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Journal of Forest Research Vol 18, No 1 (2013年2月)

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種類: 特集/巻頭言
Title:  Lessons learned from CarboEastAsia: Carbon and water cycles in East Asian terrestrial ecosystems
巻頁: J For Res 18 (1): 1–3
題名: CarboEastAsiaで学んだこと:東アジア陸域生態系における炭素・水循環
著者: Joon Kim,平野高司,Guirui Yu,玉井幸治
所属: Department of Landscape Architecture and Rural Systems Engineering,Seoul National University,Korea

 

種類: 特集/原著論文
Title:  Nocturnal isoprene emission from mature trees and diurnal acceleration of isoprene oxidation rates near Quercus serrata Thunb. leaves
巻頁: J For Res 18 (1): 4–12
題名: 成木からの夜間イソプレン放出とコナラ葉付近における日中のイソプレン酸化速度の加速
著者: 深山貴文,奥村智憲,小南裕志,吉村謙一,安宅未央子,谷晃
所属: 森林総合研究所関西支所
抄録: コナラは中国,朝鮮半島,日本に広く分布するナラ類であり,強いイソプレンの放出源となっている。植生起源揮発性有機化合物(BVOC)放出量インベントリを整備し,これを考慮した正味炭素収支量の推定を行うために,その放出特性の評価が必要とされている。特にイソプレンはBVOCの主成分であり,二次有機エアロゾルの前駆体と考えられることから,その光酸化特性が注目されている。そこで本研究では,イソプレンのフラックスの変動特性と酸化消失過程の解明を目的とし,陽イオン移動反応質量分析計(PTR-MS),葉群用,土壌用の自動開閉チャンバー,簡易渦集積法(REA法)を組み合わせて,暖温帯のコナラ林内で葉面,土壌面,群落フラックスを同時に連続観測するシステムを開発した。葉群チャンバーによる連続観測では,イソプレン放出量の日変化に加え,夜間にも連続的な放出が観測された。この夜間放出量は日放出量の25%以上であり,日没時に高く,夜明け時に低かった。これにより野外の成木からは夜間にも無視できない量のイソプレンが放出されている可能性が示唆された。また群落放出量は,日中の葉面放出量が高くなる時間帯に上限値で頭打ち傾向となっていた。この頭打ち傾向は,イソプレンと酸化物の濃度変化と傾度の観測結果からイソプレンの酸化速度が加速して生じていることが示唆されており,続いて生じる二次有機エアロゾルの生成も葉面付近でイソプレンの放出直後に行われている可能性が考えられた。今後,同時多点フラックス観測システムを用いることで,さらにこれらの関係性を解明していく必要性がある。

 

種類: 特集/原著論文
Title:  Site-level model–data synthesis of terrestrial carbon fluxes in the CarboEastAsia eddy-covariance observation network: toward future modeling efforts
巻頁: J For Res 18 (1): 13–20
題名: CarboEastAsia観測ネットワークにおける陸域炭素フラックスのモデル–データ統合解析:今後の陸域モデル研究に向けて
著者: 市井和仁,近藤雅征,Young-Hee Lee,Shao-Qiang Wang,Joon Kim,植山雅仁,Hee-Jeong Lim, Hao Shi,鈴木孝,伊藤昭彦,Hyojung Kwon,Weimin Ju,Mei Huang, 佐々井崇博,浅沼順,Shijie Han,平野高司,平田竜一,加藤知道,Sheng-Gong Li,Ying-Nian Li,前田高尚,宮田明,松浦陽次郎,村山昌平,中井裕一郎,太田岳史,斎藤琢,三枝信子,高木健太郎,Yan-Hong Tang,Hui-Min Wang,Gui-Rui Yu,Yi-Ping Zhang,Feng-Hua Zhao
所属: 福島大学共生システム理工学類
抄録: CarboEastAsiaデータセットに含まれる24の観測サイトを対象に陸域生物圏モデルの出力と観測された炭素フラックスを比較し,アジア域における陸域生物圏モデルの精度評価と今後のモデル・観測の課題の検討を行った。8種類の陸域生物圏モデルを用いて,1901年~2010年までのモデルシミュレーションを行った。炭素フラックス(総一次生産量・生態系呼吸量・生態系純交換量)の季節変動のパターンと振幅の大きさについては,温帯林・亜寒帯林において観測とモデル結果がよく一致した。一方で,熱帯林・耕作地・攪乱のあったサイトに関しては,モデル結果と観測の開きが大きかった。複数モデルのアンサンブル平均値は個々のモデルよりも観測に対して小さい誤差・高い相関を示し,炭素収支の評価にはモデルのアンサンブル平均を取ることが有効であると示唆された。現在の個々の陸域炭素循環モデルによる炭素収支の推定結果には大きな不確実性が存在し,今後,モデル改善や陸域炭素収支の再評価が必要であることが明らかとなった。

