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Journal of Forest Research Vol 18, No 3 (2013年6月)

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種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Short-term effects of thinning intensity on scenic beauty values of different stands
巻頁: J For Res 18 (3): 209-219
題名: 異なる林分に実施した間伐強度の違いが景観の価値に与える短期的影響
著者: トウ送求,闫家鋒,関慶偉,加藤正人
所属: 南京林業大学森林資源環境学部
抄録: 森林管理は人間が森林景観への好みに顕著的に影響を与える。本研究は,間伐が森林景観への影響を評価することである。中国南京市無想寺国立森林公園における5つの典型的林分を対象とし,林分ごとに,強度・中度・弱度の間伐と無間伐の対照区の4つの間伐試験を2007年2月から5月に行った。間伐実施から2年後,美景度評価法(Scenic Beauty Estimation, SBE)を使い,異なった間伐強度の森林の景観価値に対し評価した。伝統的な正規分布理論に基づいた美景度評価法の不足を解決するため,加重総和(weighted sum)理論に基づいた美景度評価法を示し,その信頼性を証明した。また,T検定を使い,異なった間伐強度により美景度の差異を解析した。その結果,すべての間伐試験地の美景度が対照区より非常に高かった。強度間伐の試験地の美景度は中度と弱度間伐試験地より著しく高かった。また,中度間伐と弱度間伐試験地の美景度の統計的な差異は見られなかった。最後に,美景度と林分構成要素の回帰モデルを検定した。森林の景観価値は林分密度,開放度と下層林床植生の被覆面積が増加するにつれ,減少した。一方,平均胸高直径や平均樹高が大きく,樹種多様性が増せば林分の美景度を高めた。また,森林ヘのアクセスの良さや綺麗な林内環境が森林の景観価値を高めたことがわかった。

種類: 原著論文/環境
Title:  Effects of super-absorbent polymer on dry matter accumulation and nutrient uptake of Pinus pinaster container seedlings
巻頁: J For Res 18 (3): 220-227
題名: Pinus pinasterコンテナ苗の重量成長と養分吸収におよぼす高吸水性ポリマー添加の効果
著者: Fangchun Liu, Hailin Ma, Xing Shangjun, Zhenyu Du, Bingyao Ma , Jing Dawei
所属: Shandong Engineering Research Center for Ecological Restoration of Forest Vegetation, China
抄録: Super-absorbent polymer (SAP) is a widely studied cross-linked hydrophilic polymer used as water 24 absorbent material. However, little information is available concerning the effects of SAPs on the growth and 25 nutrient accumulation in forest container seedlings. The present study was conducted to quantify the effects of 26 SAP applied with or without fertilizer on the dry matter and nutrient uptake of Pinus pinaster container seedlings 27 determined weekly. SAP addition with fertilizer increased dry matter along with increased seedling emergence 28 time. However, no effect was found by adding SAP alone. Compared with fertilizer only, the accumulation time of 29 nitrogen (N) and potassium (K) was 7 d longer, as a result of SAP addition. The maximum daily N and K 30 accumulations in the fertilized seedlings increased by 9.31% and 10.44%, respectively, whereas those of the 31 unfertilized seedlings did not differ significantly. With or without fertilization, SAP addition had little effect on 32 phosphorous (P) uptake, except for an increase in the maximum daily P accumulation under fertilized conditions. 33 The shoot and root of P. pinaster with SAP had 8.61% and 13.70% higher yields, respectively, than those that 34 received fertilizer only. Compared with fertilizer only, SAP addition with fertilizer increased the N and K contents 35 of P. pinaster by 7.15% and 10.04%, respectively, whereas the P content did not differ significantly. Under 36 fertilized conditions, N, P and K uptake increased by 17.17%, 10.13% and 20.33%, respectively, from SAP 37 addition, whereas there was no effect on unfertilized seedlings. Hence, SAP could be used as a nutrient absorption 38 enhancer (mainly N and K) in forest container seedlings, aside from being a water absorbent material.

