽更新による管理から人工的な植林へと森林施業が変化している日本において、自然林や老齢二次林の伐採は樹木の種多様性を減らす主な原因となっている。私たちは老齢林の保全や伝統的な里山管理への回帰が地域絶滅の回避に重要であると考え、調査地である阿武隈地方の森林景観を対象に、土地利用の変化と、その群集内での種組成変化をマトリクスで表し、両者を組み合わせて19の樹木種の組成変化と地域絶滅確率の予測を行った。また土地利用変化マトリクスの推移確率を変えることで、老齢林を保全するシナリオ、里山管理シナリオを表し、シナリオごとで、どのように景観全体の種組成と地域絶滅確率が変化するかを考察した。計算結果からは、里山管理シナリオでは、撹乱に依存する樹木種の占める優占度が上がったが、地域絶滅確率には変化が見られなかった。一方で老齢林保全シナリオでは、各樹木種の種組成に大きな変化は見られなかったが、ブナ、イヌブナ、イタヤカエデなどの種子による更新を行う樹木種の地域絶滅確率は大きく減少していた。たとえ小面積でも自然林、老齢林を保護することは、里山管理のような継続的な伐採によって淘汰されてしまう種にとっては、地域絶滅を回避するために有効であることが示された。


種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Effects of sika deer browsing on the arthropod communities on understory vegetation in a thinned Japanese cypress plantation
巻頁: J For Res 20 (3): 347-356
題名: 間伐後のヒノキ人工林においてニホンジカの採食が下層植生上の節足動物群集に及ぼす影響
著者: 片桐奈々,肘井直樹
所属: 名古屋大学大学院生命農学研究科
抄録: 間伐から5年経過したヒノキ人工林において、ニホンジカの採食が下層植生上の節足動物群集へ及ぼす影響を明らかにするため、防鹿柵の内外の下層植生とそれを利用する節足動物群集を、二つのスケールで比較した。節足動物にとってのハビタットの量的指標であるプロットあたりの下層植生の体積は、シカの採食によって有意に減少していた。ハビタットを失った植食者および一時滞在者(地衣類・菌食者、腐食者、アリ、食性不明を含む)では、プロットあたりの個体数が有意に減少した。さらに、これら被食者の数が減ったことにより、捕食寄生者を含む捕食者のプロットあたり個体数も比例して減少し、シカによる負の影響がボトムアップ的に波及していた。一方、シカの嗜好性植物上では、シカの採食は、補償作用によって植物体積(m3)あたりの枝葉数を増加させ、ハビタットの質的要素である植物の物理的構造を複雑にしていた。これにより、植食者と一時滞在者の植物体積あたり個体数は増加し、これらの餌が増えたことによって、捕食者の植物体積あたり個体数も増加した。間伐された人工林では、シカは採食によって、節足動物のハビタットの量、プロットあたり節足動物個体数を著しく減少させたが、一方で、植物体積あたりのスケールでは、ハビタットの質を向上させ、節足動物個体数を増加させていた。しかし、こうした植物体スケールにおける正のカスケード的影響も、プロットスケールにおける大きな負の影響によって打ち消され、潜在化していた。


種類: 短報/生物-生態
Title:  The spatial distributions of understory trees in relation to dwarf bamboo cover in a cool-temperate deciduous broadleaf forest in Japan
巻頁: J For Res 20 (3): 357-362
題名: 冷温帯落葉広葉樹林における下層木本種の空間分布とササ被覆の関係
著者: 廣部宗,宮本渉,坂本圭児,近藤順治,音田高志,赤路康朗,山中典和
所属: 岡山大学大学院環境生命科学研究科
抄録: ササは我が国の森林でみられる主要な下層植生の一つであり,下層の高木種実生にたいし生態学的フィルターとして働くことが知られている。しかしながら,ササ被覆が低木も含めた下層木本群落全体におよぼす影響はよくわかっていない。本研究では,ブナが優占する冷温帯落葉広葉樹林のチマキザサ被覆と下層木本群落(胸高直径 < 2cm,高さ ≥ 50cm)を対象とし,これらの空間分布と分布相関をSADIE(spatial analysis by distance indices)により解析した。20m × 240mの区域内に49樹種,11,686幹が出現し,ハイイヌガヤ,クロモジおよびブナの合計幹数が全体の50%を占めた。5m × 5m方形区を単位としてSADIEにより解析した結果,解析対象とした20樹種のほとんどはチマキザサ被覆と有意に排他的な分布相関を示し(P < 0.05),それらの多くは有意な集中分布であった(P < 0.05)。一方,ハイイヌガヤ,クロモジ,ミヤマハハソおよびミヤマイボタは,チマキザサと独立的または有意に同所的な分布相関を示した(P < 0.05)。これらの結果から,ササが持つ生態学的フィルター効果は,高木種実生だけでなく他の下層木本種にも有効であることが示唆された。