 

種類: 特集/原著論文
Title:  Substantial amounts of carbon are sequestered during dry periods in an old-growth subtropical forest in South China
巻頁: J For Res 18 (1): 21–30
題名: 中国南部における老齢亜熱帯林では乾季に炭素が蓄積されている
著者: Junhua Yan,Xingzhao Liu,Xuli Tang,Guirui Yu,Leiming Zhang,Qingqing Chen,Kun Li
所属: South China Botanical GardenChinese,Academy of Sciences,China
抄録: A number of continuous eddy covariance measurements and long-term biomass inventories had proved that old-growth forests are carbon sinks worldwide. The present study estimated the net ecosystem productivity (NEP) for an old-growth subtropical forest at the Dinghushan Biosphere Reserve in South China to investigate the temporal pattern of carbon sequestration, both seasonally and annually. The measured NEP over 7 years (from 2003 to 2009) showed that this forest was a net carbon sink, ranging from 230 (in 2008) to 489 g C m−2 year−1 (in 2004). The greatest value of NEP was found in the driest year and the lowest value in the wettest year during the study period. Within a year, NEP during the dry season was about 81.4 % higher than for the wet season. Accordingly, the dry season at seasonal scale and dry years at interannual scale are key periods for carbon sequestration in this forest. The strong seasonality of ecosystem or soil respiration (ER or SR) compared with gross primary productivity (GPP) resulted in substantial amounts of carbon being sequestered during dry seasons. A decrease of GPP and an increase of ER or SR demonstrated the lower carbon uptake in rainy years. From this study, we conclude that GPP and living biomass carbon increment are not overriding parameters controlling NEP. The variations in ER or SR driven by the rainfall scheme were the dominant factor determining the magnitude of NEP in this forest in South China.

 

種類: 特集/原著論文
Title:  Evaluation and improvement of MODIS gross primary productivity in typical forest ecosystems of East Asia based on eddy covariance measurements
巻頁: J For Res 18 (1): 31–40
題名: プロセスベースの生態系モデルによる広葉樹-チョウセンゴヨウ林の炭素フラックス計算値の不確実についての解析
著者: Mingzhu He,Yanlian Zhou,Weimin Ju,Jingming Chen,Li Zhang,Shaoqiang Wang,三枝信子,平田竜一,村山昌平,Yibo Liu
所属: International Institute for Earth System Science,Nanjing University,China
抄録: 総一次生産力(Gross primary productivity, GPP)は,大気と陸域生態系の炭素交換における主要な項目であり,地球の炭素循環の重要な要素である。生態系がきわめて空間的に不均一であり時間的にも変化するために,GPPを全球規模あるいは地域規模で正確に評価することは難しい。MODerate resolution Imaging Spectroradiometer (MODIS)の8日ごとのプロダクトは,全球規模でリアルタイムに近いGPPの値を提供する。しかし従来の研究によると,MODIS GPPは大きな不確実性を持っており,それは部分的にはパラメタリゼーションとフォーシングデータに含まれるバイアスによって生じることがわかっている。本研究では,MODIS GPPを,東アジアの5つの典型的な森林サイトにおいて,渦相関法によるフラックス観測で得られたデータを使って検証した。検証の結果,東アジアの森林生態系,特に北方のサイトにおいて,MODIS GPPは顕著に過小評価されることががわかった。観測された気象データ,平滑化したMODIS葉面積指数を使って求めた植物キャノピーにより吸収される光合成有効放射量の割合(fPAR),およびMOD17アルゴリズムに強制的に与えるために最適化された最大光利用効率(εmax)を使用することにより,予測されたGPPとタワーで得られたGPPの一致は著しく改善された。東アジアのこれらの森林生態系におけるMODIS GPPの誤差は,まずεmaxの不確実性により,次にfPARと気象データの不確実性によって引き起こされた。キャノピーにおいて陽葉と陰を分け,それぞれにGPPを計算することは,GPPのシミュレーションを著しく改善する場合がある。

