過去の会長あいさつ

2014〜2015年度

大河内勇

この度会長に就任いたしました大河内勇です。これまで、森林学会では、日林誌編集委員、男女共同参画担当理事を、また、前井出会長のもとでは副会長として日本森林学会設立100周年記念事業を担当させていただきました。この度、会長を務めさせていただくにあたり、100年もの歴史があり、2300名もの会員のいる由緒正しい学会ということで、その責任の重さに身が引き締まる思いであるとともに、大変光栄なことと存じます。副会長・理事・主事とともに一丸となって、皆様のご期待に添えるよう、頑張ってまいりたいと思いますので、会員諸氏のご助力をいただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

日本森林学会は、1914年(大正3年)に林学会として設立され、日本に近代的な林業を興す志を有する研究者や技術者の集団として活動を始めました。その後、1934年(昭和9年)には、日本林学会と改称し、戦中戦後の荒廃した山林の造林や防災などに貢献してきました。さらに、2005年(平成17年)には、木材生産だけでなく、森林の多面的機能への社会の関心を背景に日本森林学会と改称、水土保全、生物多様性、地球温暖化、社会的便益などの研究の比重を高めてまいりました。研究者の集まる任意団体として続いてきた日本森林学会は、2011年(平成23年)6月1日、宝月会長のもとで法人化を果たし、一般社団法人日本森林学会として新たに発足しました。また、2014年(平成26年)3月にはさいたま市で開催された第125回大会(東京大学担当)において、井出会長のもとで設立100周年を祝いました。今年は、100才になった日本森林学会の新たな一年になります。

森林の毎年の変化はゆっくりしたものですが、社会の変化は急速で、森林・林業を巡る情勢も変化しつつあります。

自由化された外材との競争で低迷していた国産材も、価格競争力を有するようになったことと、充実した森林資源が毎年伐採量をしのぐ蓄積を増加させていることから、林業が産業として自立しつつあります。このような時であるからこそ、産業としての自立を支える研究や、健全な産業となるために多面的機能を総合発揮する「持続可能な森林管理」に向けた研究が求められていると言えます。

しかし、そのような研究を支える森林学会の会員は徐々に減少しています。このことは、これまでの産業の縮小が、時間的な遅れをもって研究者の就職先の縮小に及んできていることを意味します。対象とする産業が縮小してしまえば、それを支える学会が栄えることはあり得ません。「林業滅びて林学栄える」ということはあり得ないのです。森林学会は産業としての林業を支え、林業セクターを拡大することを通じて、大学を卒業した学士の就職先を増やす努力が必要ですし、そのことが森林・林業の研究者である大学院卒の博士・修士の就職口を増やすことになるものと確信します。森林学会の発展のためには、この問題に取りかかりたいと考えています。また、産業への関与では先を進んでいる一般財団法人日本木材学会とも交流を深め、学んでまいりたいと考えます。

第125回大会では「森林分野におけるダイバーシティ推進宣言」が採択されました。言うまでもなく、男女共同参画は社会の規範です。森林の研究分野では、全体に女性が少ないのみならず、分野間の違いも大きいものがあります。様々な分野への女性の進出について、更に活動をしてまいります。また、大学や研究機関の国際化は今や大きなトレンドであり、日本の研究が国際競争力を有するためには欠かせません。学会としても、これまでJFRの国際化に取り組み成果を挙げてきましたが、それ以外についての国際化についても取り組んでまいります。

同大会では100周年記念事業の一環として、「林業遺産」の認定が始まりました。林業遺産は自然遺産ではなく、日本の人と森林、林業との関わりを証明する遺産を学会として認定しようというものです。本事業はまさに開始されたばかりであり、様々なジャンルにわたる林業遺産を毎年増やしていきます。その過程で、林業遺産というものを学会の会員の皆様も議論していただき、社会への認知度を高めていきたいと思います。

学会が法人化したことにより、支部会は地域の学会として独立し、日本森林学会とは連携学会の関係となりました。今後とも、友好的な連携関係を維持してまいりたいと思います。また、学会としての社会への発信が求められるようになります。これについては、新たに「社会連携委員会」を設け、対応していく所存です。

最後に第126回大会と、第127回大会についてです。第126回大会は北海道大学が担当として開催されます。大会に関しては、第125回大会で、プログラム編成委員会が新たに組織され、これまで開催大学にとって大きな負担となっていた作業を学会全体で支えることとなりました。また、高校生のポスター発表も新たに始まり、新鮮な風が吹き込まれました。こうした改革を続けて行きたいと思います。第127回大会は日本大学で開催されます。両大会とも、関係者の皆様には多大のご苦労をおかけすることになりますが、よろしくお願いしたいと思います。