種類: 原著論文/環境
Title:   pH and substrate regulation of nitrogen and carbon dynamics in forest soils in a karst region of the upper Yangtze River basin, China
巻頁: J For Res 18 (3): 228-237
題名: 中国長江上流域カルスト地域における森林土壌の窒素および炭素動態の土壌pHと有機物による規制
著者: 田野,高梨清美,戸田浩人,生原喜久雄,丁訪軍
所属: 南京林業大学森林資源・環境学院
抄録: 窒素(N)は森林の生育を制限する最も重要な養分である。本研究では,カルスト地域の封山育林地における森林土壌の自然なpH勾配を用い,Nおよび炭素(C)無機化特性値への土壌pH,全N・全CおよびC/Nの影響を調査した。土壌の可分解性窒素量(N0)が全体的に少なく,全N量に占める割合(N0/全N)も低く,窒素の可給性は乏しかった。しかし,窒素無機化の反応速度定数(kN)が高く,土壌微生物の分解活性は高いことが示唆された。N0は土壌pH,全Cおよび全Nと正の相関が認められた。重回帰分析より,N0は土壌pHより全CN(全Cと全Nの積)およびC/Nに強く影響され,kNおよび炭素無機化の反応速度定数(kC)は土壌pHに強い影響を受けていることがわかった。したがって,土壌の窒素供給力は土壌有機物に規制され,土壌微生物の分解活性はpHに規制されていたといえる。また,土壌pH5.5以下で硝化活性の低下とC0/N0比の上昇が見られ,pH5.5は酸性化で土壌微生物相が変化する指標になると考えられた。今後,土壌pHの低下による土壌微生物相の変化と,土壌有機物の分解および養分供給力への影響を解明していく必要がある。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:   Evaluation of the wave attenuation function of a coastal black pine Pinus thunbergii forest using the individual-based dynamic vegetation model SEIB-DGVM
巻頁: J For Res 18 (3): 238-245
題名: 個体ベース植生動態モデルSEIB-DVGMを用いたクロマツ林の波高減衰機能の評価
著者: 諏訪錬平
所属: 琉球大学理学部
抄録: 個体ベース植生動態モデルを用いて,異なる植栽密度条件下のクロマツ林の波高減衰機能を評価した。野外調査によって得た平均幹直 径と個体密度のデータに基づき,150年間の林分動態の予測を行った。林分が有する波高 (m)の減衰機能の評価を行うために,ドライベットの陸上に発生した線形長波を想定した。 の減衰は以下の式によってあらわされた;。ここで,ηt0x,およびkiは初期波高 (m),距離 (m),波高減衰係数 (m−1)である。なお,kiは波による樹木の倒伏を考慮して推定された。結果として,kiを最大化する適齢期が存在すること,適齢期は波高に依存すること,最大kiは波高が高くなると低下することが,構築されたモデルによって確認された。低い波高(< 3 m)を想定した際,植栽密度を0.5 から4.0 m-2まで変化させると,最大kiは劇的に変化した。例えば,波高2 mにおいては初期密度の増加に対して最大kiは0.008から0.031m-1まで増加した。また,比較的低い植栽密度を設定すれば比較的高い波高 (> 4 m)に効果的な森林を迅速かつ効率的に造成できる可能性が示唆された。結論として,海岸林の波高減衰機能を最大限発揮させるためには,定期的な伐採と再造林が必要であること,および迅速かつ効果的に防潮林を設置するために植栽密度の調整が効果的であることが示された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:   Frequent fires may alter the future composition of the boreal forest in northern Mongolia
巻頁: J For Res 18 (3): 246-255
題名: モンゴル北部の北方林において火災の頻発が将来の樹種構成を変化させる可能性
著者: 音田高志,土井孝大,坂本圭児,廣部宗,Baatarbileg Nachin,吉川賢
所属: 岡山大学大学院環境学研究科
抄録: モンゴル北部の北方林において火災の頻発が森林の樹種構成に及ぼす影響を明らかにするため,優占する4樹種(シラカンバ,シベリアカラマツ,シベリアトウヒおよびシベリアマツ)の繁殖方式,火災後に種子供給源となる母樹の位置および更新立地などの更新様式を調査した。更新様式はシラカンバ,シベリアカラマツおよび常緑針葉2樹種間で異なっており,シラカンバは近接母樹の有無に関わらず火災後にのみ活発に更新していたが,シベリアカラマツの火災後の更新には近接母樹の存在がシラカンバに比べてより重要であった。また,これらの2樹種は火災を受けていない成熟林では母樹が存在しても更新していなかった。一方,常緑針葉2樹種については火災後の更新は全くみられなかったが,成熟林では継続的に更新していた。不法な伐採搬出を伴う火災の頻発は,焼失面積の増大や火災後に種子供給源となる近隣母樹の不在を招く恐れがある。焼失面積の増大は,火災かく乱に依存して更新するシラカンバの更新機会を増加させるだろう。また,シラカンバは種子散布距離が長く,萌芽更新も可能なため,近隣母樹の不在による影響が他樹種に比べて小さいと考えられる。そのため,モンゴル北部の北方林における火災の頻発は,シラカンバの優占率を高め,常緑針葉樹を駆逐してしまう可能性がある。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:   Within- and between-site variations in leaf longevity in hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa) plantations in southwestern Japan