 

種類: 特集/原著論文
Title:  Dataset of CarboEastAsia and uncertainties in the CO2 budget evaluation caused by different data processing
巻頁: J For Res 18 (1): 41–48
題名: CarboEastAsiaデータセット,および異なるデータ処理法によって起こるCO2収支評価の不確実性
著者: 三枝信子,Sheng-Gong Li,Hyojung Kwon,高木健太郎,Lei-Ming Zhang,井手玲子,植山雅仁,浅沼順,Young-Jean Choi,Jung Hwa Chun,Shi-Jie Han,平野高司,平田竜一,Minseok Kang,加藤知道,Joon Kim,Ying-Nian Li,前田高尚,宮田明,溝口康子,村山昌平,中井裕一郎,太田岳史,斎藤琢,Hui-Ming Wang,Gui-Rui Yu,Yi-Ping Zhang,Feng-Hua Zhao
所属: 国立環境研究所地球環境研究センター
抄録: 国際共同研究プログラム「CarboEastAsia」の一環として,渦相関法によって観測された生態系純CO2交換量(net ecosystem CO2 exchange, NEE)のデータセットが,アジア東部の21箇所の森林,3箇所の草地,および3箇所の耕作地から集められた。CarboEastAsia は,アジア東部の炭素収支を定量化し,統合し,理解するためにアジアの3つのネットワーク(ChinaFLUX,JapanFlux,およびKoFlux)によって実施されたプログラムである。まずNEE評価の不確実性を調べるため,ChinaFLUX,JapanFlux,およびKoFluxが使用している3種類の欠測補完法によって算出されたNEEの相互比較を行った。3種類の結果は,NEEの季節変化パターンに関してはおおむね一致したが,冬季にはデータスクリーニング方法の違いに依存していくらかの系統的な差がみられた。次に欠測補完されたデータセットに基づいて,アジア全域のさまざまなバイオームタイプ,フェノロジー,ストレス条件下にある生態系の炭素収支の大きさと季節性を比較した。総一次生産量および生態系呼吸量の年間値は,年平均気温にほぼ比例した。皆伐や植林,人為的な排水といった森林管理は,森林の年間炭素吸収量に対してきわめて明瞭な影響を与えた。農地管理は,耕地サイトの炭素収支に特徴ある季節変化パターンを生じさせた。さまざまなバイオームタイプで得られたデータセットは,生態系の科学を発展させるための重要な知識の源になり得ると同時に,アジアにおける最新の炭素収支評価を行うためのモデル開発とリモートセンシングのための貴重な検証データとなる。

 

種類: 特集/原著論文
Title:  Vertical soil–air CO2 dynamics at the Takayama deciduous broadleaved forest AsiaFlux site
巻頁: J For Res 18 (1): 49–59
題名: 高山落葉広葉樹林アジアフラックスサイトにおける土壌空気中CO2の鉛直ダイナミクス
著者: 米村正一郎,横沢正幸,櫻井玄,岸本文紅,李美善,村山昌平,石島健太郎,白戸康人,小泉博
所属: 森林総合研究所関西支所
抄録: 高山落葉広葉樹林アジアフラックスサイトでは,20年以上の長きにわたり炭素循環研究が進められている。鉛直CO2動態を体系的に理解するため,非分散型CO2センサーをフラックスタワーの下の土壌内に2005年に設置した。2005年6月から2006年5月までの土壌空気中のCO2濃度は,7月に最大値となり,冬季に最小となったが,これは同時に通気式チャンバー法で測られた土壌CO2フラックスと同様な変化を示した。5 cmから50 cmまでの土壌空気中のCO2濃度は土壌深度とともに大きく夏季には2000 ppmから8000 ppm,積雪下にあった冬季には2000 ppmから3000 ppmであった。夏季の濃度は,日や週スケールで土壌水分と正の相関があったが,Oi, Oe, A層での有機物分解が高水分条件で促進されCO2放出に向いたということを示している。このことは,これらの層でのCO2放出の寄与が大きいことやCO2の滞留時間が2時間程度であるといった拡散モデルで評価した結果と辻褄があう。我々は,冬季の土壌空気中CO2濃度が積雪深と風速に相関があることをはじめて明らかにした。雪を通したCO2の輸送は土壌内での拡散係数より数百倍より大きかった。我々の評価では,積雪期のCO2放出は過去の高山サイトでの推定よりもずっと大きく,このサイトでの炭素動態に積雪期がより重要であることが明らかになった。