(2014年6月)

2012〜2013年度

井出雄二

この度会長に就任いたしました井出雄二です。これまで、森林学会では、日林誌編集委員、評議員などを、また、前宝月会長のもとでは副会長を務めさせていただきました。とはいうものの、学会の運営にそれほど深くかかわってきたとは決して申上げられません。そのような私が、日本森林学会(日本林学会)が設立100年を迎えようとする節目の時期に、会長を務めさせていただけることは、大変な名誉なことであると思う一方、きちんとしたかじ取りができるのだろうかと不安でもあります。是非、会員諸氏のご助力によって、任期を全うしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

最近の森林学会長の取り組みについて振り返ってみると、石塚前々会長は、それまで不安のあった財政の健全化と法人化を強力に進められ、それぞれ目標を達成されました。また、宝月前会長は、無事一般社団法人としての日本森林学会を発足させ、かつ、ホームページの充実やメールマガジンの創設といった会員相互のコミュニケーションを重視した運営を実現させました。こうした取り組みによって、本会の社会的な位置づけが明確になるとともに、会員の帰属意識もやや高まったと思われます。

しかし、学会に運営上の問題が全くなくなったかというと、そうとも言い切れない面が多くあります。

まず、財政ですが、表面的には健全化が達成されたとはいうものの、会員数の減少傾向が続いており、会費収入の落ち込みは顕著です。会員数の増加と収支の均衡が求められています。そのために、魅力ある事業を行い会員数の増加を図ることはもちろんですが、まず事業を精査し絞り込むことが必要と思われます。例えば、出版は森林学会の中心事業であることは間違いありませんが、そのために投入される経費や会員のエネルギーは少なくありません。現在、3誌を発行しておりますが、それぞれ重要な役割があるとはいうものの、費用と効果を検証して改善を図ってゆくことが重要と考えます。

さらに、法人化に際して旧支部にそれぞれ地域に根ざした学会としての独立をお願いしました。それらの地域森林学会と森林学会の関係は、現在のところは概ね従前の慣例に従って進められていますが、曖昧なままになっております。それぞれの学会の目標とするところを、森林学会としてよく理解したうえで、よりよい協力関係を構築してゆくことが求められます。そうした中で、森林学会が本来的になすべき事業も、明確になってくるものと考えます。

関連して、都道府県において森林・林業関連の試験研究機関の縮小や統合が進み、現場対応型の研究がなかなか進みにくい現実があるものと考えます。少ない研究員がたくさん課題を抱え、少額の研究費で頑張っておられます。地域森林学会との連携を考える中で、こうした問題に対しても、森林学会として何らかの支援ができるような仕組みができないかと思案しております。

次に、一般社団法人化した学会の役割についてです。これまでの任意団体では、会員が自発的に集まって、自らの意志で自らの利益ために会を運営するということが目標だったと言えます。しかし、法人化した学会は、会員の利益だけでなく、会の社会的責任を強く意識しなければならないと考えています。森林学会は、みなさん個人と同じように住民税を払っています。会として社会の一員となったからには、社会への貢献が求められるのは当然です。もちろん、これまでも社会貢献に類する活動は、会員の努力によって種々行われてきたと承知しますが、これからは、より積極的、組織的な活動が求められるでしょう。そうした活動を通じて、森林分野のプレゼンスが高まれば、会員の研究や業務に対する理解も進み、ひては本会の健全な運営にも寄与するものと考えます。

私としては、任期中に以上のような課題を中心に取り組み、少しでも前進できるよう努力してゆきたいと思っておりますので、会員の皆さんの、積極的なご意見ご提案を期待します。

それとは別に、創立100周年をどのように迎えるかも、今期の大きな課題です。

本学会は1914年(大正3年)に創立された、農学系では3番目に古い歴史を持つ学会です。森林と林業を網羅した研究と実践を支える組織として、1世紀もの長い間活動を続けてこられたのは、先人の献身的な努力による運営と会員の活発な活動によるものと思います。これまでの、森林学のあり方を振り返るとともに、これからの100年を展望する良い機会と考えます。幸い、関東森林学会のご協力のもと、東京大学を会場に125回大会を開催していただけることになりました。これから、その内容について検討し、本学会の歴史にふさわしい大会を実現することが求められていると、自覚しております。これに関しても、会員の皆さんの積極的なご支援をいただきたく、重ねてお願いいたします。

(2012年5月)