2011 年11 月17 日 日本農学会 会長 大熊 幹章
去る3月11日、東北地方太平洋沖で発生した巨大地震、続いて起こった大津波により東日本の沿岸地域を中心に農林水産業は未曾有の被害を受けました。大震災から6ヶ月を経てようやく復興庁が新設され、復興政策の実施がいよいよ本格化されるなど、少しずつ復興、復旧への動きが加速してきました。一方、東京電力福島第一原子力発電所の事故については、放射性物質の放出、環境放射能の変動と分布、放射性物質の降下、森林・土壌の汚染などの状況がほぼ明らかにされ、同時に原子炉の冷却が進み、いずれの炉でも100℃以下の冷温状態が維持され、更なる放射性物質放出の恐れは大幅に後退しました。各地域で除染などを進め、生活・産業両面における早期の復旧を具体化する段階に入りました。
農林水産業が受けた震災被害と放射能汚染という双方の問題に関して知見を集積してきた農学部門の各研究者は、震災発生直後から有益な情報の発信を続けるとともに、政府の農林水産業関連調査の中心的な役割を果たし、また、関係都道府県が行う調査研究を積極的に支援してきました。
さて、日本農学会は、狭義の農学はもとより農芸化学、獣医・畜産学、水産学、林学、農業工学・農業経済学など広い分野をカバーする51の農学系学会の連合体であり、東日本大震災に関しても会員学会間の情報交換に努め、各学会活動の集約、支援を行ってきたところですが、社会に対する農学の窓口になる役割についても深く認識してきました。そこで、大震災発生から6 ヶ月を経過した段階で、会員学会の中から代表者に出ていただき、ワーキンググループを設置し、農林水産業が受けた被害の実態について「認識」と「理解」を共有し、今後の復旧・復興に対する「テクニカル リコメンデーション」を取りまとめました。
「認識」は、調査データから適格に実態を示すものを選びました。これは専門を異にする日本農学会の会員が、この課題を取り扱うときの背景や論理の前提を確認することに役立つであろうし、めまぐるしい報道の中で、社会が次々と忘れ去る事実経過を再確認するのに有用であると考えます。
「理解」は、日本農学会の会員の調査研究より得られた知見、認識した事実から生ずる農林水産業の問題に関し、枢要な科学的理解を述べたものです。その際、記述は科学的裏付けのあるものに限りました。「テクニカル リコメンデーション」は、実態を認識し、その科学的理解に基づいた問題解決のための技術を提示したものです。現場には固有の問題が多々あり、解決の方途も現実的に定まるでしょうが、その方向を探るとき、このテクニカル リコメンデーションが参考になれば幸いと考えます。
日本農学会は、ここに、「東日本大震災からの復興へ向けて−被害の認識と理解、復興へのテクニカル リコメンデーション−」を公表いたします。
「東日本大震災からの農林水産業の復興に向けて―被害の認識と理解、復興へのテクニカル リコメンデーション―」より抜粋
詳しくは<http://www.ajass.jp/disaster.html>をご覧ください。