 

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Factors affecting participation of user group members: comparative studies on two types of community forestry in the Dry Zone, Myanmar
巻頁: J For Res 18 (1): 60–72
題名: 森林利用者グループの参加に影響を与える要因:ミャンマー乾燥地帯における2つのタイプのコミュニティ林業の比較研究
著者: イイ・スウェ・ライン,井上真
所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科
抄録:  本稿では,ミャンマー乾燥地帯におけるコミュニティ林業の事例から,森林利用者集団メンバーによるプロジェクト実施段階への参加を得るための要因を実証的に示した。とりわけ,影響力のある2つのタイプのコミュニティ林業(アグロフォレストリータイプと自然林タイプ)の共通点と相違点を明らかにした。4つの利用者集団の54世帯を対象とする半構造的インタビュー,キーインフォーマントインタビュー,インフォーマルインタビュー,直接観察によりデータを収集した。そして,社会的・制度的要因,経済的要因,物理的要因が参加に影響を与えることを示すフレームワークを活用してデータの分析をおこなった。その結果,社会的・制度的要因が両タイプに対して影響力を持っていたのに対して,経済的要因が参加の誘因となるのはアグロフォレストリータイプのみであることがわかった。リーダーの選任といった前提条件は,正当なリーダーシップとは何かについて認識を共有する地元の文脈に合うものでなければならない。森林局が利用者グループメンバーと協力し,アグロフォレストリータイプのコミュニティ林業からの森林産物の利用と販売に関する情報を与えること,および乾燥林の管理に利用者グループが継続して参加するためのインセンティブ(安定した所有権)を与え頻繁にコミュニケーションをとること,が推奨される。

 

種類: 原著論文/環境
Title:  Evapotranspiration and deep percolation of a small catchment with a mature Japanese cypress plantation
巻頁: J For Res 18 (1): 73–81
題名: ヒノキ壮齢人工林からなる小流域における蒸発散量と深部浸透量
著者: 髙木正博
所属: 宮崎大学農学部
抄録: ヒノキ壮齢人工林における流域レベルの水収支,特に深部浸透量を定量的に把握するために,降水量,樹冠遮断量,地表面蒸発量,蒸散量,および渓流流出量を1年間にわたり九州南部の山地源頭部小流域で測定した。流域面積は0.41 ha,基岩は堆積岩であった。樹冠遮断量は降水量,林内雨量および樹幹流量から算出し,地表面蒸発量はライシメータを用いて,蒸散量はヒートパルスセンサーを用いて測定した。これらの測定結果を用いて深部浸透量を算出した。年間水収支は降水量の約半分が渓流流出量であり,また約3分の1が蒸発散量であった。遮断蒸発量はKomatsu et al.(2007)による壮齢針葉樹人工林のモデル推定値とほぼ同程度であったが,蒸散量はモデル推定値より低くなった。蒸発散量は損失量(降水量と渓流流出量の差)より小さかった。これらより深部浸透量は降水量の約4分の1と推定され,この割合は既存の堆積岩流域における推定値より高い値であった。

 