巻頁: J For Res 18 (3): 256-269
題名: 西南日本のヒノキ人工林における葉寿命のサイト内,サイト間の変動
著者: 宮本和樹,奥田史郎,稲垣善之,野口麻穂子,伊藤武治
所属: 森林総合研究所四国支所
抄録: ヒノキ人工林における林分レベルの葉寿命の地域的および局所的な変動に影響を及ぼす要因を明らかにするため,葉の平均滞留時間を調べた。調査地は西南日本の低標高域の6林分(標高320-370 m)と高標高域の12林分(標高850-970 m)である。地域スケールにおける葉寿命の変動およびその環境要因との関係については,様々な標高で得られた葉寿命に関する過去の文献データも利用した。地域スケールでは,標高の上昇,気温の低下,生育期間の短縮,温かさの指数の減少に伴い葉寿命は長くなった。同様の傾向が葉の現存量の変動においても得られた。局所スケールにおいて葉寿命は,微地形,土壌含水率,土壌のCN比と明瞭な関係を示さなかった。しかし,統計的有意水準はマージナルであるものの,葉寿命は生葉のCN比とは負の相関を示した。これは葉の養分利用環境が良好なほど葉寿命が長くなることを示唆している。本研究の結果から,ヒノキ人工林における葉寿命の環境要因に対する応答は局所スケールよりも地域スケールにおいて顕著であった。ただし,地域スケールと同様に局所スケールにおいても葉寿命の変動は大きかった。地域スケールにおいては気温と生育期間の長さが葉寿命の変動に影響を与える主な要因と考えられた。一方,局所スケールにおける葉寿命の変動を説明する要因は未解明である。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:   Patch isolation only matters for specialist butterflies but patch area affects both specialist and generalist species
巻頁: J For Res 18 (3): 270-278
題名: 分断化景観における蝶類を用いた島嶼生物地理学理論の検証:パッチ面積・孤立度への反応はスペシャリスト種とジェネラリスト種で異なる
著者: 曽我昌史,小池伸介
所属: 東京農工大学農学部
抄録: MacArthurとWilsonによる島嶼生物地理学理論(海洋に浮かぶ島々の生物群集を,島の面積と大陸からの距離で予測する理論)が提唱されてから40年以上経った。本研究では,都市化による森林の分断化が著しい東京都多摩地域において,蝶類を対象に島嶼生物地理学の検証を行った。蝶類は食性幅,季節性,パッチ依存性の3軸でスペシャリスト種とジェネラリスト種の分類を行った。解析には一般化線形モデルを用い,パッチにおける蝶類種数に対してパッチ面積と孤立度(大規模な森林からの距離)が及ぼす影響を評価した。AICcを基準としたモデル平均を行った結果,パッチ面積はスペシャリスト種とジェネラリスト種の両方に有意な正の影響を及ぼすことが明らかとなった。一方,孤立度はスペシャリスト種のみ負の影響を及ぼすことが明らかとなった。本研究の結果から,蝶類は機能群ごとに異なる分布・個体群動態を示す可能性,さらにジェネラリスト種はスペシャリスト種の本来の分布パターンを隠してしまうことが示唆された。今後,陸域の分断化景観において,島嶼生物地理学理論を応用する際には,パッチ面積と孤立度が持つ本来の影響を過小評価しないように十分気をつける必要があるだろう。

種類: 短報/生物-生態
Title:   Effects of warming basal ends of Carolina poplar (Populus × canadensis Moench.) softwood cuttings at controlled low-air-temperature on their root growth and leaf damage after planting
巻頁: J For Res 18 (3): 279-286
題名: 低気温制御下における挿し穂基部への加温処理がカロリナポプラ(Populus × canadensis Moench.)の緑枝挿しにおける発根および葉の損傷に及ぼす影響
著者: 渋谷俊夫,佃修平,徳田綾也子,塩崎修志,遠藤良輔,北宅善昭
所属: 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科
抄録: 低気温制御下での挿し穂基部への加温処理がカロリナポプラ(Populus × canadensis Moench.)の緑枝挿しにおける発根および葉の損傷に及ぼす影響を調べた.加温処理は,気温10ºC,光合成有効光量子束密度(PPFD)10 µmol m-2 s-1(気温10ºCにおける光補償点付近)の冷蔵室において,挿し穂の下端部10 mmを30ºCの水に浸けることで施し,発根がみられるまで継続した.加温処理を施した挿し穂を,気温30ºC,相対湿度85-90%およびPPFD100 µmol m-2 s-1に制御したグロースチャンバーで育成した.対照区の挿し穂は試験期間を通して気温30℃のグロースチャンバーで育成した.発根は加温処理を施した試験区と対照区でほぼ同時にみられ,発根までの期間に気温は影響しなかった.育成開始後における根の成長速度は加温処理を施した試験区において対照区よりも大きく,褐変の程度から評価した葉の損傷度は加温処理を施した試験区において対照区よりも小さかった.加温処理を施すことで葉の損傷が軽減されたのは,加温処理によって育成開始前に根の発達が促されたことで,育成開始後における水ストレスおよび葉の老化が軽減されたためと考えられる.本技術は,屋外の気象条件に関係なく冷蔵室内において最小限の炭水化物の消費で挿し穂の発根準備を完了させることができることから,樹木の挿し木繁殖効率の向上に寄与するものと考えられる.