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日本森林学会会長就任にあたって

日本森林学会会長就任にあたって

日本森林学会会長 中村太士

このたび日本森林学会会長に就任しました北海道大学の中村太士です。会長就任にあたり、ご挨拶させていただきます。

関東圏以外から会長が選出されることは私の記憶になく、まさに青天の霹靂でした。地理的にも離れている私がうまく会長職を遂行できるのかどうか不安ではありますが、副会長や理事、主事、事務局の皆さまに助けていただきながら、頑張っていきたいと思います。一方で、私が会長職を2年間無事に務めあげることができれば、今後も関東圏以外の会員から会長が選ばれることも多くなると思われ、その試金石となるように微力ながら森林学会の発展に努めてまいります。

これまで理事や副会長職を務めてきて、森林学会が非常に多くの活動を行っていることを知りました。またそれらの活動が、担当理事や主事、事務局の献身的な努力によって支えられていることもわかりました。井出会長、大河内会長の時代には、男女共同参画、林業遺産の選定、中等教育連携推進など、新たな活動が活発に展開されてきました。

私自身は、中等教育連携推進委員会の委員長を4年間務めさせていただき、現在の普通科、農林科高校の現状と課題を知り、高校の先生たちと話をする機会を得ました。高校の学習指導要領の改訂に伴い「生物の多様性と生態系」が指導の柱の一つに据えられ、現場においてどのように指導したらよいか、戸惑いが生じていることを知りました。また、大学側の事情として、出生率の低下にともない、大学そして森林科学を志す学生数も将来減ることが予想され、この機会に学会として高校、大学双方にとってメリットある活動を展開できないか模索しました。その一つが学会時の高校生ポスター発表であり、2014年学会設立100周年となった記念すべき埼玉県大宮大会で始まりました。翌年北海道大学で行われ、今年日本大学で行われた127回大会では、北海道から熊本まで38件の発表申請がありました。

このように活動範囲を広げてきた学会活動ですが、活動範囲の拡大はそろそろ限界に来ており、私自身は活動内容の充実と継続をいかに達成していくかが、会長としての2年間の重要な役割と思っています。一つ一つの活動を実のあるものにしていくためには、人と財源が必要になります。先の高校生ポスターでは、活動に賛同していただいた国土緑化推進機構の「緑と水の森林ファンド」助成を受けることができ、遠方から来られた生徒や引率の先生方に旅費の補助をすることができました。しかし、活動を支える主事の数も定款が定める最大数に達しており、身の丈に合った活動の継続を考えていかなければならないと思います。

日本森林学会で発表される研究内容も、私が学生として初めて参加した時代とは大きく変化しました。この間、いわゆる林業学としての林学から、生態学や野生動物管理学、環境学までも含む森林科学への発展は、時代の要請でもあり、いわば必然でした。一方で、高度経済成長期に植えられた一千万ヘクタールの全国人工林は伐期を迎え、これまでの林業学として培った施業技術を今こそ活用する段階にあります。しかし、日本の急激な人口減少、林業の採算性の悪化によって、竹が暴れるように侵入したり、下層植生が生育できない管理放棄された人工林が各地に見られ、木材生産のみならず森林のもつ公益的機能、生物多様性の維持に大きな支障をきたしているのも事実です。野生動物との軋轢も深刻で、里山や都市近郊林にシカをはじめとして多くの野生動物が現れ、森林のみならず人的被害も多数発生しています。森林が持つ生態系サービスをバランスよく発揮させるためには、どんな社会・経済システムが必要か、自然科学のみならず社会科学分野を包含する森林学会が主体的に関わりあうべき課題だと思います。

日本森林学会の活動として2016年大会で実施された企画「森林・林業分野職業研究会」は、新たな展開として注目されます。団塊の世代の退職が続く中、これまで採用人数を抑えてきた都道府県は、林業職も含めて多くの分野で大幅に求人数を増やしています。一方、大学博士課程に進む日本人学生数は減り続け、将来の森林科学を背負ってくれる日本人研究者の育成は大丈夫なのか、と危惧しています。それぞれの職種にどんな魅力があり、どんな仕事をしているのか、学生たちにとってはぜひとも知りたい情報であり、その橋渡しを森林学会が担うことができれば、研究交流の場としての魅力のみならず、将来就きたい職業の情報を得られる場として、若者も魅力を感じることができるのではないでしょうか。

森林学会の機関誌、日本森林学会誌、Journal of Forest Research、森林科学の役割と発展は、今後もますます重要になってくると思われます。予算節約のため冊子体としての配布をすべて電子化すべきではないか、「森林科学」の一般読者をどうやったら拡大できるか、JFRのインパクトファクターをあげるためにはどのような活動をすべきか、国際情報発信のための科研費予算をいかに獲得するかなど、難題は多いのですが、学会としての実力を示す重要な活動ですので、更なる発展ができるように議論してまいりたいと思います。こうした学会誌の発展と発表される研究成果の充実とは表裏一体の関係にあります。大会時に行われる各種学会賞の受賞者講演は、年々素晴らしい内容に深化しており、この講演を聴けることは私にとっても楽しみになってきました。

気候変動や人口減少、資源の持続的管理など、森林を取り巻く自然・社会情勢は今後もめまぐるしく変化し、日本森林学会の役割はますます重要になってくると確信しております。今活動している内容をさらに充実させ、多様な価値観を持った学会員が楽しんで研究発表や意見交換し、社会とのつながりを実感できるような日本森林学会をめざして、頑張りたいと思います。会員の皆さまにおかれまして、今後ともよろしくご支援のほどお願い申し上げ、簡単ですが会長就任の挨拶に代えさせて頂きます。


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