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Influences of anthropogenic disturbances on the dynamics of white birch (Betula platyphylla) forests at the southern boundary of the Mongolian forest-steppe
巻頁: J For Res 18 (1): 82–92
題名: モンゴル国森林ステップ地域の南限に生育するシラカンバ林の動態に対して人為かく乱が与える影響
著者: 音田高志,坂本圭児,廣部宗,Jamsran Undarmaa,吉川賢
所属: 岡山大学大学院環境学研究科
抄録: モンゴル国の森林ステップ地域の南限に生育するシラカンバ優占林の動態に対するかく乱の影響を明らかにするため,年輪生態学的手法を用いて,近年のかく乱の形跡が見られなかった3つの林分と,伐採や火災の痕跡が見られた4つの林分の樹木の更新と枯死の傾向を調べた。かく乱を受けていない林分では,1910年から1950年の間に明確な更新のピークが見られたが,その後の更新は見られなかった。その一方で,かく乱を受けた林分では,1960年から1980年の間にも,主に萌芽による更新が見られた。立ち枯れ木の割合はかく乱を受けていない林分で高く,それらの立ち枯れ木の平均寿命は70年以上であった。それらの林分における高い枯死率は,光競争による小個体の枯死と,老衰による大個体の枯死の両方に起因すると考えられた。これらの結果から,かく乱を受けていない林分は過去半世紀にわたる更新の不成功と,近年における老齢木の高い枯死率により,衰退の危機に瀕していると考えられた。一方でかく乱を受けた林分は,1960年から1980年の間に更新した若齢集団によって,数十年間は維持されるだろう。カンバ類のかく乱に依存した更新特性と比較的短い寿命を考えると,モンゴル国の森林ステップ地域の南限に生育するシラカンバ林は,比較的短い間隔で起きる定期的なかく乱によって維持されてきたのかもしれない。

 

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  A geostatistical approach to spatial density distributions of sika deer (Cervus nippon)
巻頁: J For Res 18 (1): 93–100
題名: 地球統計学的な空間予測手法によるニホンジカ(Cervus nippon)生息密度分布の解析
著者: 近藤洋史,小泉透,池田浩一
所属: 森林総合研究所九州支所
抄録: ニホンジカ(Cervus nippon,以下シカ)は,日本の森林に多大な被害を与えている。シカによる森林被害には,枝葉採食害,樹皮剥皮害等があり,この10年間で,野生鳥獣による被害面積の50%を占めている。シカによる被害強度は,生息密度に依存している場合が多い。そこで,福岡県の英彦山を中心とした地域を対象として,シカの生息密度分布を明らかにした。さらに,時間的経過による生息密度分布の推移についても解析した。シカ生息密度の推移要因として,捕獲を中心に解析した。シカ生息密度は1999年と2004年に糞粒法によって,86箇所で調査された。広範囲にわたる調査箇所のポイントデータを空間補間するために,地球統計学の解析手法の一つであるkriging法を,GIS(Geographical Information System:地理情報システム)に応用した。生息密度分布は,1999年から2004年の間に,30頭/km2以上の高密度地域と10頭/km2の低密度地域が減少していた。高密度地域では強度の捕獲が,低密度地域では弱度の捕獲が行われた地域であった。このような地域による狩猟圧の違いにより,10頭/km2から30頭/km2の生息密度である中密度地域が拡大し,野生生物管理という課題をさらにむずかしくしていると思われる。シカによって引き起こされる問題の大きさを考えるならば,空間と時間に対する信頼性の高い生息密度分布の予測手法は,野生生物管理者の基本的な解析手法となりうるであろう。

 

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Occurrence probabilities of tree cavities classified by entrance width and internal dimensions in hardwood forests in Hokkaido, Japan
巻頁: J For Res 18 (1): 101–110
題名: 北海道の広葉樹林における入口と内部の大きさで分類した樹洞の発生確率
著者: 小野寺賢介,徳田佐和子,阿部友幸,長坂晶子
所属: 北海道立総合研究機構林業試験場
抄録: 様々な大きさの樹洞の利用可能量を推定するため,北海道の8つの落葉広葉樹林で,樹洞を入口幅によって2区分(小,2.5~5 cm;大,≥5 cm)に分類して記録した。そのうち,2つの広葉樹林では樹洞内部も計測し,その大きさによってさらに3区分に分類した(浅,中,深)。そして,異なる大きさの樹洞それぞれの発生確率を樹木個体レベルで推定した。すべての樹種で,胸高直径の増加とともに小と大の樹洞の累積発生確率は増加した。しかし,エゾイタヤと立枯れ木を除いて,大の樹洞の発生確率は胸高直径40 cmでも0.08以下しかなかった。立枯れ木は生立木より樹洞発生確率が高かった。樹洞の内部が深もしくは中である確率は,胸高直径と樹洞入口が大きいほど,樹洞入口が低い位置にあるほど高かった。樹洞の発生確率は樹洞の大きさによって大きく異なるので,様々な樹洞利用生物のために樹洞利用可能量を推定する際,入口と内部の大きさで分類することで,より信頼性の高い推定ができる。

 

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Secondary forest floristic composition, structure, and spatial pattern in subtropical China
巻頁: J For Res 18 (1): 111–120
題名: 中国の亜熱帯二次林の種構成,林分構造および空間分布
著者: Wenhua Xiang,Shaohui Liu,Xiangdong Lei,Shane C. Frank,Dalun Tian,Guangjun Wang,Xiangwen Deng
所属: Faculty of Life Science and Technology,Central South University of Forestry and Technology,China
抄録: Secondary evergreen broadleaved forests are precious remnants for biodiversity conservation and templates for sustainable management of natural forests in subtropical China. Floristic composition, size structure, and spatial pattern of dominant tree species have been investigated for a subtropical secondary evergreen broadleaved forest in the Huitong Yingzuijie National Forest Reserve, Hunan, China. The location of all trees greater than 4 cm in diameter at breast height (DBH) were mapped within a 0.96-ha plot in which species, DBH, and total tree height were recorded. Ripley’s K(t) function was used to analyze spatial patterns and associations. The secondary forest consisted of 74 tree species and 1,596 stems per hectare. A reverse-J shaped DBH classes distribution was observed for all stems and trees of later seral species whereas trees of earlier successional species were distributed irregularly. Significant aggregated spatial patterns were observed for all trees within the forest and for conspecific trees of each dominant species. This result, and a repulsive spatial pattern for interspecific trees of Choerospondias axillaries and Cyclobalanopsis glauca against other dominant tree species, support segregation hypothesis. Contributions of seed dispersal, topographic heterogeneity, and competition to spatial patterns of conspecific trees vary depending on tree species. Attractive spatial pattern among interspecific trees of Liquidambarfortunei, Liquidambarformosana, and Pinusmassoniana reflects stochastic colonization of pioneer tree species and a facilitation relationship. Although deciduous species are long-lived and persist over long successional processes, they will eventually be replaced by late seral evergreen species within the secondary forest if no disturbance events occur.

 

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Does sika deer overabundance exert cascading effects on the raccoon dog population?
巻頁: J For Res 18 (1): 121–127
題名: ニホンジカの高密度化はタヌキ個体群にカスケード効果をもたらすのか?
著者: 關義和,小金澤正昭
所属: 東京農工大学大学院連合農学研究科
抄録: 栃木県の奥日光では,生息地の構造がニホンジカ(Cervus nippon;以下,シカ)の高密度化により大きく変わってしまっている。本地域では,シカの採食圧から植生を保護するために約15 km(900 ha)の防鹿柵が2001年に設置された。そのため,柵内の林床はシカの主要な食物であるミヤコザサ(Sasa nipponica;以下,ササ)が優占するが,柵外では林床のほとんどがシカの忌避植物であるシロヨメナ(Aster ageratoides leiophyllus)や裸地に置き換わっている。本研究では,雑食性の食肉目であるタヌキ(Nyctereutes procyonoides)へのシカのボトムアップカスケード効果を明らかにするために,まずタヌキの主要な食物資源である地表性の昆虫類とミミズ類へのシカの影響について調べた。シカによる影響は,これら無脊椎動物の現存量を柵内外で比較することにより評価した。現存量は,2008年の7月から9月にかけて,昆虫類はピットホールトラップにより,ミミズ類はハンドソーティング法により調べた。ミミズ類と昆虫類(コガネムシ科とカマドウマ科)の現存量は,柵内のササ型林床よりも柵外のシロヨメナ型林床または裸地型林床(またはその両方)において多かった。これらの結果は,シカの高密度化が植生改変や糞量の増加を通してこれら無脊椎動物の個体数を増加させた可能性を示唆する。また,ライトセンサスによるタヌキの目撃率は柵内よりも柵外で高かった。したがって,少なくとも昆虫類とミミズ類がタヌキに高頻度に利用される5月から11月にかけて,シカはタヌキにボトムアップのカスケード効果を及ぼしていると結論する。